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いい湯だな♪

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いい湯だな♪

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「ふっ、新参のP級四天王共にも困ったものだ。パンツーハットは強要する物ではなく、自ら進んで被る物だというのに」
 大風呂の湯煙の中で、一人静かにパンツを被って浸かりながら、国頭 武尊(くにがみ・たける)がつぶやきました。国頭武尊は、すでにP級四天王パンツ番長です。当然、風呂には頭にパンツを被る以外は何も身につけてはいません。
 元祖パンツ番長としては、被る被らないの時期はとうに卒業しています。いつも心にパンツを。パンツ愛のない者には、国頭武尊が二十四時間被っているパンツが見えないのです。
「にしても、どこかで見たような噴水だが……」
 大風呂の中央でお湯を噴き出しているかに見える奇怪な鎧の像を見て、国頭武尊がちょっと小首をかしげました。
 キランと、国頭武尊の右目が一瞬光を放ちます。コンタクトレンズ型の邪気眼レフです。これは、布を一枚だけ透視できます。とはいえ、中央にある銅像はなんだか金属製のようですから、透視することはできません。というか、錆びないんでしょうか。
「にしても、湯気が邪魔だなあ。他に誰か入っているのか?」
 微かに女の子の声だけがときおり聞こえる大風呂を見回して、国頭武尊がぼやきました。さすがに、湯気を透視することはできませんし、どちらかというとレンズが曇って見えにくいです。しばらくは、妄想力で、お湯には言っている女の子たちのあんな姿やこんな姿を想像して楽しむしかありません。
「うむむ、少し曇るんだな。でも、この双眼鏡『NOZOKI』を使えば、少しはましなんだな」
 大風呂の中央でお湯を噴き出しながらブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)が周囲を見回しました。ウォータブリージングリングを使っているので、身体の鎧からお湯を拭きだしても溺れるようなことはありません。いちおう裸なのですが、現在は身体が鎧化しているので、普段と大差ない見た目です。
「やれやれ、のんびりとお風呂に入ればいいのに。にしても、医心方とアレックスはどこに行っちゃったんだか」
 ゆったりのんびりと大風呂に浸かりながら、鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)がつぶやきました。
 風呂は、心を休めるために入るものです。騒いではいけません。のぞきなど、もってのほかです。見ようとなんかしなくったって、裸族の人たちはすっぽんぽんで闊歩しています。見たのではありません、見えてしまったのです。大事なところなので、もう一度言います。見えただけなんです。
 もちろん、男は願い下げですが、のんびりと長湯していれば、幸運な事故に遭遇するとも限りません。そうです、事故です。繰り返しますが、見えただけです。見たのではありません。
「でさあ、……って、お客さんだったんだよ」
「まあ、それはそれは……」
「災難だったわねえ……」
 何やら、湯煙のむこうから女の子たちの話し声が聞こえてきます。
「見えねえなあ」
 さっと、国頭武尊が軽く手を振りました。サイコキネシスで、ほどよく湯煙が払われます。よし、オッケーです。
「おおっと、ちっぱい、おっぱい、たっゆんか」
 お湯の中で井戸端会議をしていたディオニウス三姉妹を見つけて国頭武尊がつぶやきました。
 三人共タオルを一枚身体に巻いているだけなので、しっかり邪気眼レフの餌食です。
「たまには、こういうおっきいお風呂もいいわね。最近、変わったお客さんが多いから疲れちゃって」
 肩を揉み揉みしながら、シェリエ・ディオニウスが言いました。
「シェリ姉はほとんど何もしていなかったじゃない」
 パフューム・ディオニウスが、ちっぱいを反らして、背泳ぎするように水面にぷかーっと浮かびながら言いました。喫茶店の仕事は、だいたいパフューム・ディオニウスとトレーネ・ディオニウスがやっています。
「えー、少しは手伝ったじゃない。ねえ、姉さん」
「ええっとお……」
 トレーネ・ディオニウスが、ちょっと困ったように微笑みます。
「うむ、これはなかなか」
 上からパフューム・ディオニウスを見下ろしながら、ブルタ・バルチャが悦に入りました。けれども、P級四天王パンツ大審判としては、三人共パンツを被っていないのが気に入りません。
「嘘ばっかあ」
「ちゃんとやってるでしょ」
「く、苦しー」
 嘘つき呼ばわりされて、シェリエ・ディオニウスが、パフューム・ディオニウスを後ろから羽交い締めにしました。
「やだあ、姉さん、シェリ姉がいじめるー」
 バシャバシャと脚を動かして泳ぐ真似をしながら、パフューム・ディオニウスがトレーネ・ディオニウスに助けを求めました。
「ううっ、こ、これは事故だな。さらなる事故、カモーン」
 ラッキースケベなポジションにいた鬼龍貴仁が、心の中でガッツポーズをとりました。
「それにしても、いい眺めなんだな」
 必死に、お湯の沸き出し口のふりを続けながらブルタ・バルチャが思いました。
「うーん、大中小、よりどりみどりだな……おおっと、と、特大が……」
 三姉妹をじっくりと観察していた国頭武尊が、思わず視線を横に移しました。
「やっぱり、裸はちょっと恥ずかしいです……」
 お湯の中に顎まで深く浸かって、泉奈緒が言いました。浮力に逆らえない超たっゆんが、水面に浮きあがろうとお湯の中でゆらゆらとゆれています。
「だったら、私を装着すればいいのに」
 一緒に入っていたラナ・リゼット(らな・りぜっと)が、泉奈緒に言いました。二人とも、普通のタオル一枚しか持ってなく、普通に全裸でした。元祖のジャングル風呂は全裸で入るものだと聞いたラナ・リゼットが、泉奈緒にそう説明したからです。しかし、小さなタオル一枚では、とても泉奈緒の超たっゆんは隠しきれません。
「どうしても恥ずかしいのであれば、私を装着すればいいのですよ」
「いえ、それもどうかと……」
 泉奈緒が顔を半分お湯に沈めてぶくぶくと後の言葉を濁しました。だいたい、ラナ・リゼットが魔鎧であっても、装着しても肌を被う面積はさほど変わりません。いや、むしろタオルよりも少ないのではないのでしょうか。むしろ、何も着てないときよりもえっちぃ気がします。
「じゃあ、私がこう、後ろから手ぶらになって……」
 泉奈緒の後ろに回ったラナ・リゼットが、両手を回して泉奈緒の超たっゆんを支えました。が、やはり全然足りません。
「もうやめてください」
 泉奈緒が身体をよじらせて抵抗します。
 二人がじゃれ合っているむこうでは、泳ぎだそうと言いだしたパフューム・ディオニウスが、ふざけてシェリエ・ディオニウスとトレーネ・ディオニウスのタオルを剥がそうとしています。
「困った、これじゃ動けない……」
 二組五人の女の子たちに囲まれる形になって、お湯の中でフィリップ・ベレッタ(ふぃりっぷ・べれった)が縮こまっていました。いや、一部を除いてですが。
 のんびりとお風呂を堪能していたのですが、いつの間にか周囲を女の子に囲まれて身動きがとれなくなっています。本当は水着を用意していたのですが、脱衣所で会った鬼龍貴仁に、パンツを穿いたまま風呂に入るとはなんという非常識者だと懇々と文句を言われて、仕方なくタオル一丁で浴室に入ったのでした。今や、それが徒となって、最大のピンチを迎えています。
 しかし、それは、女性陣を取り巻くようにして密かに目を皿のようにしていた他の三人の男たちも一緒でした。
お湯から上がれない……
 前屈みになりながら、男たちの思いが今シンクロしました。