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第三回葦原明倫館御前試合

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第三回葦原明倫館御前試合

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四回戦


   審判:プラチナム・アイゼンシルト
○第一試合
北門 平太(宮本 武蔵) 対 ルカルカ・ルー

「観客の皆様に申し上げます。四回戦第一試合、ルー選手の対戦相手、北門選手ですが、ドクターストップがかかったため、試合を辞退いたしました。よって、ルー選手の不戦勝とします」
 ええーーーー!? と、残念がる声が客席に湧き上がる。
 もっとも、一番残念がったのは、武蔵自身と当の試合相手であるルカルカだったに違いない。

不戦勝:ルカルカ・ルー


   審判:柊 恭也
○第二試合
レキ・フォートアウフ 対 ザーフィア・ノイヴィント

「っつーことで、実質四回戦の第一試合はこの第二試合! 『秘密喫茶』の挑戦者LV3ことレキ・フォートアウフ対文字通りの強者、ザーフィア・ノイヴィントだあああ!」
 恭也は念願かなって選手紹介をしたものの、その称号つける必要あったの? とレキからは睨まれた。
「まったくだ。だがまあ、何はともあれ、ここまで来た。お手柔らかに頼むのだよ」
「こちらこそ」
 レキは百合園生らしく、優雅に一礼した。
 どんっ、とザーフィアはその大剣を地面に突き刺した。
「見ての通りの超重武器だ――手加減はできないよ!」
【クライ・ハヴォック】の警告に、レキは身を強張らせた。このまま突っ込んでも、思うように体を動かせずに負けるかもしれない。
 ならば、とレキは考えた。
 一方のザーフィアは、相手の出方を待った。レキは動きを見せない。警告が効いたようだ。彼女は剣を肩に担いだ。
「怪我したくなかったら、上手く避けてくれたまえ!!」
 空を裂く音に、レキは反応した。模擬戦用ランスが、木剣を受け止める。
「受け止めたか! ならば、これはどうだ!?」
 いったん剣を持ち上げ、ザーフィアは再び振り下ろす。レキの頭部目掛けて。
「避けるがいい!!」
「避けないよ!」
 レキは、ザーフィアが剣を持ち上げた瞬間を狙って懐に入り込んだ。それも低い位置に。下手をすれば本当に頭が砕けかねないその行為に、ザーフィアは感嘆した。と同時に、レキのランスが彼女の腿を突く。
「くっ!!」
 下半身から急速に力が抜け、ザーフィアはバランスを崩して倒れた。
「レキ・フォートアウフゥゥゥ!」
 レキの手を借り、木剣を杖代わりにザーフィアは立ち上がった。
「負けたよ。今の僕は、さて、大した強さでもないようだ」
「ううん。運が良かっただけだよ」
「運も実力の内だ。胸を張りたまえ」
 二人は優雅に礼をし、別れた。

 控え室へ戻る途中、そこに新風 燕馬がいた。
「白衣の天使の入用はないか?」
「……馬鹿なことを言っているな、燕馬くん」
 ぽふ、とザーフィアは燕馬の肩に額を乗せた。
「しばらく、こうしていてくれるか」
「……疲れてるなら、救護室のベッドで寝るか?」
「いや――いい。しばらくこうしていれば、回復するから……」

勝者:レキ・フォートアウフ


   審判:プラチナム・アイゼンシルト
○第三試合
ダリル・ガイザック 対 グレゴワール・ド・ギー

 大体そもそも、とダリルは【ホーリーブレス】で傷を癒やしながら考えた。
 そもそも、俺は参加するつもりなどなかったのだ、と。
 パートナーのルカルカ・ルーが、勝手に申し込んでしまった。もちろん、逃げ出すことも可能だったが、ルカルカのワガママや暴走にいちいち反発していては、逆に身が持たない。適度に付き合ってやるのがいいとダリルは経験上、知っている。
 気が付けばルカルカと共に四回戦まで勝ち上がってきた。ここまで来たからには、パートナー同士の決勝戦というのも悪くはないな、と彼は思った。

 グレゴワールの素早い攻撃を、ダリルは冷静に観察し、避けた。思ったより、動きが速い。やはり機動力を削ぐのが得策だろうと、ダリルはグレゴワールの足を狙った。
 しかし弾は、グレゴワールの盾で防がれてしまう。ほぼ同時に撃った弾は、一直線にグレゴワールの胸へ突き進む。
「よし!」
 盾は足元だ。避ける暇もない。ダリルは勝利を確信したが、次の瞬間、愕然となる。
 グレゴワールは振り下ろした木剣で弾を真っ二つにし、そのままダリルの肩へ食い込ませたのだ。
 肩が砕け、激しい痛みがダリルの全身を支配する。危うく叫び声を上げそうになるが、辛うじて堪えた。
 プラチナムが担架を呼ぶかと尋ねたが、歩いて行けるとダリルは答えた。
 しかし、控え室に向かう途中、ダリルは廊下の壁に寄りかかったまま、気を失ったのだった。

