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七夕祭りinパラミタ内海

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七夕祭りinパラミタ内海

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■七夕祭り・2


「お祭りと言えば、屋台だねっ!」
「ついでに稼ぎ時だ」
 遠野 歌菜(とおの・かな)月崎 羽純(つきざき・はすみ)は海の家の営業という事で楽しむ方ではなく楽しませる方で参加していた。
「みんなに美味しい料理や飲み物を振る舞うために一緒に頑張ろうね、羽純くん♪」
 歌菜はやる気まんまんの表情。営業前なのに楽しそうだ。
「そうだな。しかし、祭りなら人も多くなって忙しくなるだろう。なるべく客を待たせないように調理と接客をこなさないとな」
 と、羽純。
「私と羽純くんなら大丈夫だよ!」
「無理はするなよ」
 歌菜とは反対に羽純は歌菜が無茶をしないよう釘を刺した。
 ともかく海の家営業開始。

 営業開始後。
「いらっしゃいませ!」
 元気な声で歌菜は客を迎えた。
 来店したのは
「どれもこれも美味しそうね……」
 テーブルに着くなり大量に注文したセレンフィリティと
「何かオススメはあるかしら?」
 注文がまだのセレアナだった。
「それなら七夕限定メニューは如何ですか?」
 そう言って歌菜は七夕限定メニューを美味しさそそる口調で案内した。
 そのおかげか
「それもお願いね」
 食欲魔人セレンフィリティも七夕メニューを追加した。
「セレン、どれだけ食べるつもりよ」
 セレアナは呆れながらも案内を受けた限定メニューを注文した。
「では、少々お待ち下さい」
 注文を取り終わった歌菜は笑顔で言ってから離れた。
 そして、歌菜が調理に入り、
「……手際よくしないと」
 『調理』を有する歌菜は特技の料理の腕前を発揮し
「出来た物から運んで行く」
 羽純が出来た物を片っ端から運んで行く。それだけでなく調理のフォローもしたり。

 セレンフィリティ達のテーブル。
「まずは、焼きそばに、お好み焼きに……」
 羽純は定番の料理をセレンフィリティの前に並べ
「そちらが七夕限定のカレーだ」
 セレアナの前に夏野菜たっぷりのカラフルカレーが置かれた。
 そして、羽純はセレンフィリティが注文した焼きとうもろこしや限定メニューを運び最後にかき氷を運んだ。
 お味の方は
「んーー、どれも美味しいわね」
「そうね」
 セレンフィリティとセレアナ共に大満足であった。
 その様子を見た歌菜は
「……(美味しいかぁ)」
 自然と笑顔がこぼれ、嬉しくなる。
 そんな歌菜を見て
「……(客が笑顔になれば、歌菜も笑顔になる……悪くないな)」
 羽純も満足し仕事にもますます精が出る。

 この後、
「いらっしゃいませ」
 羽純が迎えた客は双子達と引き連れたエース達だった。
 五人は席に着き、メニューを選ぶ。
「まずは必須のお好み焼きと素麺にしようかな。素麺は腹持ち的に飲み物と同じだし」
「僕は猫カフェや日々のお茶の時間のメニューの参考のためにお好み焼きにしましょうか。猫カフェでも和風の日とか作って、メニューを縁日な食べ物で纏めてみても楽しそうだと思いまして」
 エースとエオリアは諸々の考えですぐに選ぶ。素麺は七夕限定で素麺の川に星形に切り取ったハム、玉子焼き、ミニトマトがポイントの夏野菜たっぷりの冷やし鶏出汁素麺である。
「俺は七夕メニューのカレー」
「焼きそばかな。ロズは?」
 双子もすぐに決めた。
「……オムレツにする」
 ロズはキスミに促される形で決めた。
 皆が注文品を決めた所で、通り掛かった羽純に声を掛け注文を取って貰った。
 そして、羽純は歌菜の元に戻り、注文を伝え、接客に戻った。
 出来上がると羽純が料理をエース達のテーブルに運んでから引っ込んだ。

 次々と客は訪れ、なるべく客を待たせぬよう気配りをしつつ双子がいるエース達の席を気に掛けていた。
 そのため
「……(人もいるなら何も起きないとは思うが、一応気を付けておいた方がいいな)」
「……(大丈夫かな)」
 羽純と歌菜は双子がいる間、十分に注意をしていた。他の客に迷惑行為を図らぬよう。
 結果、歌菜達の海の家は大繁盛で
「……(活き活きしているな。こちらまで楽しくなる)」
 羽純は楽しく忙しく働く歌菜の様子に自分まで楽しくなる。
 それは
「……(みんなの笑顔を見ると楽しいな)」
 歌菜も同じであった。
 何とか無事にエース達と双子達は美味しく料理を楽しんでから無事に店を出て行った。 この後、歌菜は客に突拍子も無い質問をされて戸惑う事もあったが、美味しい飲食物を提供する海の家は大繁盛し無事に夜明けを迎える事が出来た。

 夜明け。

「無事に夜明けを迎える事が出来たな」
「うん、笹流しだね」
 羽純と歌菜は無事にこの時を迎える事が出来た。
 羽純が折った彦星と歌菜が折った織姫が飾られた笹が側にあった。そこには当然二人の願い事が記された短冊もある。海の家営業前に用意したのだ。
 すぐに海には流さず
「……(これからも歌菜と、幸せな時を過ごせますように……かぁ、私と似た願い……羽純くんも同じように思ってくれてるんだ)」
「……(これからも羽純くんと、沢山楽しい事が出来ますように! か俺の願いとほとんど一緒だ)」
 歌菜と羽純は相手の短冊を読み、お互いに相手が共にいる事を幸せと思っている事にとても嬉しく感じた。
「……流すか」
「うん」
 羽純の言葉を合図に歌菜はうなずき、二人は一緒に海へ流した。
 流された笹に吊された短冊や飾りは海水に浸かり、光の粒子と化して天へと昇っていく。
「……羽純くん、今日はお疲れ様」
 歌菜は夜明けを眺めつつそっと夫の腕に自分の腕を絡め、夜明けの太陽にも負けない優しく明るい笑顔で見上げた。
「歌菜もな。なかなか大変だったが、楽しかったな」
 見上げてくる妻の笑顔に癒された羽純はほのかに口元を緩めた。
 そして、
「……」
 歌菜と羽純は寄り添ったまま海を眺めていた。
 どこまでも幸せな夫婦であった。