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賑やかな秋の祭り

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賑やかな秋の祭り
賑やかな秋の祭り 賑やかな秋の祭り

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 夜、たこ焼き屋。

「……双子主催の祭りでありますか。今日は楽しい日になりそうでありますな!」
 葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は賑やかな通りを見ながら口元をニヤリと歪めた。
「来た時は存分に我が作りしたこ焼きを存分に振る舞うとしよう」
 たこ焼き屋の主人イングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)もまた吹雪と同じ事を考えていた。
「待ち遠しいでありますな」
 吹雪はワクワクしながら通りを眺め、今か今かと双子が来るのを待つのであった。しかも来ると信じている。なぜならこれまでの経験から導き出した双子が通りやすい場所を狙って屋台を構えたからだ。
 しかし、その前には
「いらっしゃいであります! 美味しいたこ焼きでありますよ!(……楽しみは後ででありますな)」
 客達が訪れ、イングラハムの商売の手伝いをする必要があった。

 商売を開始してしばらく蛸が売るたこ焼きとして話題となり売れ行き好調を誇る中、
「ふぅ、祭りっていいねぇ。賑やかだし」
「そうだねぇ。一休みにたこ焼きでも食べて……」
 たこ焼きの美味しい匂いに誘われて双子の少女が訪れた。
 その瞬間
「よく来たでありますな。まさか、今日最初にお迎えするのが平行世界の方だとは思いもよらなかったでありますよ!」
「よく来た。心待ちに待っていた」
 予想と違い平行世界の双子が先に現れても吹雪とイングラハムには動揺はなかった。吹雪に至っては余裕綽々である。何せ彼女達を相手にするのはこれが初めてではないからだ。
「……キスナ、あっちの店に行ってみよう」
「……そ、そうだね」
 女双子は吹雪の顔を見るなり青い顔をして後退。何せこっちでもあっちでも自業自得とは言え吹雪には痛い目に遭わされているので。
 しかし
「遠慮しなくていいでありますよ。自分は世界差別はせずに存分にもてなすでありますから」
 『兵は神速を尊ぶ』で吹雪は瞬時に女双子の背後に回り逃げ道を塞ぎ、
「!!」
 女双子が驚いている間に気付かれぬように悪戯菓子を適当に頂戴する。
 その隙にイングラハムはただのたこ焼きではなく女双子用の特別なたこ焼きを作り上げ、
「四人で存分に祭りを盛り上げているという話は耳に入っている……そのお礼だ。食べてみたらいい」
 イングラハムはそう言うなり二人分のたこ焼きを差し出した。
「……」
 じぃと睨むばかりで嫌な予感から受け取らぬ女双子。
「遠慮するな。こちらの世界でのよい記念になると思うが……ほら、受け取らねば、冷める。どうした? 美味しい美味しいたこ焼きだ」
 イングラハムは立て続けに言葉を重ねた上にたこ焼きを二人に押しつけた。二人用に作った物なので二人に食べて貰わねば意味が無い。
「……」
 押しつけられた二人は恐る恐る容器の蓋を開け、食欲をそそる匂いにぶわぁっと襲われて思わずそれぞれ口に一つ放り込んだ。
 途端、
「!!!!」
 女双子の顔が恐怖に変わった。
 なぜなら
「か、からい!!!」
「な、何が入ってるの!?」
 女双子の舌に辛いが勢いよく走り抜けひりひりと舌が痛い。
「……刺激好きであろう二人のためにたこの代わりにわさびを入れた。どうだ? 刺激が走っただろう」
 イングラハムはニヤリとしてやったりの様子。イングラハム達はすでに双子達がしでかした悪戯については周知済みなのだ。店をやっているため騒ぎの話は通行人から色々漏れ聞くのだ。
 そこに
「これを飲むでありますよ!」
 吹雪がすかさずコップ一杯の水をそれぞれ二人に差し出した。
「!!」
 辛さに支配された二人は差し出された物が確かに水なのか確認する事を忘れ勢いよく口に注ぎ込んだ。
 途端
「す、すっぱいぃ、ものすごく」
「くぅぅ、す、すっぱい」
 滅茶苦茶顔をひん曲げた。一見すれば水だがその実体は最高に素敵な酸っぱい水であった。
「さっき二人から悪戯をしっけいしたでありますよ」
 先程吹雪が盗んだのは悪戯が仕込まれている飲み物だったのだ。
「キ、キスナ」
「ヒ、ヒスナ」
 女双子はこれ以上何かされては堪らぬと逃げ出した。
「また来るでありますよ」
 吹雪は楽しげに見送った。
 それからしばらくした後。
「早くヒスナ達と合流しねぇとな」
「あぁ、ヒスミ、あそこにたこ焼き屋があるぞ」
 こちらの双子が登場。
「……」
 屋台の前に来た所で
「キスミ、やっぱりさ……」
「あぁ、ヒスミ、さっきの通り過ぎた曲がり角に行くか」
 見知った屋台だと気付いた双子は顔を見合わせゆっくりと後ずさり。
 しかし、すでに手遅れ。
「いらっしゃい〜、味は確かでありますよ〜」
 背後から『兵は神速を尊ぶ』で移動した吹雪の声。
「!!」
 聞き知った恐怖の声にびくりと肩を震わせ、振り返る双子。
「食べていかないと、またこの前のように密着監視……いや次々と不幸が降りかかるであります」
 吹雪はにやにやと夏最後の双子密着の楽しい一日を思い出していた。
「な、何言ってるんだよ」
「不幸って」
 夏最後妙に痛い目に遭いつつも吹雪が絡んでいたとは知らぬ双子は不審な顔。
 それ以上考えて察しられる前に
「遠慮せずにたべていくがいい」
 イングラハムは『疾風迅雷』で素速く悪戯菓子を盗みたこ焼きと一緒にキスミの口に放り込み
「楽しむがいいでありますよ」
 吹雪は『行動予測』で隙を突いて双子から悪戯菓子をしっけいしヒスミの口にねじ込んだ。
 途端
「!!!」
 双子の顔色が変わり、ヒスミは呼吸をする度にカラフルな光球が口から吐き出しキスミは口がひっつき喋る事が出来なくなった。つまり吹雪達に無駄な反論をする事が出来なくなったのだ。
「今日は大満足でありますよ! こちらの世界と平行世界両方に会えたのでありますからな」
 吹雪はニヤニヤと満足そうに先に会った女双子の事をサラリと口にした。
「……」
 捜していた相手もまた被害者と知るやこれ以上ここは危険だと双子はすたこらと逃げて行った。
 その後ろ姿に
「会ったらよろしくと伝えておいてくれ」
 イングラハムは彼らが震え上がるのを知って余計な一言で見送った。当然聞くなりびくりと肩を震わせ反応していた。
「今日も義務を果たせたでありますよ」
 吹雪はこちらの世界だけでなく平行世界の二人にも自分の義務を果たす事が出来、心底満足のようであった。