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悪戯双子のお年玉?

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悪戯双子のお年玉?
悪戯双子のお年玉? 悪戯双子のお年玉?

リアクション

「……好きな夢が見れるって言っていたけど、もふもふ動物さんばっかり!?」
 夢札を使用した川村 詩亜(かわむら・しあ)がいるのはもふもふで大小様々、複数の動物が混在しているとか現実では有り得ない形態をした珍しい動物で溢れる草原の真ん中。珍しい動物に逢いたいと願い、せっかくならもふもふしていたら最高だと思って現れた夢。
 当然、すぐに順応。
「……もふもふがたくさん……これはこれでいい夢かも」
 詩亜はすり寄るもふもふ動物達を撫でたり顔を埋めたり至福の時を過ごしていた。

「……ここ夢……なのかなぁ?」
 詩亜と同じように夢札を使用した川村 玲亜(かわむら・れあ)はなぜだか蒼空学園付近の町中に立っていた。見覚えのある風景にきょろりと見回す。
「おねえちゃ〜ん、どこ〜?」
 詩亜が大好きな玲亜は思わず名前を呼ぶが、どこにもいない。現れたのは見た事もない小動物。
「あっ、見たこと無い動物さんだ! 待って逃げないで〜」
 好奇心をくすぐられた玲亜はすぐに追いかけ始めた。

「んー、あの動物さん、どこに行ったんだろう」
 追いかけてすぐ玲亜は動物を見失い静かな通りにただ一人。
「……ここどこだろう。知ってる町のはずだけど」
 我に返り、静かな通りにいる事に気付く玲亜。現実の町は何度も来ているはずなのに自分がどこにいるのか分からない重症の方向音痴。それでも不安は感じない。ここは玲亜の夢だから。
「……人がいる」
 玲亜はどこからともなく現れた女性の後ろをついて行った。
 しかし、その女性もどこかに行ってしまいまた玲亜一人になってしまう。
「……動物さんもいないし、どこにいるのか分からないよ。夢なのに」
 玲亜はどうしようかと前後の道、右の道をきょろりと見回す。自分の夢なのに迷子になってしまっている玲亜。

 そんな玲亜の耳に賑やかなホイッスルの音が入ってきた。
「何だろ、この音」
 玲亜は音が聞こえて来る右の曲がり角を見た。好奇心旺盛な玲亜が取る行動は一つ。
「行ってみよう!」
 何があるのか確かめる事だけ。玲亜は駆けだした。

「あれ、見た事ない町……聞こえて来た音は」
 玲亜は角を曲がった先に広がる石畳のレトロな町並みに少し驚くが、ここが夢である事を思い出し、納得する。それよりも気になるのは聞こえて来るホイッスルの音。
 玲亜は音がする方に顔を向け、思いっきり顔を綻ばせた。

「えぇと、ここが夢の世界、かな?」
 アリス・ウィリス(ありす・うぃりす)は石造りのレトロな町並みの中にいた。
「動物さんがたくさんいるからやっぱり夢かな」
 アリスの周りには大小様々のもふもふ動物達がたくさんいた。
 動物達はアリスに目もくれず好き勝手に動き回っている。
「あぁっ、だめだよ〜、壁に落書きしちゃ」
 アリスは落書きする動物を叱り、
「こら〜っ! 果物盗んじゃだめ〜」
 露店の果物を盗んで食べる動物を追いかける。

 そして、
「うわっ!」
 大きなもふもふ動物に抱きつかれて驚くアリス。動物の重さでふらりとよろめいてしまう。
「……重たいよ。でも気持ちいい」
 ハーフフェアリーのアリスは低空飛行になりながらも動物の毛並みに癒されるがあまりの大きさに潰れ気味。
 しかし、完全に潰される前に
「……こうしてちゃだめ。みんな、大人しくしなさ〜いっ!!!」
 我に返り、アリスはどこからともなく取り出したホイッスルを力一杯吹いた。
 甲高いホイッスルの音を耳にした動物達は途端に悪戯をやめてアリスの前に集まりだした。抱きついていた動物もアリスから離れた。

「みんな、いたずらはだめだよ!」
 アリスは、人差し指を立てて動物達に注意する。
「みんないい子だから分かるよね?」
 怒った顔はゆるみ、笑顔になるアリス。
 動物達はアリスに答えるように元気に鳴いた。
「よーし、みんな整列!」
 気合い十分のアリスは勢いよくホイッスルを吹いた。
 動物達は大人しく整然とアリスの前に並んだ。
 アリスは満足そうに並ぶ動物達を見渡した。動物達の調教が始まる。
「まずは宙返り!」
 アリスはホイッスルを吹きながら人差し指をくるりと回転。
 動物達が人差し指に合わせて軽やかに宙返り。
「次は手を叩いて!」
 ホイッスルを吹きながら両手を叩く。
 動物達は立ち上がり、前足を叩く。
「次は行進。右、左、右、左!」
 アリスは元気に足踏みしながらホイッスルを吹くと動物達も足踏みをする。中には二本足で器用に歩くものも。
「は〜い、止まれ!」
 アリスが勢いよくホイッスルを吹くと一様に足踏みをやめてアリスの方を見た。『指導』を持つアリスはあっという間に動物達を調教してしまった。
「みんなすごいよ! じゃ、みんな私について来て!」
 アリスは拍手をして動物達をにっこり褒める。それからもう一度ホイッスルを吹き、歩き始めた。

