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地球に帰らせていただきますっ! ~2~

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地球に帰らせていただきますっ! ~2~
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リアクション

 
 
 
 美味しい料理を待ちながら
 
 
 
 東京駅に着くと、エレンディラ・ノイマン(えれんでぃら・のいまん)はきょろきょろと周囲を見渡した。
「エレン、どうしたの?」
 不思議そうに尋ねる秋月 葵(あきづき・あおい)に、エレンディラはいえ、と恥ずかしそうに首を振った。
「今回はSPさんたちは居ないのですね」
「SPさんたち?」
 聞き返したイレーヌ・クルセイド(いれーぬ・くるせいど)にエレンディラは答える。
「夏にここに来た時には、東京駅につくや否やSPさんたちに囲まれてびっくりしたんです。今回もそうなのかと思っていたんですけれど」
「今回はいないと思うよ。年末年始は使用人にお暇を与えてるから〜。ね?」
 葵に同意を求められ、イレーヌは頷いた。
「はい。年末年始はそれぞれの家族と過ごしたいだろうから、って毎年この時期は一斉にお休みをもらえるの。この期間は使用人がいないから、お屋敷に帰ったらきっと大忙しね」
 イレーヌは秋月家の使用人であり葵の幼馴染みだったから屋敷には詳しい。葵専属メイドだったイレーヌは、パラミタに行った葵が心配で心配でたまらずに、強化人間となってその後を追ってきたのだ。
「そうなんですか。……あら?」
 納得しかけたエレンディラだったけれど、その時前方からやってくる秋月 茜の姿が目に入った。
「お帰りなさい葵、相変わらず可愛いわね」
 茜は愛しくてたまらないように葵を抱きしめた。
「茜お姉さま! どうしてココに?」
「葵に早く会いたかったから、旦那をパラミタに残して先に帰省してきたの」
「ええっ、そんなことして良いの〜?」
「出来れば一緒に帰ってきたかったんだけど、色々忙しそうだったから、あの人は置いてきたの。ああ、でも元気にやってるから安心してね」
 最後の言葉はエレンディラ宛て。茜はエレンディラの兄と結婚し、日本とパラミタを行ったり来たりしているのだ。
「ありがとうございます」
 パラミタの情勢に変動が多い今、きっと忙しくしているのだろうとエレンディラは兄のことを思いやった。
「さあ、梓姉もお待ちかねだから、早く屋敷に戻るわよ」
 車で来ているから、と茜は葵の背を抱くようにして歩き出す。
「茜お姉さま、途中で寄って貰いたいところがあるんだけどいいかな?」
「寄りたいところ?」
「うん。途中で料理の材料買いたいんだよ。使用人居ないから外食ばっかりでしょ……お姉さまたち、料理しないし」
「葵が作ってくれるの? いい考えだね。いい加減ケータリングにも飽きてたところだし、梓姉も喜ぶよ」
「じゃあよろしくね〜」
 途中、必要な食材を購入すると、葵は懐かしい屋敷へと帰った。
 
 
 屋敷では姉の秋月 梓が葵の帰りを待ちわびていた。
「葵、お帰りなさい。元気そうね」
「梓お姉さま、苦しいよ〜」
 長身の姉にぎゅうぎゅう抱きしめられ、葵はもがく。グラビアモデル並みのプロポーションの姉に抱きしめられると、豊かな胸で窒息しそうだ。
 やっと梓の腕から脱出すると、葵は買ってきた食材を手にさっそく厨房へと向かった。
「できあがるまで、誰も入ってきちゃダメだよ〜」
 誰もいない厨房で、エレンディラが用意してくれたレシピ片手に葵は奮闘開始。
 その間にと、エレンディラは土産として持参したコレクションを葵の姉たちに見せた。
「梓義理姉さまに、パラミタでの葵ちゃんを見ていただこうと思いましてお持ちしました」
 それは、パラミタでの葵の写真やビデオだった。前回の帰省で少し寂しそうにしていた梓が気になって、パラミタで葵がどう過ごしているのかを見て貰おうと思ったのだ。
「あら可愛い。葵はどんな格好をしていても似合うわね」
「どれどれ? うまく撮れてるね。これはロイヤルガードの制服?」
 梓と茜は身を乗り出して葵の写真に見入った。
 エレンディラの持ってきた写真とビデオを見終わると、今度は梓が総帥部屋から秘蔵コレクションを出してくる。パラミタに行く前までの葵の写真の数々だ。
「この頃の葵は髪も短くて、男の子っぽかったのよね」
 赤ちゃんから子供へ、子供から少女へ。アルバムをめくるたび、成長してゆく葵の姿に梓は目を細める。
 この屋敷を離れてからも葵は成長し続けている。そしてこれからも皆に見守られながらのびのびと育ってゆくのだろう。
 ちょうど一通りコレクションを見終わった頃、エプロンをつけた葵がにこにこしながら部屋に入ってきた。
「お待たせ。出来たよ〜」
「葵の手料理が食べられるなんて、夢のようね」
 梓に言われ、葵は照れる。
「てへっ、ちょっと見た目が悪いけど味は確かだよ♪ 冷めないうちに早く食べよう〜」
 葵の誘いに、皆は大急ぎで食堂へと向かうのだった。