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【第三次架空大戦】這い寄る闇

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【第三次架空大戦】這い寄る闇

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 そして、トマスはマスコミにも報道管制をしく。理由はスパイ関連の情報の流布により民間に不安が増大しているため。そして、その軍令を利用してセラフも拘束するのだが、当然キョウジにはその情報は伝わらない。キョウジのモニタには疑心暗鬼の空気を何とかしようと考え、リリーのようなスパイと疑われた人を庇う人達の姿や、勇者の戦う戦場の様子を果敢に取材するセラフの姿が写っていた。
 そして、国軍の基地に連れてこられたリリーとミレリア、ディミーアは高級なソファのある応接室でおいしい紅茶を飲んでから三人バラバラにされた。もちろんそれはディミーアから凶暴化装置や通信装置を取り除くためである。そのため、リリーとミレリアはバラバラにされたあと、再び合流することになるのだった。
「ふう……申し訳ありませんでしたリリーさん。ことをスムーズに運ぶためには騒動の渦中にいる貴女をダシにするのが一番だったものですから……」
 トマスはそう言って丁寧に謝罪する。
「どういうことか説明してくれるんでしょうねぇ?」
 ミレリアは、副官たる大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)とそのサブパイロットの讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)をジト目で睨んでいた。
「もちろんや」
 泰輔はそう言うと事情を説明しだした。事は、一石で二鳥も三鳥も狙った国軍の作戦だったのだ。
 第一に、スパイ疑惑の渦中にいるリリーを保護すると共に真のスパイを探りだすこと。これについてはすでに意味がなくなりつつあった。
 第二に、その他に潜んでいるであろうスパイの活動を促すこと。リリーが連行されたならばスパイ疑惑に関する国軍の視線は緩むに違いない。そう考えてスパイが行動を起こすのを促すため。
 第三に、狂戦士化装置が埋め込まれているヘルガイアの有機アンドロイドを確保するためだった。
 一番の大きな目的はこれで、エクスのメモリーを解析すると彼女は記憶を操作されて送り込まれており、ヘルガイアに関する情報は一切所持していなかった。である以上、装置が発動しなければ彼女はただの善良な少女であるに過ぎなかったことになる。
「なにそれ……許せない。とんだ下衆野郎ねぇ」
 ミレリアはその話を聞いて心底蔑んだ様子で毒を吐いた。
「こらこら、仮にもアイドルがそんな言葉遣いするもんやないでぇ」
 泰輔がたしなめると、顕仁も「左様。雅でないとな」と同意する。
「それにしても、リリー・アトモスフィア、のぅ……」
「どうしました?」
 顕仁の言葉と表情がなんとも言えない不思議なものだったのでリリーは思わずそう尋ねた。
「なに、そなたがリリーなら我らはローズ・アトモスフィアだのう思うてな」
「こら、顕仁!」
「どういうことぉ?」
 顕仁の言葉に泰輔が突っ込みを入れるが理解できないミレリアが質問を続ける。
「百合っぽい雰囲気と薔薇っぽい雰囲気ということだ」
「だからやめいて!」
「訳がわかりません」
 リリーは素で受け答えをする。
「あー……」
 一方ミレリアは理解したのかこめかみの辺りを人差し指でポリポリとかいていた。
「なるほどねぇ……」
「どういうこと?」
「貴女はそのままでいいわぁ」
 ミレリアはそう言ってその話を打ち切ると元の話題に戻るように促した。
「そうですね。では続けましょう」
 魯粛がそう言って話を続ける。
 そして、軍はネフィリム姉妹からもろもろの危険な装置を除去した上で住民として彼女たちを受け入れることを決めた。今現在、エメラダの力を借りてそれらの処置を行なっているという。
「ふぅん。軍にしてはまともじゃないの」
 ミレリアのその感想にトマスは苦笑する。
「まあ、軍だって人間の集まりですからね。危険が除去できるなら、それくらいの度量は見せるよ」
「ま、そうねぇ。ということは、いまは本当のスパイの活動まちかしら?」
「そういうことになるね」
 ミレリアの言葉にトマスは頷いて肯定する。
 そして、泰輔が
「そろそろ嬢ちゃん戻ってくるけど、真実は墓まで持ってってや?」
 と両手をあわせて仏さんを拝むように頼み込んでくる。
「当然よぉ」
「わかりました」
 それに二人が同意したころ、ディミーアがミカエラとテノーリオに付き添われて入ってくる。
「ディミーアちゃん!」
 リリーが立ち上がってディミーアに駆け寄り、抱きしめる。
「良かった……」
 リリーが安堵の吐息を漏らすと、ディミーアは
「ただいま」
 と笑顔で言った。
「で? 何を聞かれたのぅ? そして何を言われたのぉ?」
 ミレリアが、やや警戒しながらディミーアに尋ねると、彼女が街なかで聞いたスパイに関する情報のことを聞かれたあと、本当のスパイを泳がせるために拘束した、と言う話を聞いたとディミーアは喋った。
「こっちも似たようなものだったわぁ」
「わたしも……」
 ミレリアとリリーが申し合わせたようにそう言うと、トマスが
「まあ、民間人立入禁止区域以外は自由に動いていいから、しばらくゆっくりしていてください。ミレリア、二人の世話を頼めるかな?」
「まかせてぇ」
「よし。じゃあ、これで失礼するよ。魯先生、テノーリオ、ミカエラ、行くよ。軍内部の巡回をする」
 トマスがそう宣言すると三人は彼に従って応接室をあとにする。