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いい湯だな♪

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いい湯だな♪

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    ★    ★    ★
 
「ルンルンルン……♪」
 バシャバシャバシャ……。
 まるで鳥の水浴びのように、バシリス・ガノレーダ(ばしりす・がのれーだ)が貝殻型のパール風呂で入浴を楽しんでいました。中央の真珠型の湯口からあふれたお湯が、蓋の開いた貝殻型の浴槽にたまって縁から零れ落ちていきます。
 いつもとは違うお風呂がよほど楽しいのか、鼻歌のハミングが絶えません。
「こんな所にも、マナーを守らない奴がいたぜえ。さあ、パンツを被りやがれ!」
 バシリス・ガノレーダを見つけたPモヒカン族が、物陰から現れて襲いかかりました。電光石火の早業で、バシリス・ガノレーダの穿いているビキニの水着のパンツを剥ぎ取ります。
「よっしゃあ、これで完璧だぜい」
 バシリス・ガノレーダの頭にすっぽりとパンツを被せて、Pモヒカン族が勝ち誇りました。
 ここまでは、Pモヒカン族の好きにさせていたバシリス・ガノレーダですが、パンツを頭に被せられても、あまり動じてはいません。
「んーっと、これって何か意味があるのかナ。でも、女を脱がしたからには、責任をとってほしいネ」
 そう言うと、バシリス・ガノレーダが、真っ赤な舌で軽く唇をなめました。
「いっただきまーす♪」
 そう言うと、バシリス・ガノレーダがPモヒカン族に襲いかかりました。Pモヒカン族を押し倒してピョンと上にのしかかると、激しく水飛沫が上がり、衝撃でバタンとパール風呂の貝殻の蓋が倒れて締まりました。
「おい、こら、何をする。どこを触って……。おい、やめろ。やめ……やめて〜」
「ははははは、よいノ、よいノ♪」
 パール風呂の蓋が、中で暴れるバシリス・ガノレーダとPモヒカン族によって、ガタガタと激しくゆれます。いったい、中で何が行われているのでしょうか。
 やがて、静かになりました。Pモヒカン族が、抵抗できなくなったようです。ときたま、お湯が跳ねる音と共に、貝殻がガタンとリズミカルにゆれます。
「ごちそうサマ〜♪」
 貝殻の中から、バシリス・ガノレーダの勝ち誇った満足気な声が響きました。
 
