リアクション
○ ○ ○ 「泣くな、泣くな! 大丈夫だから。ヒラニプラにつけば、そこから安全な場所に避難できるしな!」 緋桜 霞憐(ひざくら・かれん)は、ヒラニプラ行きの列車の中で、泣いている子供を励ましていた。 (本当は列車に頼らず、2人を抱えて避難してしまいたいくらいですが……) 空京に迫る脅威を知った緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)は、そんな思いを抱きながらも、人々を励まし、助けようとする霞憐を放ってはおけず、霞憐が護ろうとするもの、全部を守る覚悟を決めていく。 「瑠璃は霞憐を手伝ってあげて下さい、少しでも早く事を済ませれるようにですね」 「うん、頑張って手伝うの! いいこいいこなの!」 紫桜 瑠璃(しざくら・るり)は、泣いている子供を撫でてあげて。 お土産にと思って買ったキャンディの袋を開けて、子供達にわけてあげた。 泣き声が少し、減っていく。 「んー、何だか腑に落ちない」 避難するためにお土産を抱えて乗っていたノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)は、首を傾げて考え込む。 「要塞は陽動、だったりして?」 彼女がそんな事を言った途端。 隣にいた男性の時計のアラームが音を立てた。 ダダダダダダダダダ―― 突如、男はマシンガンを取り出して車内に乱射をした。 悲鳴を上げて、人々は伏せていく。 「……いった……っ」 マシンガンの弾は、ノーンの小さな体に深い傷を負わせていた。 「騒ぐな! 動いた奴、外と連絡を取ろうとした奴は撃ち殺す」 言い、男は傷ついたノーンを掴みあげて首に腕を回す。 彼女を人質にし、列車のドアに背を付けて、車内に銃口を向けていた。 マシンガン乱射はその車両だけではなく、全ての車両で行われていた。 運転室、車掌室にも何者かが押し入り、列車は空京島と本土を繋ぐ鉄橋でストップした。 ○ ○ ○ 「本土での最終防衛ラインで、ミサイルの迎撃に成功したようです。ですが、破片がこの辺りまで飛んでくる可能性があります」 無線機で連絡を受けた小夜子は、アレナと共に警戒に当たっている仲間達にそう伝えた後も、警戒し続ける。 「一般の皆さんは驚くかもしれませんが……撃てますか?」 小夜子がアレナに問う。 アレナはこくりと首を縦に振ると、星剣ヴィータの弦を引き、光の矢を放った。 上空で光はパッとはじけ飛び、要塞の方向へと飛んで行った。 「こちらの攻撃も、弾丸が街中に落ちたりしないよう注意を!」 ティリアが破片を狙う仲間達に注意を促す。 「はい」 返事をして、小夜子は対物ライフルを構えて、飛来する物を狙う。 「大きな破片を、空京に落とすわけにはいきません……!」 ミサイルか、イコンの破片かは分からないが、星剣の光をも潜り抜けた金属に、スナイプ、シャープシューターの技能を駆使して、狙いを定めて大魔弾『コキュートス』を放つ。 そして、破片を砂煙へと変える。 「最悪でも、皆が空京から避難する時間は稼がなきゃ……っ!」 空を飛んでいた葵も、空京まで飛んできた破片を、魔法や技能で押し返していた。 「落とさせないんだからっ!」 詩穂達も、飛行しながら真空波を叩き込んで、破片を打ち飛ばしている。 そんな彼女達に報告が入る。 『要塞の進行方向は依然、空京だ。しかし、中距離ミサイルの発射口は別の方向に向いている』 通信機から流れて来た言葉に、葵と詩穂は顔を合わせる。 『次の狙いは、どうやら……鉄橋だ』 空京島と本土を繋ぐ唯一の橋だ。 ――浮遊要塞アルカンシェル(前編) 終―― |
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