 玲亜が音に辿り着いた先には
「うわぁ、動物さんの行進だぁ」
 道の向こうからアリスを先頭にもふもふ動物達の行進がやって来きたのだ。玲亜とアリスの夢は繋がっていたらしい。
「みんな、止まって!」
 玲亜に気付いたアリスはホイッスルを吹いて玲亜の前で止まった。
「こんばんは、玲亜ちゃん」
「こんばんは」
 とりあえず挨拶をする二人。

「かわいい動物さんがいっぱい」
 玲亜は嬉しそうにもふもふ動物達の列を眺めている。動物達は玲亜に抱きついたり、顔を舐めたりする。アリスに見事に仕込まれた動物達は人によく懐くようになるのだ。

「玲亜ちゃんもいっしょに行こう」
 玲亜の楽しそうな様子を見たアリスは名案を思いつく。楽しい事は一人より二人の方がずっと楽しくなると。
「うん!」
 玲亜は嬉しそうにうなずいた。その手にはアリスと同じホイッスルがあった。
 まずはアリスがホイッスルを吹いて玲亜にくっついている動物達を列に戻した。
「玲亜ちゃん、吹いてみて」
「うん。動物さん、よく聞いてね。ジャンプ!」
 玲亜はアリスに促され、ホイッスルを吹きつつジャンプしながら動物達に指示を与える。
 動物達は玲亜の指示通りジャンプをする。アリスの仕込みにより玲亜の指示もスムーズに通る。
「玲亜ちゃん、上手、上手」
 アリスはにこにこと拍手しながら褒める。
「えへへ、ありがとう」
 アリスの言葉に少しばかり照れる玲亜。
「玲亜ちゃん、行こう!」
「うん!」
 重度の方向音痴のアリスと玲亜は交合にホイッスルを吹きながら町中を歩き始めた。道々出会う動物達が次々と加わり行進の列はどんどん長くなっていた。

「……夢札を使ったら必ず夢が見られるって」
 夢札を使用した及川 翠(おいかわ・みどり)は一人ぽつんと広大な大地に立っていた。
「……せっかくだからこの広〜い世界を冒険するの〜!」
 翠は広大な大地を歩き始めた。歩く度に周囲の風景が変化する。砂漠や、海、森、太陽が輝く夜空、虹が降ったりと有り得ない現象もこの夢の中では当たり前の現象。
「楽しいの♪」
 翠は楽しみながら大冒険をしていく。
 ただし、この夢にいるのは翠だけではない。

「あぁっ! 変態さんが居るのっ!?」
 翠は前方にいる変態を発見した。
 そして、
「変態さんは、ダメなの〜っ!!」
 ミョルニルで『レジェンドストライク』を使い空に向かって吹っ飛ばした。
「いなくなったの!」
 翠は空を見上げて変態が名も無き星になった事を確認し、安堵した。
 しかし、変態はまだまだいた。
「変態さんがここにもあそこにもいるの。全部ダメなの〜!」
 あらゆる場所に棲みついている変態を発見した翠は片っ端からミョルニルで勢いよく空に吹っ飛ばしていく。
 その度に空に輝く名も無き星が増えていく。
「……星が増えたの」
 自分が変態を空に吹っ飛ばす度に星が増えていく事に気付いた翠。

 星を眺めて和んでいた所に変態が大量に空から降って来た。
「ほわっ、変態さんが降って来るの」
 翠は素早く避けてミョルニルで変態が地面に着地する前に全て空に飛ばした。
「負けないの〜」
 最後の変態を空に飛ばしたところで翠は空を眺め少しだけ休憩。
「……ふぅ。星がきれいなの」
 先ほどの戦いにより星の数が随分増えていた。

 次に変態が登場したのは地面からだった。
「今度は地面から出てきたの」
 翠は地面から生まれる変態を次々と空へと飛ばしていく。
「星になるの〜」
 翠はどんどん空を賑やかにしていく。

