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第四章 双子と通り雨・学校


 イルミンスール魔法学校、玄関。

「……おかしな雨が降ってる」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は大図書館に本を返却し終え帰ろうとしたが、妙な雨に足止めを喰らってしまった。
「……通り雨だから止むまでここにいよう」
 美羽は青空を確認してすぐに止む通り雨だと判断。
「せっかくだからあの二人に会いに行こう」
 美羽は雨宿りついでに双子の様子を見に行く事にした。

 校内。

「勉強はこれくらいにしてあの悪ガキどもに会いに行くか。ちょうど雨で外に出られないしな」
 シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)は魔法の勉強に区切りを付け、窓の外を確認した後、双子に会いに行く事にした。

 校長室前。

「エリーにも会ったし、あとはあの二人に会うだけかな。ついでに差し入れも」
「自ら騒ぎに巻き込まれに行くのか」
 校長と一緒にお菓子を食べたりして楽しいひとときを過ごしたルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)
「双子がきちんとエリーの手伝いをしてるか気になるし。ダリルはどうするの?」
「俺はあいつらに会ってから大図書館で研究の蔵書探しと調べ物をする」
 ルカルカとダリルはのんびりと双子に会いに行った。

 廊下。

「あーもぉ! 何なのあのルゥルゥって子はッ! リースの親友はあたしだって言ってるのにぃー!! ね、リースもそう思うでしょ?」
 マーガレット・アップルリング(まーがれっと・あっぷるりんぐ)は苛立ちながら双子に悪戯を習いに行ったルゥルゥ・ディナシー(るぅるぅ・でぃなしー)を捜し回っていた。
「……えと……それは」
 付き添いのリース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)はマーガレットの苛立ちに巻き込まれ返答に困ってしまう。リースにとってマーガレットもルゥルゥも大事な親友だから。
「リース、口ごもっていないではっきり言って。もしかして、あたしじゃなくてルゥルゥの方を親友とか思ってる?」
 マーガレットはリースに少しきつい目を向け、返事を要求する。
「……えと、私は……マーガレット、あそこに」
 リースはルゥルゥを少々強引だが優しい良い子だと思ってるが、それを上手く表現出来ずに言葉を濁し、誤魔化すかのように発見したルゥルゥを指し示した。
 そして、
「……えと、行ってみましょう」
 リースは急いでルゥルゥ達の所に急いだ。
「ちょっと、リース!」
 答えをはぐらかされたマーガレットは少しだけ口を尖らせた後、追いかけた。

「本当に何なのよ。リースの親友はあたしに決まってるわよね。あの野蛮なマーガレットよりずっと合ってると思うのよ。ナディムもそう思わない?」
 下半身が魚のため空飛ぶ箒に乗っているルゥルゥはナディム・ガーランド(なでぃむ・がーらんど)相手にマーガレットと同じような事を言っていた。
「姫さん、それマーガレットもリースに同じ事言ってると思うぞ」
 正直なナディムは思った事を口にした。現在まさにその通りの事が起きていたり。
「で、どうなのよ?」
 ルゥルゥは再び問いただす。
「……俺はリースじゃねぇからなぁ」
 ナディムは難しい質問を上手くいなす。
「そんなずるい返事は無しよ」
 ルゥルゥは納得せず、不満な顔を向けてまともな答えを要求。
「それよりあの二人に頼むって事は悪戯か?」
 ナディムはルゥルゥの目的を話題にした。
「えぇ、そうよ。あたしに似合うハデなものをね。あたしの美貌があればあっという間に受けてくれるはずよ」
 ルゥルゥは男共が喜んで下僕になりそうな愛らしい笑顔を浮かべた。
「……姫さん、そんな手を使わなくてもあいつら悪戯のいの字を出せば、喜んでしてくれるぜ」
 ルゥルゥよりも双子と関わった回数が多いナディムは対応の仕方もよく知っている。
「あら、そう。簡単そうでよかったわ」
 ルゥルゥは双子が文句を言いそうな事を口走った後、小悪魔な笑みを浮かべた。
「……当然、騒ぎが起きるのも簡単だ。姫さん、煽るような事はするなよ」
 ナディムは何とか止めようとするも
「発見♪」
 ルゥルゥは双子を発見するなりもの凄い速さで行ってしまった。
「おいおい、姫さん」
 ナディムは騒ぎ阻止のため急いだ。

