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●続々・大調査! 武神牙竜のおうちで家捜し! 目指せエッチ本押収!(完結編)

 くたくたになって帰宅した牙竜だったが、玄関をくぐった途端、疲れも忘れるような不吉な胸騒ぎを覚えた。
(「……なんだか悪い予感がするぞ」)
 その『悪い予感』は的中していた。
「おいそこは俺の部屋……ッ!」
 扉を開いた牙竜は、信じがたい光景を目にしたのである。畳は剥がされ引き出しもタンスも開け放たれ、発見された『押収物』が、綺麗に並べて整理されていた。そればかりではない、部屋の隅では美海が、半分以上裸にした沙幸にのしかかり、
「気持ちいいんでしょう? ね、気持ちいいのよね……いい加減認めなさい、沙幸さん……」
「き、気持ちいいんじゃないもん。くすぐったいだけ……あっ……」
 と、雌獣のように彼女を玩んでおり、反対側の隅ではラグナとアルマが武器を手に睨み合い、
「アルマちゃん、大きすぎるその胸、切り落としてあげましょうか」
「そっちこそ頭に穴開けて、四次元超人みたいにしてやろうか」
 と、一触即発の雰囲気を醸し出していた。床には佑也が昏倒し、雅はタンスに女性用下着を詰めていた。類は「メガネメガネ」とつぶやきながら、その辺を這いつくばって被害地域を拡大しており、それをいちいちグェンドリスが「違います。それは眼鏡じゃなくてブラジャーです」と指摘して回っていた。そしてリリィは目を怒らせ、「巨乳本……男ども……さぁ、煩悩を叩きのめしてくれるわ!」と、手にしたソレ系のエッチ本を引き裂いているではないか。まさしく地獄絵図だ……。
「ちょ……どっからツッコンだらいいのかもうわからんわ!」
 混乱の極みに頭をかきむしりつつ、牙竜は大声で叫んだのである。
「俺の部屋から出てけ! 出てってくれー!!」

 元の和室。
「えー、それでは仕切り直しということで」
 灯が事態を収拾し、ともかくも全員、元に戻った。
「まあ田中さんも新年早々みんなに表も裏も見られて良かったんじゃないかなー」
 氷雨はニコニコしているものの、牙竜は穴があったら入りたい心境だった。
「ところで……あの、なに見てるんですか」
 セルマは佑也の手元を見ないようにしながらそっと声をかけた。
「いや、違うからね? エッチな本じゃないからね。武神くんがお土産にくれた資料集だよ。マホロバの」
 言いながら佑也は慌てて手元の写真集を隠した。しかし、いくら言葉を尽くそうとも、『マホロバ遊郭密着24時。巨乳乱舞』というタイトルはごまかしようがないと思われた。
「全員揃ったので、ここでちょっと発表させていただいていいですか?」
 ここでリースが声を上げた。一同を見回し、注目が集まったのを確認しておもむろに口を開く。
「皆様に正式に報告してなかったですね……」
 紅潮しながらも嬉しそうにリースは告げたのだ。
「このたび、結婚する事になりました! 相手は、ご存じのように篠宮悠さんです。結婚式には絶対呼ぶから、みなさま来てくださいね!」
 おおっ、と歓声が上がり、それを盛大な拍手が包み込んだ。
 この慶事が、牙竜の恥ずかしい気持ちを吹き飛ばした。彼は破顔一笑し、祝杯がわりにコーラをぐっと飲み干した。
「道理で俺に仕事押しつけて定時で帰ったり、昼にニヤニヤしながら弁当食べてるわけだ。新年早々にめでたい報告だし、幸先いいな! リースおめでとう!」
「結婚おめでとう! 結婚式、絶対行くからね♪」
 沙幸も自分のことのように喜んだのだった。
 つかさの杯も進んだ。ちょっと暑くなってきましたね、と上着を脱いだ彼女のところに、音もなくリースが身を寄せて囁いた。
「あの、ちょっといいですか? 祥子お姉さまも聞いて下さい」
「あらリース様、おめでたい発表をしたばかりなのにどうしました。少しお悩み顔ですね?」
 つかさは小首をかしげ、呼ばれた祥子も、
「マリッジブルーじゃないわよね?」
 と顔を寄せた。
 ここじゃなんだから、ということで三人はそっと立ち上がって牙竜の部屋へと席を移した。

