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リアクション
★ ★ ★
「ううっ、さすがに身が引き締まる……」
釜風呂から水風呂にやってきた悠久ノカナタですが、今度は身体が冷えすぎて冷たくなります。
まあ、暖めたり冷やしたり極端です。
「わーい、お水です!」
「ばしゃばしゃばしゃー!」
元気に大浴場中を走り回っているコンちゃんたちが、水風呂をものともせずに突入してきました。
「こ、これ」
撥ね飛ばされる水飛沫に、たまったものではないと、悠久ノカナタが逸早く逃げだします。ここでランちゃんたちに御挨拶されたら、水風呂の中で土左衛門になりかねません。
「こうゆうときは、やはりあれだな」
悠久ノカナタはちょっと目を細めると、あらかじめ用意してあったちょいと一杯セットをかかえると、檜風呂へとむかいました。
「お邪魔する」
大きな檜風呂には、源 鉄心(みなもと・てっしん)たちとパピモンたちが先客でいました。
檜風呂に入ると、そこへ日本酒の入った升が載ったタライを浮かべます。檜のいい香りがする中、風流です。肴は、イカの一夜干しでした。中には、腸が詰めてある物です。いい感じに炙られて、香ばしい香りがします。また、その塩気が実に酒に合います。
「お主らもどうだ、一杯?」
「ええと、俺はいいが、イコナやティーたちはまずいなあ。と言うことで、俺だけ相伴にあずかります」
そう言うと、源鉄心が、悠久ノカナタの差し出した升をにっこりとしながら受け取りました。成人という大義名分があるので、お酒は悠久ノカナタと山分けです。
「ああー、鉄心ったら、ずるいにゃ! わたくしも……」
「イコナちゃんは未成年ですからダメですようさ。こちらは、水筒のジュースで我慢しましょうさ」
源鉄心と同じ物を飲みたがるイコナ・ユア・クックブックを、ティー・ティー(てぃー・てぃー)が諫めました。
「リラードさんたちもいかがですかうさ?」
白いビキニを着たティー・ティーが、一緒に檜風呂に入っていたパビモン トレリン(ぱびもん・とれりん)、パビモン ナウディ(ぱびもん・なうでぃ)、パビモン ミラボー(ぱびもん・みらぼー)、パビモン リラード(ぱびもん・りらーど)のパピモン四天王に訊ねました。
「わたくしもにゃー」
スカートのついた赤いワンピース水着を着たイコナ・ユア・クックブックが、自分の分のジュースをねだります。
なんだか、うさとかにゃとか、結構無理があります。
「じゃあ、ありがたくもらうリラ」
パピモン・リラードが、答えました。
「ナウディは、本当はお酒の方がいいナウ」
パピモン・ナウディだけがお酒をほしがりましたが、まだ一歳なので却下されました。
パピモンたちは裸でお風呂に入っていますが、もともとちっちゃいのでほとんど分かりません。特にパピモン・ミラボーなどはロボットの姿なので、見た目変化なしでした。
「前に、語尾が短絡的なんて言ってしまって申し訳なかったうさ。結局、私も、語尾がうさうさ言ってますうさー」
以前、パピモン・リラードに何か言ったらしく、ジュースを注ぎながらティー・ティーが謝りました。
「気にしてないリラ」
「でも、これでティーちゃんも、トレリンたちの仲間リン♪」
「そうそうミラ!」
「ありがーとーうさ」
あっさりと許してもらったみたいですが、それにしてもいろいろと語尾がうるさい会話です。
「はははは、それはいい」
「ふふふ、お主も悪よのお。それで、その後はどうしたのだ?」
ティー・ティーたちとパピモンたちが和気藹々とやっている横で、隣の源鉄心と悠久ノカナタはだんだんとできあがってきたようです。
「それを聞きますか。ははははは、こいつう」
「おおっと、どこをつつくのだあ。もう、エッチぃ」
「あははははは……」
「あははははは……」
なんだか、だんだんとカオスになっているようです。いつの間にか、空になった一升瓶がお風呂の中にプカプカと浮いています。
「ええっと、あっちのお風呂に行きましょうかうさ」
「それがいいにゃ」
「そうしましょうナウ」
巻き込まれてはたまらないと、ティー・ティーたちが近くにある五右衛門風呂に移動しました。が、さすがに大きさ的に全員が一度に入るというわけにはいきません。
「じゃあ、リラードさん、一緒に入りましょううさ」
ティー・ティーが、パピモン・リラードを誘って一緒に入りました。パピモン・リラードを胸のあたりにだきかかえて、そのまま五右衛門風呂に浸かります。
「ああ、こうしているとなんだかお鍋に入っているようです」
まるで土鍋にでも入っているかのように、ティー・ティーが言いました。
「リラードさん、マッサージしてあげますうさ。もみもみもみ」
「ああ、これはすまないリラ。うーん、気持ちいいリラ」
ティー・ティーが、お湯の中でパピモン・リラードの身体を揉み揉みしてあげます。
「トレリンさんもどうですか? うさ。いい出汁がとれそうですうさ」
「出汁リン!?」
ティー・ティーの何気ない言葉に、思わずパピモン・トレリンが後退ります。
「この人、ボクたちを食べるつもりミラ。でも、ボクは食べられないミラ」
あわてて五右衛門風呂から逃げだしてくるパピモン・リラードをかばおうと、パピモン・ミラボーが前に出ました。
「ああ、冗談ですってばあ、うさ」
あわてて五右衛門風呂から飛び出して、ティー・ティーが謝ります。
「もう。これはお風呂なんですから、鍋じゃないのですにゃ」
イコナ・ユア・クックブックがティー・ティーを注意すると、酔っ払った源鉄心が何かをかかえてふらふらとやってきました。
「ははははは、温泉玉子だあ!」
そう言うと、源鉄心が、イコナ・ユア・クックブックの持ってきていたギフトの卵を五右衛門風呂に投げ入れました。
近くの砂風呂に埋めて孵化させようとしていたのを、勝手に掘り出してきたようです。
「さあ、火力マックスだ、はははは……」
「何をするのですかにゃ!」
あわてて、イコナ・ユア・クックブックが卵を取り返してだきかかえます。
「これは、食べる物ではないのですにゃ」
イコナ・ユア・クックブックが、ぷんぷんと怒ります。
「玉子? わーい、御挨拶だあ」
そこへ、走り回っているメイちゃんたちがやってきました。まだ、頭にはパンツを被ったままです。
「危ないにゃ、卵が割られてしまうにゃ。行くにゃ、鉄心にゃん!」
イコナ・ユア・クックブックが、源鉄心を前面に押し出して、あわてて逃げだしました。
「よし、ここは任せておけ。俺が……」
「こんにちわー」
気の大きくなった源鉄心が前に進み出て、一斉にコンちゃんたちの御挨拶をその身に受けて倒れました。