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リアクション
この祭りにきて知り合いに偶然出会い、そこから一緒にピクニックを始めた人たちもいる。
「綺麗な景色だね」
「たまには、こうやってのんびり過ごすのもいいね」
丘の一画で、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)とコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)がシートを敷いてピクニックをしていた。先ほど、偶然通りかかって出会った美羽の友人である高原 瀬蓮(たかはら・せれん)と、瀬蓮と祭りにきていた白雪 魔姫(しらゆき・まき)も一緒にいる。
シートの上に広げられているのは、サンドイッチとオードブルが詰め合わせになったバスケットとハーブティー。
「これもさっき作ってきたんだけど、よかったら瀬蓮ちゃんたちも食べてね!」
美羽はそう言って、ドーナツのバスケットを開けると三人の前に差し出した。このドーナツは、甘いドーナツが好きなコハクのために、先ほど丘の下にある調理ブースで美羽が心を込めて作ったものだ。
「わあ?、美味しそう。これ、もらっていいの?」
「うん! ちょっと、二人で食べるにはたくさん作り過ぎちゃったから」
瀬蓮は嬉しそうに、ドーナツに手を伸ばした。コハクもすぐ後に続いてドーナツに手を伸ばす。
「……あれ? 前よりもっと美味しくなってる」
ドーナツを一口頬張ったコハクが言う。
「本当? 良かった!」
美羽は毎日、コハクのために少しでも喜んでもらおうと思って料理の腕を磨いているのだ。
「やっぱりドーナツは、揚げたてが一番だよね。どんどん食べてね!」
「それにしても、本当にここは恋人同士で来る人が多いのね」
魔姫が美羽のドーナツを頬張りながら、辺りを見回して言う。魔姫もちょこちょことドーナツをつまんでいて、まんざらでもなさそうだ。
「婚活に人気のお祭りだっていうもんね。これが切っ掛けで結婚する人も結構いるみたいだよ」
「そうなんだ?。魔姫ちゃんは結婚とかしたい?」
瀬蓮が魔姫に訊ねる。
「ワタシにはまだまだ先ね。今、付き合ってる人も居ないし」
「そっかあ?」
「と、いうか瀬蓮……ワタシが好きなのはアナタよ?」
「瀬蓮も、魔姫ちゃんのこと、好きだよ?」
「瀬蓮の言う『好き』とは、違うわ」
美羽とコハクが、ぽかん、と魔姫を見つめる。
「瀬蓮、愛してるわ。他の誰よりも、アナタを」
「えっ、好き……とは、違う……?」
瀬蓮はまだ良く意味が分かっていないように、きょとんとした顔で魔姫をみつめる。
「……でも、ワタシを嫌いじゃないなら、他に誰か居るという訳じゃないなら、少しワタシの事も考えてみてくれないかしら?」
「えっと、魔姫ちゃんの『好き』は友達としての好きじゃなくて、恋人とかの好き……?」
瀬蓮の頭の中で、ようやく魔姫の言葉が結びついたらしい。
「……瀬蓮が恋愛というものを意識できるようになるまで、待ってるから」
そう言う魔姫の顔を瀬蓮は見て、それから、頬を染めた。
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