勝者:グレゴワール・ド・ギー


決勝戦


   審判:柊 恭也
○第一試合
ルカルカ・ルー 対 レキ・フォートアウフ

「っつーわけで、決勝戦進出は三名! 従って総当たり戦だ! まずは人民の剣、人民の盾! ルカルカ・ルー!! 対するは『秘密喫茶』の挑戦者LV3、レキ・フォートアウフ!」
 だからその紹介やめようよとレキはため息をついた。
 ともあれ決勝戦だ。今まで以上に気を引き締める。
 ルカルカもレキも、互いの出方をまず見ることにした。堪えきれず、先に動いたのはレキだった。繰り出したランスを、ルカルカは右の木刀で受け、左の木刀はレキの肩を横から強く打つ。
 レキは痛みに呻き声を上げながらも堪え、ランスを引くと、ルカルカの足目掛けて再び繰り出した。同時に、ルカルカも右の木刀を振り下ろす。
 ちょうど中央でランスと木刀がぶつかり合い、二人は吹っ飛んだ。共に、よろめきながら立ち上がるが、
「あうッ!」
と、レキはランスを取り落としてしまった。先程の攻撃で、肩をかなり痛めたらしい。
「勝者、ルカルカ・ルー!」
 恭也の素早い宣言により、勝負は決した。

勝者:ルカルカ・ルー


   審判:プラチナム・アイゼンシルト
○第二試合
レキ・フォートアウフ 対 グレゴワール・ド・ギー

「先にルカがやろうか?」
 レキの治療に時間がかかると聞いたルカルカが申し出たが、レキはかぶりを振った。
 これも修行の一環だ。もし本当の戦闘なら、相手は怪我を理由に待ってはくれないだろう。
 ほとんど応急手当のみで、レキは再び試合場に立った。
「良い心がけだ。手加減はせぬぞ」
「いらないよ!」
 グレゴワールは真正面から木剣を振り下ろした。レキは姿勢を引くし、両手でランスを支えながら、その攻撃を受けた。そのままグレゴワールへ向かって駆ける。ランスの上を木剣が滑っていく。
「何!?」
 切っ先がグレゴワールの腕を、そして胸を狙う。
「トドメ!」
「させぬ!」
 グレゴワールは盾でレキを跳ね返した。レキは空中でくるりと一回転する。
「覚悟!!」
 グレゴワールが剣を振り上げるのと、着地したレキが力いっぱい地面を蹴るのが同時だった。目標が一瞬、――ほんの一瞬、グレゴワールの視界から消え、気づいたときには彼の眼下にいた。そしてランスが突き上げられ、グレゴワールは大きく仰け反りながら倒れた。

勝者:レキ・フォートアウフ


   審判:柊 恭也
○第三試合
グレゴワール・ド・ギー 対 ルカルカ・ルー

「さて最終決戦だ! これで優勝者が決まるぜ!」
 ここまで来たら、せめてという欲はかくまいとグレゴワールは決めた。ただ全力を出し切り、戦う。それだけだ。
「神の御心のままに!」

 グレゴワールの一撃を、ルカルカは左の木刀で受けた。重い。だがルカルカは、その勢いに身を任せた。グレゴワールの力を利用し、くるりと一回転したルカルカは、彼のグレートヘルム目掛けて二刀を叩き込む。
 しかしグレゴワールはそれも読んでいた。彼は咄嗟に盾を自分の顔の前に放り投げた。ルカルカの木刀に打たれ、盾が派手な音を立てて飛ぶ。
 瞬間、二人の視界は共に塞がれた。タンッ、と軽やかな足音をグレゴワールの耳が拾う。
「そこだ!」
 グレゴワールは渾身の力を込め、木剣を己が背後へ振った。
 ルカルカはそこにいた。――そのはずだった。
 タタタンッ。
 足音だけが耳に残っている。敵はどこにいる――?
「ここよ!」
 グレゴワールの目の前に、突然ルカルカが現れた。そして、木刀を突き出す。
 鎖帷子の一部が音を立て、弾け飛んだ――。

 自分の周囲に幾重にもついた足跡を見つけ、グレゴワールはかぶりを振った。
「我が信仰、未だ先に逝った者達には及ばず、か……。神の国は遠い……」

勝者:ルカルカ・ルー