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【創世の絆】光へ続く点と線

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【創世の絆】光へ続く点と線

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懲りない人々

 ハデスがオリュンポスの戦闘員軍団――ドッグス・オブ・ウォー。時給780円・危険手当なし――で雇った傭兵団ならびに配下に声をかける。悪の帝王たるもの、最後尾の安全な位置から指示だけ出すものと相場は決っている。
「……けど戦いは……キロスさんと戦うのは……い、今はキロスさんよりも、任務が優先です……よね……」
動揺して腰が引けているアルテミス。一方のペルセポネはいつものようにハデスにとにかく忠実である。
「わかりました、ハデス先生! ハデス先生の護衛は、私に任せて下さいっ!
 機・晶・変・身ッ!! いかなる敵が来ようとも、この改造人間ペルセポネがハデス先生を守ってみせますッ!」」
ブレスレットによる変身でパワードスーツを装着したペルセポネはイナンナの加護をハデスにかけると、向かってくる機晶ロボをマグネティックフィールドによる攻撃でなぎ倒す。セリスは半ば強引に着させられている鎧を身にまとったやや投げやりな口調で口上を延べる。セリスはどう見てもクールな赤毛の美女だが、実際は男である。
「オリュンポスの大幹部の1人戦神将アレス参上……。つーかよ。ここ廊下の突き当たりではあるけども。
 ホントに最奥部って認識でいいのか?
 ……あとさ〜。仕事とはいえ……この鎧は、中で蒸れるんだよな……戦闘終わったら……脱いでもいいかな?」
「ダメだ。戦神アレスともあろうものが鎧ナシでは格好がつかんだろうっ!」
即座にハデスが却下する。
「は〜あ、しょうがねえなあもー」
だるそうな返事の割には歴戦の武術、古代の力・熾で華麗にかつ堅実にロボットを潰してゆくセリス。一方マイキーは恐るべき得体の知れないパワーを発揮し、自然界の秩序、法則を無視して相手の技や武器等の完全模倣する大技を使い、機晶ロボの攻撃を完全に再現していた。相手を揶揄するのが目的の為だけのものなので、相手を苛立たせウザイと思われる効果しかないのだが。機晶ロボも苛立ちを覚えることがあるのか、マイキーに集中攻撃を浴びせる。それを情報撹乱やミラージュで避けるだけのマイキー。
「ははは。ボクの華麗なステップをもっと見たいかい?」
うっとうしさもここ極まれりという感じだ。メンタルダメージとしては最大級の攻撃であろう。幾体かの機晶ロボの頭部から黒煙が上がった。朱鷺はこの異常事態に全く動じることもなく、八卦術を使いクールに敵に対応していた。オリュンポスの面々とは前々から縁がある彼女は、彼らのようなマヌk――おほん、高貴な方々がこんな危険な遺跡を探検すると聞き、大方また何か大きなトラブルに巻き込まれるに違いないと、護衛を買って出たのである。それなりに付き合いがあるため、自分は彼らの大真面目なボケには巻き込まれないつもりでいる、
(彼らのボケには付き合いませんよ……ボケ殺しのスルースキルを発動っ! ……覚えてませんが、たぶん大丈夫。
 ここは日頃の鍛錬の成果を試す場! それに万が一にも、面白いものも発見できるかもしれませんし……ね)

 時給780円の傭兵たち、ペルセポネ、朱鷺、それに我に返ったキロス、鉄心らの活躍により、機晶ロボの群れはスクラップの山と化した。朱鷺がパンパンと手をはたいて埃を落とすと言った。
「さてはて、果たして本当に何か見つかるのですかね?」
と、ハデスが瓦礫の山を跳び越し、部屋の奥へと突っ走る。
「おおっ、あそこにあるものはっ!」
見るからに重々しい厳重な鍵扉がドーンと部屋の突き当たりにあった。そのすぐ横手にも扉はあるが、こちらはセキュリティも何もかかっていない様子だ。ハデスはその扉はスルーして、厳重そうな扉に向き直った。ドア前には小さくスパークが飛んでいる。ハデスはまっすぐにドアの前に立った。
「フハハハハ。遺跡の秘密扉よ。今こそこの悪の大科学者ハデスが開こうではないか!」
「あ、不用意に触れてはダメですっ!」
ペルセポネの制止も遅く、ハデスは帯電した扉を思いっきり触る。
「だあああああああああああああ!!!!」
お約束の感電シーン。骨が透けて見えるアレである。
 トラップを満喫した後、ハデスは焦げ気味の白衣をかき寄せ、何事もなかったかのように機晶技術、先端テクノロジー。ニルヴァーナ知識、博識を駆使して扉の開け方を調べる。
「いかんな。これは普通の力ではあくものではない。アルテミスよ、出番だ!」
固唾をのんで見守る中に、キロスもいる。注目されアルテミスの意気は思いっきり高揚する。そう、今こそは勝負。キロスに好印象を与える絶好のチャンスである。

