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七夕祭りinパラミタ内海

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七夕祭りinパラミタ内海

リアクション

「綺麗な星空だね、アル」
「………………あぁ」
 仲良く七夕を楽しみに来たリアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)アルトゥーロ・ヨヴァノヴィッチ(あるとぅーろ・よばのびっち)。ただし、笑顔なのはリアトリスだけでアルトゥーロは強ばり怯えた様子である。しかも仲良く来た割には二人の距離は一定空間空いている。
「……折角だからまずは屋台を見て回ろう。あちこちから美味しそうな匂いがして食べたくなるね」
 リアトリスは親しげな笑みを浮かべ、歩き出した。
「…………(……短冊に願い事を書きに来たけど……嫌だ、もう帰りたい……男なのに男に見えなくて……怖いし)」
 アルトゥーロはリアトリスとは視線を合わせぬようにしつつも男なのに女性らしさと女性の服を着ていて男に見えないためリアトリスに怯え、祭りに集中出来ない。アルトゥーロは製作中の事故で回路の一部が破損して不一致恐怖症になった男性型ギフトなのだ。
「…………(笹のある浜辺まで少し距離があるけど、アル保つかな。何とか怯えさせないように女性らしく振る舞おうと思うけど)」
 リアトリスは何とかアルトゥーロが怯えるのを落ち着かせる事が出来ればと気を遣っていたり。
 ともかく二人は距離を保ちながら食べたり飲んだりして楽しみ、不一致に遭遇する度に丁寧に説明し、アルトゥーロを落ち着かせる。それ故、なかなか笹が設置させている浜辺に辿り着けずにいた。
 そのため
「…………(このままじゃ、笹の所に辿り着く前に夜明けが来るよ)」
 リアトリスは歩きではなく駆け足に変更し、急ぐ。一番の目的は短冊に願い事を書く事だから。
「……ちょっ」
 さすがのアルトゥーロも急いだ。

 笹立ち並ぶ浜辺。

「……願い事と言ったらこれしかないよね(家族と友人達ともっと仲良くなれますように)」
 リアトリスはさらさらと大切な人達の顔を思い浮かべながら短冊に願い事を
「よし、出来た……夜明けに海に流そうっと」
 リアトリスは短冊を笹には吊さず、折り鶴の形に折った。
 それから
「……アルは無事に書けたかな?(アルの悩みを解決できるならいいけどよく考えると神頼みっていうのはちょっと……でもこれがきっかけで前に進めたらいいんだけどちゃんとできるかな?)」
 自分に怯えるため離れた場所で願い事を書くアルトゥーロの事が気に掛かり、振り返った。
 その瞬間、
「アル!?」
 アルトゥーロの絶叫が耳に入り振り向いた先に広がるあまりの光景に驚き、リアトリスは慌てて駆けつけた。

「…………願いは……」
 願い事を書こうとした瞬間、アルトゥーロの横を螢が横切り、海の方へと飛んで行った。
 それを見た途端
「有り得ない。こんなの有り得ない。螢が、虫が光るのはおかしい!! 空の上に陸が、海があるなんて有り得ない!!!!!!」
 戦慄したアルトゥーロは目にした不一致に絶叫し、高ぶる怖さに
「!!!!!」
 震える声で自然の神秘さと悪魔的な力をうたった歌を口ずさみながら付近の木に登り、怖がる始末。
「有り得ない、有り得ない……絶対に」
 しっかりと幹に掴まり不一致に震えるアルトゥーロ。

「アル!!」
 絶叫を聞いて駆けつけたリアトリスは心配の顔で見上げた。
 他にもアルトゥーロの叫び声を聞いた
「叫び声が聞こえましたが、どうしました?」
 自治活動を行っていたエクレイルが護身用武器を携え駆けて来た。
「大丈夫か」
 空から見守り活動をしていたカルスも地に舞い降り駆けつけた。
「駆けつけてくれてありがとう。実は……」
 リアトリスは駆けつけてくれたエクレイル達に礼を言い、手早く事情を話した。
 事情を聞いた後、
「降りられるか?」
 カルスがぶっきらぼうな口調で木の上のアルトゥーロに訊ねた。
「!!!!!」
 アルトゥーロは歌うばかりで答えないというか答えられない状態。
「もしかして降りられないのでしょうか。それなら手伝いましょう、カルス」
 アルトゥーロの様子からエクレイルはなぜか降りられなくなっていると察し、手を貸す旨を示した。
「あぁ」
 カルスも同じく手伝う事に。
「ありがとう」
 リアトリスは礼を言い三人で力を合わせてアルトゥーロを救った。

 アルトゥーロ救出後。
 しばらく時間を掛け落ち着きを取り戻したアルトゥーロは
「…………(願いは……不一致が怖くなりませんように)」
 何とか短冊に願い事を書くとすぐに怖いのでその場で紙飛行機にして海に向かって飛ばした。
「……(何とか無事に終わってよかった)」
 リアトリスは折り鶴にした短冊を海に流しながらアルトゥーロを盗み見てほっとしていた。
 一番の目的を終えた所でリアトリス達は改めて祭りを楽しむべく屋台に行き、食べ歩きをした。
 まずはたこ焼きとお好み焼きを食べ歩いた後、
「何か冷たいジュースを飲んでデザートにお祭りの定番のりんご飴を食べようかな。アルは?」
「……酒を飲みたい」
 主食的な物を食したリアトリスとアルトゥーロはデザートや飲み物を楽しんだ。
 海へと旅立った二人の願い事は夜明けと共に光の粒子となり空に還った。