リアクション
泉 美緒
ヴァイシャリー。街にふさわしい格調高い様式の喫茶店で、如月 正悟(きさらぎ・しょうご)は百合園生徒の泉 美緒(いずみ・みお)と会っていた。
「お元気そうで安心しましたわ」
美緒は嬉しそうにほほ笑む。
「大丈夫、別に検問とかは無かったからね」
そういう正悟は西シャンバラ・ロイヤルガードだ。だが街に検問が張られているわけでもなく、特に意識することもなく冬用のコートを着てきた為、誰に呼び止められる事もなかった。
そして、すでに美緒と友人である正悟が、彼女と待ち合わせをするのは難しい事ではなかった。
飲物を注文した後、正悟は用件を切り出した。
「アムリアナ女王が今、危ない状態なのは知ってるかい? アムリアナ様を励まし、その力とするため、美緒さんからメッセージがもらいたいんだ」
美緒は不思議そうに目をしばたかせた。
「わたくしなどで良いのなら、喜んで書かせていただきますが……わたくしは女王様とは縁もゆかりもなく、シャンバラ人ですらありません」
少々戸惑いを見せる彼女に、正悟はほほ笑むと言った。
「でも直接、面識がない人だからこそ、励ませる事もあるんじゃないかな
こういう本当にいろんな人の立場の言葉が女王を元気付けると思うんだ。なので、もしまだメッセージを書いてなく、少しでも書いてもいいなと思ったらお願いしてもいいかな?」
美緒は「んー」としばらく上の方を見て何かを考える。そして良い事を思いついたと、晴れやかな顔になった。
「それでは正悟様も一緒に、女王様へのメッセージを送りましょう」
正悟は「えっ」と驚きはするものの、断る理由などない。
「じゃあ、一緒に書こうか」
「はい」
二人は時おり相談をまじえながら、それぞれのメッセージを書きあげる。
その後は、店自慢の薫り高い紅茶と他愛ないおしゃべりを楽しんだ。