「実は……」
 牙竜のベッドに腰掛けて、リースは燃えるような赤い顔で告白したのである。
「結婚するに当たって夜のお世話って言うのがどうしてもわからなくて不安なのです……何をすればいいんでしょう?」
 ほほう、と祥子・つかさ両名は顔を見合わせた。
「新婚初夜が不安、か。今時珍しい純情……いや、良い意味でね?」
「ふふっ そういうことでしたら力になりますわ。ちょうどこの部屋には『教材』も沢山あるようですし」
 つかさは、積み上げられた秘め事の本を一冊取り上げた。
「さぁリース様じっくりと見ていてくださいませ、男女の営みを……」
 繰り返すが良い子の読者のために詳しくは書くまい。ただ、ご想像にお任せする。
「えっ……これってエロ本……ふぇぇ!」
 その内容は、リースには刺激の強すぎるものであった。膝を崩した祥子は、リースの反応を艶冶な表情で眺めていたのだが、アルコールを経た肌が、なんだか熱くなってきた。たまらず、濡れた瞳でつかさを見ると、
「座学はこれでいいとして実技は……つかさと私が絡んでやってみせますか」
 誘うような声色で告げた。冗談半分、とはいえ、相手がつかさだけに期待もしている。
 つかさは期待を裏切らなかった。
「よろしくてよ。私、祥子様のこと、前から憧れていたのですわ。髪がお綺麗で……肌も……」
 などと言いながらつかさは指で、祥子の髪に触れ頬を撫でた。
「なに言ってるの、つかさだって綺麗よ」
 祥子はつかさの手を両手で取ると、その人差し指を唇の間から口に含んだ。最初は軽く、指先を噛んだだけ。しかしすぐに間接まで舐め、唾液で濡らしくちゅくちゅと味わう。その音が高まる度に、祥子も、つかさも、蕩けるような目つきになっていった。
「わわっ! お二人とも何を始めるんですか!?」
 リースは慌てふためくが、二人は今、互いしか目に映っていない。
「女同士、遠慮は要りませんわよね?」
「もちろん」
 次の瞬間、つかさは祥子をベッドに組み敷いていた。そこから、二匹の猫のようにじゃれ合う。舌で相手の舌を求め、高めあいながら少しずつ薄着になっていった。やがて互いに一糸まとわぬ姿となり、互いの敏感な部分を擦りつけあい、交歓の音で空間を満たした。
「あぅ……何か変な気分になってきた……胸はドキドキするし、体が変な感じ」
 リースは恥ずかしさで逃げ出したくなりながらも、視線を動かせぬ自分に気づいた。
 そのとき、
「えっ? 私も混ざるの……?」
 つかさが手を伸ばしたのである。祥子も汗に濡れながら微笑んで、小さく頷いていた。
 リースは二人の手を取った。

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「しかし、よく寝てるな、愚弟よ。せっかくの新年会だというに……」
 机に突っ伏し夢の世界にいる牙竜を、真上から雅が見おろしていた。横に向けた牙竜の顔は、なにやら嬉しそうな表情だ。良い夢でも見ているのだろうか。
「雷術で起こして上げましょうか」
 リリィが物騒なことを言うも、灯は首を振った。
「マホロバでの仕事がよほどこたえたのでしょう」
 彼女が牙竜の肩に毛布を掛けると、三人はそっとその場を離れたのだった。
 あけましておめでとうございます。今年もみんなで楽しく、幸せになれますように。