    ★    ★    ★
 
「こんな風呂まであるとはな。いったい、ここは誰が設計したのやら」
 ローマ風の彫像に囲まれたお風呂の中で、武崎 幸祐(たけざき・ゆきひろ)がのんびりと言いました。
 本来のローマ風呂は蒸し風呂で、身体を冷やすための水風呂とセットになっていましたが、ここはあくまでもローマ風風呂です。お湯の入ったプール状の湯船の回りを、それっぽい彫刻像と大理石の柱が囲んでいました。
「これは、アテナとダイアナかな。対照的な二人の女神か。なかなかにいいチョイスだな」
 彫像を吟味しながら武崎幸祐がのんびりとしていると、突然二つの彫像が動き始めました。いいえ、彫像の陰にいたヒルデガルド・ブリュンヒルデ(ひるでがるど・ぶりゅんひるで)蘇 妲己(そ・だっき)がお風呂に入ってきたのです。
「ふふふふ、石の女よりは、生身の女の方が万倍もましだよね?」
 ざっぱーんと水を跳ね上げて、お風呂に飛び込んできた蘇妲己が、武崎幸祐に正面からだきついてきて言いました。
「こ、こら、いきなり……」
 お湯に沈められそうになって、武崎幸祐があわてて蘇妲己をだきとめました。
「妲己さんだけなんて不公平です。マスター、私も構ってください」
 アテナの彫像の陰から現れたヒルデガルド・ブリュンヒルデが、蘇妲己を真似するかのようにお風呂の中にダイブしてきました。ヒルデガルド・ブリュンヒルデが出てきた彫像の陰には、いつの間にやらPモヒカン族が黒焦げになって倒れています。よく見ると、ダイアナの彫像の陰にも、Pモヒカン族が倒れていました。密かに忍びよったのを、ヒルデガルド・ブリュンヒルデと蘇妲己がさっさと仕留めてしまったようです。
「お、おい、ちょっと!」
 いきなりバックをとられた武崎幸祐が焦ります。
 ドーンと、体当たりされるように後ろからだきすくめられ、蘇妲己と共に前後を挟まれて武崎幸祐が身動きできなくなりました。前後からたっゆんをすりつけられます。まるで、たっゆんサンドイッチです。
「ちょ、ちょっと、苦し……。だが、これはこれで……」
 顔面と後頭部をたっゆんで被われた武崎幸祐が、息苦しくもちょっと鼻の下をのばしました。まあ、武崎幸祐も男ですから、分からなくもありません。
 ヒルデガルド・ブリュンヒルデの純白のビキニ越しの感覚がぷにぷにと後頭部を押します。蘇妲己の真紅の紐ビキニなどは、顔面にこすれてほとんど外れかかっていました。
「そこの羨ましい奴。よくも、俺様の部下たちをいたぶってくれたな」
 手下を引き連れた、P級四天王裏山ショーツ番長が現れました。
「ふむ、なかなかにいいパンツを持っているじゃねえか。よし、決めた。貴様のパンツは、俺がいただく。そっちの固そうなパンツの女と紐パンの女は、てめえらが好きにしろ。みんな、やっちまえ!」
 武崎幸祐の穿いている競泳用黒ビキニパンツを狙って、P級四天王が手下たちをけしかけてきました。
「敵確認。排除を開始します。砲撃モードエラー、格闘モードへ移行。起動します」
 風紀委員に機晶キャノンを没収されていたヒルデガルド・ブリュンヒルデが、素早くPモヒカン族たちと格闘に入りました。
「すぐ終わらせるから、ちょっと待っててよね」
 そう言って、蘇妲己もヒルデガルド・ブリュンヒルデに加勢していきました。
「まあ、任せておいて大丈夫か」
 この程度で遅れはとらないだろうと、武崎幸祐がのんびりとお風呂に浸かり直します。
 しばらくして、静かになりました。どうやら、すべて片づいたようです。
「御苦労様。しかし、こう変態がやってくるんじゃ、おちおち風呂にも入っていられないなあ」
 二人をねぎらいながら、武崎幸祐がちょっとぼやきました。
「それは、きっと、そのパンツがいけないんだよ。パンツなんてただの飾り。さあ、早く脱いでしまおう♪」
「ちょ、妲己、やめ……」
 抵抗しようとしますが、ヒルデガルド・ブリュンヒルデが武崎幸祐を押さえつけます。そして、蘇妲己が武崎幸祐のパンツを奪い取りました。
 P級四天王を倒した者は新たなP級四天王になる……。どうやら、蘇妲己たちは、すでにりっぱなパンツ番長のようです。
 
    ★    ★    ★
 
「ふう、長旅だったから、疲れました。でも、その疲れがみんな落ちていきますね。これが、温泉なんですね」
 ゆったりと寝風呂に横たわりながら、御神楽 舞花(みかぐら・まいか)がほんわかと言いました。
 ツァンダ神社の初詣後、のんびりと過ごす御神楽 陽太(みかぐら・ようた)御神楽 環菜(みかぐら・かんな)から離れて、急ぎ御神楽舞花だけがイルミンスールへとやってきたのでした。
 両親をのんびりさせるという意味が一番ですが、一度大きな温泉という物にも入ってみたかったわけです。もっとも、イルミンスール大浴場は温泉ではありませんが。
 しっかりと浅黄色の花柄ワンピース水着を着ているので、安心して浅いお湯に寝そべっていられます。近くにはギフトたちもいるので、Pモヒカン族にも安心です。
 ぴこーんぴこーんぴこーん!
 ギフトたちが、そろそろ時間だと危険信号を上げました。
「うーん、そろそろ、他のお風呂を襲撃していたPモヒカン族がこちらにも来るかなあ。じゃあ、戦略的移動です。次は、薔薇風呂に行きましょう」
 周囲に配置したギフトたちの情報を元に立てた未来予測で、御神楽舞花が予定していた時刻でお風呂を移動します。
 だいたいにして、Pモヒカン族たちの行動はワンパターンですから、よほど高速で走り回っていない限りは、敵が来る前に別のお風呂に移動してしまえば遭遇すらしないわけです。それに、その方が、いろいろなお風呂を堪能することもできます。
 まあ、ちょっとは、せわしなくはありますが。
「ええと、ここでの滞在は、およそ五分というところでしょうか。充分ですね。ああ、それにしてもいい香り」
 赤い薔薇の花びらが浮かんだ薔薇風呂に浸かりながら、御神楽舞花が大きく息を吸い込みました。薔薇の香りが鼻孔をくすぐります。なんだか、全身が薔薇の香りにつつまれたかのようです。
「次は、泥風呂なんかが面白そう、それとも、砂風呂の方が安全かな?」
 防水仕様のハンドヘルドコンピュータで大浴場のマップを表示させながら、御神楽舞花は楽しくお風呂巡りの計画を立てていきました。