 そしてとうとう空は星で一杯になってしまった。あまりに多過ぎてまぶしい。
「星がたくさんでまぶしいの〜」
 翠はあまりのまぶしさに両目を閉じてしまった。
 その一瞬、空に輝く名も無き星達が一斉に降って来た。
「……落ちてくるの〜」
 目を開けた翠はどこからともなく可愛らしい傘を取り出し、身を守った。
「光ってるの」
 翠は地面に転がる大量の星々を不思議そうに見ていた。
 地面に落ちてもまだ輝きを失っていない名も無き星。
「……空に星がなくなったの」
 星の落下が終わり、傘を片付けた翠は掃除された空を見上げた。
 空から地面の星に目を向けた途端、茶色の瞳は驚きに変わっていた。
「あっ、落ちた星が変態さんになったの!」
 地面に落下した名も無き星が全て変態に姿を変えてしまったのだ。つまり、元に戻ってしまったのだ。
「変態さんはダメなの〜!!!」
 翠は再びミョルニルで景気良く『レジェンドストライク』の強烈な一撃で変態を空に吹っ飛ばし、星の数を増やしていった。
 しかも落下した星だけではなく、あちらこちらにまだ潜んでいる変態の相手もしなければならなかった。目覚めるまでずっと続いた。

「あ、あぁっ……右も左ももふもふっ!」
 夢札を使用したティナ・ファインタック(てぃな・ふぁいんたっく)の周囲には実在から架空まで大小様々のもふもふ動物達がいた。中でもうさぎの類が多い。
「こんなの夢みたいってここ夢だったわ」
 あまりに嬉しい光景にティナが感動を洩らす。
 感動もそこそこにティナはさっそく近くの巨大うさぎに抱きついた。
「あぁ、幸せ」
 ティナは本当に幸せそうに頬をゆるませていた。
 ティナの夢はティナだけのものではなかった。

「見たい夢が見られるっていうのは本当だったのね」
 夢札を使用したミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)は巨大わたげうさぎや巨大犬猫、巨大狸に羊などもふもふ動物が大量にいる世界にいた。
「……あの兄弟の事は噂で知っていたけど。たまには当たりもあるのね」
 ミリアは双子についてぽつり。同じ学校であるため彼らの噂は耳にしていたのだ。
「あぁ、もふもふ♪」
 ミリアは嬉しそうに自分よりも何倍も大きいわたげうさぎに顔を埋め、幸せ一杯。
 広い草原のはずが大量のもふもふ動物のため下に生える草が見えない。
「……最高の初夢、この夢、覚めないで欲しいわ」
 埋めていた顔をゆっくりと上げながらミリアは言葉を洩らした。
 独り言で終わるはずのこの言葉に返事が返ってきた。
「本当に。もうこのままでいたいよ」
 ミリアに返事をしたのは、同じようにもふもふ中のティナだった。
「あらっ? ティナさんもいたのね?」
 ミリアは聞き知った声がする方を向いた。

 同じようにティナも気付いたらしく
「……ってミリア?」
 もふもふを中断してミリアの方を見た。
 顔を見合わせる二人。
「私達、同じ夢を見ていたのね」
 とミリア。
「そうみたい。まぁ、同じ夢に居ても不思議じゃないかも」
 ティナはそう言って肩をすくめた。
「そうね。あぁ、本当にずっとここにいたい」
 とうなずくミリア。

 ふと二人の近くから別の声が聞こえて来た。
「……幸せ」
 幸せに満たされている声。
「……この声は詩亜?」
 声の主が誰なのか分かったミリアが声の主、詩亜に声をかけた。
「……あ、ミリアさん。それにティナさんも」
 声をかけられた詩亜は変わったもふもふ動物から顔を上げ、ミリアとティナの顔を見た。
「詩亜も居たんだね」
 とティナも笑顔。
「私達三人同じ夢を見ているのね」
 ミリアは今の状況に思わず笑みをこぼす。まさか、誰かと同じ夢をみるとは思いもしなかったから。
「もふもふの」
 ティナがミリアの言葉に付け加える。
「一人で楽しむのもいいけど。こうして誰かと楽しむのも素敵ね」
 詩亜は笑顔で言った。大好きなもふもふと同じようにもふもふが好きな人と夢の中にいる。滅多にある事ではない。今日は本当に素敵な夜。
「そうね。覚めて欲しくはないけど。覚めるまでもふもふするのよ」
 詩亜の言葉にうなずくミリア。
「当然よ。一度にこんなにたくさんのもふもふに出会う事なんてあまり無いんだから」
 ティナは巨大うたげうさぎに抱きつきながら幸せそうに言った。
「私も! 本当に今夜の夢は素敵な初夢になったね」
 詩亜はティナに続いて巨大わたげうさぎのもふもふを始めた。
「……私も」
 ミリアも近くの巨大犬をもふもふした。
 目覚めが来るまで三人はひたすら動物をもふもふし続けた。