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悪戯双子のお年玉?

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悪戯双子のお年玉?
悪戯双子のお年玉? 悪戯双子のお年玉?

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「……どこかの田舎かな」
 夢札を使った瀬乃 和深(せの・かずみ)は周囲を確認しながら舗装されていない道を歩いていた。
 和深がいるのは森に清らかな小川、田畑、木造の平屋ばかりのどこかの小さな村。
「……とりあえず適当に見回ってみるか」
 歩き続ける和深が足を止めたのは村の片隅にある神社だった。

「……あれは流」
 和深は同じように夢札を使った上守 流(かみもり・ながれ)を発見した。
「流!」
 和深は神社の庭掃除をしている流に声をかけるが、こちらに振り向く様子が無い。まるで和深の声が聞こえていないかのように。
「……俺の声が聞こえないのか?」
 頭を傾げる和深。
 その横を数人の子供達が横切って行く。
 これまた和深の存在が無いかのように。子供達に囲まれた流は掃除をやめて視線を子供達に合わせてお喋りを始めた。

「お姉ちゃん、遊ぼうよ」
 と少女。
「姉ちゃんはオレ達と遊ぶんだぞ! お前は昨日遊んだろ」
 と少女より少し年上の少年が言い、少女の頭を叩いた。
「うわぁぁぁぁぁん」
 叩かれた少女は大泣きする。
「叩いてはいけませんよ。小さい子には優しくしないといけないでしょ」
 流は人差し指を立てながら優しく注意。
「だってぇ」
 注意をされた少年は唇を尖らせる。
「ほら、泣かないで下さい」
 大泣き少女の頭を優しく撫で、笑顔を向ける流。
「……お姉ちゃん」
 泣き止むもまだ涙のたまった目で優しい赤色の目を見る少女。
「今日はみんなで遊びましょうか」
 少女が泣き止んだところで流は集まった子供達に声をかけ、立ち上がった。
 そして、仲良く子供達と遊ぶ流。
「これは流の過去の夢か……そして、俺は傍観者」
 和深は流の様子を眺めながら考えをまとめる。そうとしか思えなかった。自分の知っている流と目の前にいる流の姿は変わらないがどことなく違う気がしたのだ。それは無いものがあるからなのかもしれない。失った記憶というものが。
「……流の過去」
 と和深は小さくつぶやいた。今までずっと流の失った過去について考えていたためか流の夢に招かれたようだ。
 場面は変わり、流は子供ではなく大人達に囲まれていた。

「巫女様、これを食べて下さいな」
「ありがとうございます。今夜、美味しく頂きますね」
 自分の畑でこしらえた野菜を持って来る男性に笑顔で受け取る流。

「いつも子供が迷惑を掛けてすまないね」
「いえ、そんな事はありませんよ。とてもいい子です」
 やんちゃな少年の母親に笑顔で答える流。
 この後も村人から言葉をかけられたり野菜を貰ったりと忙しかった。

「……巫女様、か。随分村人から慕われているな」
 和深はずっと眺めていた。

 さらに場面は変わり、少女とお喋りする流に。
「ねぇ、お姉ちゃんって凄いんだよね。お母さんとお父さんが言ってた。この村が平和なのはお姉ちゃんのおかげだって」
 尊敬の混じった目で流を見上げる少女。
「そんな事はありませんよ。私の……上守一族としての役目ですから」
 流は笑顔で大した事のないように答えた。
「かみもり? お姉ちゃんの名前だよね」
 少女は首を傾げながらじっと流を見上げる。
「……そうです。上守は神守、神を守る事に通じる名前でこの神社に封じている神を守るための存在」
 流はふと真剣な表情で子供には少しばかり難しい事を話す。
「……凄いんだね。お姉ちゃんが神を守ってるからこの村はとっても平和なんだね」
 あまり理解出来なかったが、流が凄い人である事は分かったのか少女は感心の声を上げた。
「……」
 流は少女に微笑みつつも意味ありげな視線を何かを祀っていると思われる神殿の方に向けた。
「……上守と神守……神を守る……神の恩恵でこの村は平穏なのか」
 和深は流と少女の会話を反すうする。村がどのような所なのか少しずつ見えてくる。
「本当にそれだけなら平和だろうが」
 和深もまた流が視線を向けた神殿の方に目を向けた。何かの気配を感じるのだ。そうだとしてもここは流の夢で自分はただの傍観者なので何も出来はしないのだが。

 更に場面は変わる。静まりかえった夜。
「……ん? 景色が変わったな。夜、か……しかし、空が赤い」
 神社の周囲を見渡した後、和深は不気味なほど真っ赤に染まった夜空を見上げた。良くない事が起きる予兆に思えてならない。

「……流」
 いつの間にか現れた流と表現しきれないほどの妙な存在が暴れていた。
「……目覚めし神よ、上守の一族の者としてあなたの力を人の都合よく使おうとする意思から守ります」
 流は刀を手に対峙する妖しき存在に話しかける。口調は優しさと厳しさが同居したもの。
「守る。この村は神の恩恵によって平穏だった。神か、神社に封じられていたのはあれか」
 和深はじっと妙な存在をにらむ。
「封じる事でこの村は平和でそれは神の恩恵。つまりは封じて神の力を使う事。神の力を人が都合よく使える意思から神を守るのではなく……神を……騙す存在」
 得た情報をまとめる和深。
「これは夢だが上守と神守……神を守る存在、いや神を騙す存在、何もかも通じてるように思うが、本当にこれが流が忘れた過去の記憶なのか」
 和深は流と妖しき存在の壮絶なる戦いを見守りつつ考えていた。ただし一つだけ問題がある。
「……それとも夢か。こういう設定のただの夢」
 その問題とは、今見ているものが本当に過去の記憶かどうかだけ。過去ではなくただの夢での設定かもしれないのだ。
「……確かめる術は流が記憶を思い出す事だけだが」
 と和深。それも難しい事。
 流と神と思われる存在の戦いは現実の目覚めが訪れるまで果てしなく続いた。