 一方、他校の方々。
「もしかして双子に会いに行く途中?」
「あぁ、そうだ。そっちもか?」
 美羽とシリウスは廊下でばったり。同じ目的で動いていれば遭遇するのも当然。
「そうだよ」
 美羽は即答。
 そこに
「ルカもだよ。よかったら、一緒に差し入れを食べようよ」
 大量のスイーツ片手のルカルカとダリルが合流。
「名案!」
 甘い物が好きな美羽は手を叩いて大賛成。
「何もなけりゃいいけどな」
「だね〜。確かあの実験室だよ」
 シリウスの危惧に同意しつつルカルカは付近の実験室を指さした。
 四人は仲良く実験室に向かった。

 他校の方々が来る前。実験室前。

「少し一休みしようぜ」
「校長の手伝いの奴、もう少しで終わるしな」
 双子は校長に頼まれていた事を最後までするはずはなく早速余所事をしようとする。
 その時、
「ちょうど二人を捜していましたのよ。私のお願いを聞いて頂きたくて」
 猫を被ったルゥルゥは美少女な顔が見えるように上目遣いでお願い。
「……この美人さん、どこか見覚えねぇか?」
 ヒスミ・ロズフェル(ひすみ・ろずふぇる)はじっとルゥルゥの顔を見て見覚えを感じるも思い出せない。ルゥルゥの見事な猫かぶりのおかげで。
「ほら、ヒスミ、海で会った奴だ……何か前会った時と雰囲気違くね?」
 キスミ・ロズフェル(きすみ・ろずふぇる)が海のゴーレム騒ぎで会った事やその時と雰囲気が違う事を指摘した。
「……覚えてたのね。改めてお願いするわ。あたしに似合うハデで一回で効果があるような悪戯を教えて欲しいんだけど」
 猫かぶりがばれた途端、ルゥルゥはいつもの調子に戻り、改めてお願いをする。
 すると
「ちょっと待て」
「うるさい奴はいないよな」
 双子は周囲を見回し校長と一緒にいる説教好きの魔女がいないか確認する。
「……大丈夫よ。校長達はシャンバラ教導団のお友達と会っていたから」
 双子の危惧を察したルゥルゥが心配を取り除いてやった。
「よし、派手かどうかは分からねぇけど。試したい物がある」
「それを見せるぜ。こっそりと。校長達にはばれないように」
 双子は、ナディムの言う通り簡単にルゥルゥの依頼を受けた。
 そこに
「おいおい、こっそりそんな事している場合じゃないだろう。頼まれていた手伝いは終わったのか?」
 ナディムがルゥルゥと双子を止めるために登場。
「……」
 ナディムに痛い所を疲れた双子は沈黙。
「……それは終わってねぇって事だな」
 双子の反応で答えを知ったナディムは呆れ顔。
「あ、でも困っている人は助けないといけねぇし」
「そうそう人助けだ」
 双子は必死によそ事をする事を正当化しようとする。
「……姫さんをだしに使うか」
 ナディムは双子の言い分に溜息。
「優先してくれるなら是非して欲しいわね」
 ルゥルゥは笑顔を浮かべ、ますます煽る。
 阻止する事をまだ諦めていないナディムは
「……そう言えば、もうそろそろ学校祭の時期だよな。聞くまでもなく当然、出し物は考えてるんだろ?」
 派手なイベントが好きなルゥルゥと面白い事が好きな双子のため学校祭の話題に変えて悪戯から注意を逸らそうとする。
「そりゃ、色々と。な、キスミ?」
「おう」
 真っ先に逸らされたのは双子だった。
 その時、
「……あの、学校祭と言えば、誰が一番美人さんか決めるミスコンもあるかもしれませんよ」
 リースが参戦し、ルゥルゥの気を逸らせるために外見に凄く自信があるところを突いた。
「……ミスコンね。あれば当然参加するわよ。そして一番はあたしに決まっているわ。こんなに可愛いもの。二人もあたしを選んでくれるわよね?」