 そのころ、セドナ・アウレーリエ(せどな・あうれーりえ)に独自での探索を持ちかけられた瀬乃 和深(せの・かずみ)は。遺跡の中を彷徨っていた。セドナは切なパートナーである和深を守る為に、もっと強くなりたいという思いから、剣の花嫁である自分のパワーアップに関係するかもしれない光条世界に関する何かを探そうと考えたのである。更なる力を得れば、より安全に和深を守ることができるだろうから。和深も他の契約者よりも先に『凄いもの』を発見できれば自慢できると考え、セドナと共に遺跡探索を行うことを決めたのだった。戦いに長けたセドナが前衛、和深は彼女のフォローと遺跡内に仕掛けられたトラップを警戒する。HCで遺跡内の情報を取りいれながら慎重に進んでいた。
「そろそろ俺の本気だすところだよな」
「うむ、我の力とこの思い、全てはお前のためにある。有効に使えよ」
セドナが光条兵器、蛇腹剣『凶影』を構えて進む。巡回と思しき機晶ロボ数体と今までに行き逢ったが、『凶影』でのソードプレイで十分だった。
「強敵ならばヴィサルガ・プラナヴァハで底上げしたドラゴンアヴァターラ・ストライクで粉砕と思っておったのだが。
 そこまでのものはおらぬようだな」
セドナが不満げに言う。
「……万が一のために切り札ってのは取っとくものだぜ」
和深が言った。そしてその万が一は、まもなく実現した。隔壁のひとつを破壊した先の三叉路を過ぎたとき、彼らの後方から機晶ロボの一隊が追ってきたのである。
「まずは引き離せないか、走るぞ!」
「わかった」
セドナが和深に応え、二人はまっすぐな廊下を走り出した。だが一本道である。時々後方からビームが飛んでくるが、ほぼ威嚇に近いランダムシューティングであるため、容易にタイムコントロールで回避する。突き当りが扉、すぐ横にL字に通路が伸びている。
「しつこいな。撒けそうにない。よし、あそこで一気に仕留めよう」
その扉こそ、ハデスらの横にある扉だったのだが……。
「ん? なんかそのドアの向こう、騒がしくないか?」
朱鷺が厳重な扉の横にある問題の扉を指し示したが、ハデスは目の前の鍵付き扉のことしか見えていない様子だった。
「アルテミス、行け、行くのだ!」
「わかりました。この扉を斬ればいいんですねっ!」
キロスが見ているため、無意識に張り切るアルテミス。ヴィサルガ・プラナヴァハでウルフアヴァターラ・ソードの力を解放しブーストさせ、ヴァンダリズムを炸裂させる。その瞬間、横のドアの向こうでセドナ、和深ペアが機晶ロボめがけてヴィサルガ・プラナヴァハを発動し、ドア前に機晶ロボが固まった瞬間、そちらに向けてドラゴンアヴァターラ・ストライクを解き放った。

ズズズズーーーーーーーン

直感的に発動された鉄心とティーのセラフィックフォースが爆発で飛んでくるものを弾き飛ばし、彼らの後方にいたものは事なきを得た。吹っ飛ぶドア。崩れる鍵付き扉と床。
「きゃああああああああああああっ!」
「うああああああああ!!!」
アルテミス、キロスが崩落した床に吸い込まれ。その上から壊れた機晶ロボや土砂化した床や壁、ドアの破片が降り注ぐ。
 しばし後、床に開いた大穴の底に埃で真っ白になって転がるキロスとアルテミスが呆然と座り込んでいるのが見守っていたメンバーに見えた。なんとか穴から二人を救い上げ、奥の部屋に入る。
 そこは資料室だった。皆で手分けして部屋にあった資料を探ってみる。継ぎ合わせてみて判明した事実はここで作られていたインテグラル――シャクティ因子――の生成や扱いについては、古代ニルヴァーナの“偉大な者”が関わっていたということだった。それについてはこの資料室に一緒にあったなんということもない読み物、ニルヴァーナ創世神話にキーがあるという。マイキーが相変わらず踊りながら言う。
「これは……今世紀最大の発見だね!」
それをスルーして和深が言う。
「“偉大な者”とは何者なんだろうな。神話のデータも持ち帰って解析したら詳しいことがわかるかも」
現実的なペルセポネが呟いた。
「と、ところでハデス先生っ! インテグラルが接近してるらしいですけど、撤退はっ?!」
そのあと、マジメな契約者たちが、脱出行動のプランを立て、実行権を掌握したのは言うまでもない。