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リアクション
「なぁ、ツインチョコないか?」
戦いの最中。間の抜けた質問をしながらドラックストアの扉を叩いたのは九条・ジェライザ・ローズだった。
誰も居ない店内にずかずかと入り込み、店内の棚を乱暴に物色して行く。
「あるだろ? ツインチョコ。
何処の店にもあるもんな。いいんだよノーマル味じゃなくても、この際抹茶とか、ホワイトチョコ味でもいいからさ」
菓子の棚を行ったりきたりして、片っ端から見ていくのに、ローズの目当ての、あの看板に書かれていたチョコレートが見当たらない。
後ろから現れた餓鬼には目もくれずに、袋をぶちまけ、棚を引倒し、頭をかきむしった。
「なんで無いんだよおおおおおお!」
「ロゼ!?」
天井の低い店内では不利な2メートルもの大太刀を振り回し一人戦うパートナーの姿に、冬月 学人(ふゆつき・がくと)は驚きに目を見開いた。
一時間程前だろうか、彼とパートナーのローズが離ればなれになったのは。
まだ被害が少なかった頃、彼とローズは大通りに面したあの工具店に立て篭っていた。
学人が店内に這入ってくる餓鬼を退け、医療の道を志すローズは店内に負傷したものを運び込み、治療する。
気の合った連携も、終わりの見えない戦いと怨霊の登場で瓦解し、見知らぬ少女を守ろうとした学人とローズは離ればなれになってしまった。
明かりの切れた真っ暗な店内に居たローズは、彼と少女が亡くなったものだと勘違いしていたのだ。
「ローズ、何であんなところで一人で戦ってるんだ?
くそ、助けにいかなくちゃ!」
「この子は、わたくしが」
美緒の申し出に頷いて、学人は地面に落ちていた消防斧を取り上げドラックストアへと飛び込んだ。
「うおおおおああああああ」
自分を鼓舞する為か、餓鬼達を威嚇するためかもはや本人にもわからない。
大声を上げて斧をぶんぶんと力任せに振りまくる。
首、腕、足、むちゃくちゃに振り回しているから、当たる場所も適当で、傷も浅く致命傷にはならない。
そのうち一匹の餓鬼の背骨で、斧の刃が動かなくなった。
「ぐっ! くそぉ!」
閊えた斧を両手で持ち上げると同時に餓鬼の尻を蹴り飛ばすと、その餓鬼が壁に当たった。
その瞬間、バチバチと花火が上がり、イカレていた電気系統が復活する。
『カンカンミカカンカンカカーン なんでも売ってるドラックストアー♪』
件の間抜けなテーマソングと共に、天井の明かりとついでにスプリンクラーが発動した。
人口の冷たい雨を浴びて、ローズは動きを止めて前を見る。
「が、学人……、なのか?」
呆けた顔を向けられて、学人は悪戯っぽく眉を曲げた。
「一人何匹だ?」
「……ああ、ああ! 100匹だ! こいつらまとめて私達で相手してやろう!」
*
「……何…………?」
誰も動く事の出来ない様な青い衝撃の中、ルカルカは耐えていた。
契約者達が氷壁に守られながらも膝をついている。
目の前で餓鬼と怨霊の群れが、炎に灼かれるように悲鳴をあげて消えて行く。
あれ程往来を埋め尽くしていたものたちが、青い光りに一掃されていた。
呆然のする彼女の元に、パートナーの大きな声が叱咤するように飛び込んで来た。
「ルカ! 武器は俺を使え!!」
こちらへ走って来たコードを「受け取って」、敵へ向き直ったルカルカは群れの中へ突っ込んで行く。
「道を開くわ!」
ルカルカは、紅蓮の炎を纏う魔槍スカーレットディアブロを餓鬼の群れめがけて投擲した。
槍の弾道の周囲にいた餓鬼は消えぬ炎に灼かれ霧散していく。
その道筋を氷術を纏った槍となったコードを手に、次々に敵を薙ぎ払う。
中心に、青い光りに怯む香菜を乗っ取った鬼の姿と、絵巻が見えた。
「見つけた!!」
ルカルカとコードの声が重なる。
グンっと引っ張られるような衝撃を身体全体に感じて、ルカルカは一足ひとあしを踏み潰す様に走って行く。
コードが絵巻に突き進んでいる。
「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
腕に全身全霊の力を込めて、ルカルカとコードは一つの光りの軌跡のように線を描いた。
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