 リースの思惑は成功し、ルゥルゥは愛らしい笑顔を双子に向けるのだった。
「……それは、まぁ、な、キスミ?」
「……あぁ、まぁ」
 双子は返答に困り、言葉が濁る。確かにルゥルゥは可愛いと思っているが、返事をしてしまうと何かに巻き込まれるのではと察知してたり。
「何、言ってるのよ!」
 顔に青筋立てたマーガレットがルゥルゥの顔を押しのけるようにして双子とルゥルゥの間に入り込もうとする。
「ちょっ、何をするのよ。今、大事な話をしているのよ」
 当然ルゥルゥはマーガレットの所業に腹立ちの様子を見せる。
「話?」
 上手く入り込んだマーガレットはイラッとした調子でルゥルゥに聞き返した。
「ミスコンで一番確定なあたしの方がリースの親友には相応しいという話よ」
 ルゥルゥは双子の方に視線を向け、勝ち誇ったように言った。
「……二人は口ごもっているだけではっきりとは言わなかったでしょ。やっぱり、明るくて可愛いあたしみたいな女の子の方が好きって事よ。だよね?」
「……まぁ、可愛いとは思うけど。なぁ?」
「確かに……」
 と双子。確かにマーガレットも可愛いとは思っていたり。
「だから、あたしがリースの親友に相応しいって事。二人もそう思うよね?」
 マーガレットは勝ち誇ったように腕を組み、ニヤリと笑みを浮かべながら双子に賛成を貰おうとする。
「……仲は良いよな、三人とも」
「仲良し三人組じゃだめなのか」
 リース達が仲良しなのは海での事などで知っているのではっきりと答える。
 答えに納得しないのは二人だけ。特に三人組という単語に。
「……一人、多いわね。もしかして野蛮なマーガレットを入れてるの? 本当の親友は可愛い美少女のあたしよ」
 ルゥルゥは不満な顔をするが、これまた可愛らしい。
「……可愛いだけじゃだめよ。明るさと元気さを持つあたしが親友よ。この蒼空学園テニス部で鍛えた足。海では役に立ったでしょ?」
 マーガレットは頼りになる足を見せびらかす。
「……確かに助けられたよな」
「……何が正解なんだ」
 海での騒ぎを思い出すもマーガレットとルゥルゥの気迫に押され、助けを乞うようにリースとナディムの方にちらりと視線を送る始末。
「あぁ、こっちを見て助けを求めてるな」
 ナディムは憐れな双子に思わず笑いを洩らす。全く意に介していない。これまで双子の騒ぎに巻き込まれ、図太いと知っているので。
「……マーガレット、ルゥルゥさん、あの、ヒスミさんとキスミさんが困ってますよ。それにお手伝いがまだ終わっていないそうですからそちらに戻って貰わないと」
 優しいリースは何とか双子を救おうとパートナー達の言い争いを止めようとする。
「そうだぜ。これ以上引き止めていたら俺達まで大目玉を食らうかもしれねぇぞ」
 ナディムも加勢し、場を収めようと頑張る。
 その結果、
「あー、それは嫌」
 マーガレットは説教に巻き込まれないよう引き下がる。
「ミスコン前に説教は避けたいわ」
 ルゥルゥも引き下がるのだった。
 言い争いをしていてもやはり双子に巻き込まれ説教されるのは嫌らしい。
「ほら、姫さん行こうぜ。二人の邪魔しちゃいけねぇから」
「……えと、マーガレットも」
 ナディムとリースは何とか双子から引き離しの仕上げにかかる。
「分かったわよ」
「そう言えば、もうそろそろ話も終わる頃よね」
 マーガレットは校長達のお喋りも終わっているだろうと予想。それぐらい時間が経っていた。
 そして、何とか双子から離れる事が出来てからリース達は仲良く騒がしく残りの時間を過ごした。