葦原明倫館へ

空京大学

校長室

天御柱学院へ

空京センター街の夏祭り

リアクション公開中!

空京センター街の夏祭り

リアクション


【4】2021年、男尻神輿バトル開催!……3


 各神輿は第一チェックポイント、スクランブル交差点に突入。
 通行量の多さで何かと話題になる場所であるが、祭りともあれば通行量も更に倍率ドン!
 とんでもない数の老若男女がひしめき合い、ちょっとやそっとじゃ……特に神輿なんかは通れなさそうである。
『ちっ、通行人が多過ぎて、状況がよくわからねぇじゃねぇか、コラァ』
『そのようですねー……、仕方がありません。ここは中継の姫宮さんにお任せしましょう。姫宮さーん』
「おう! こっから先は任せてくれ!」
 バンカラスタイルの姫宮 和希(ひめみや・かずき)は中継カメラにピースサイン。
 すると、交差点の大型ビジョンにヘッドセットを付けた彼女の姿がパッと映し出された。
「さぁ、こっからはワンちゃんに代わり、俺たちの心の師匠、アヒル園長に解説をして頂くぞ」
「グワァ!」
 イヤホンから聞こえる「なんで俺様の代わりが鳥なんだ!」と言う批判は華麗にスルー。
「そろそろ、暫定1位のチームが来る頃なんだが……おーーーーーっと! 蒼学の暴走特急ヒーロードッグだっ!
 さぁどうする、ヒーロードッグ。ここの通行量はアホだぞ。ほんとにアホみたいに多いぞ。
 ……と、ヒーロードッグなんと普通に人波に突っ込んだ……がしかし、無事だ!
 少数の小回りを活かし隙間を抜けることに成功だーーーっ!
 同じく少数のタシガン馬術部もし隙間をくぐってなんなく第一チェックポイント通過っ!!
 そして、極悪同盟流れ☆首!
 流石に全身から殺すぞオーラを出してる連中にゃ誰も近付きたくない、どんどん道が空いて行くぞーーっ!」
「グァ!」
「師匠も『モーゼもびっくりダネ!』つってる!」
 しかし、ここでおっぱいイズジャスティスが突如立ち往生。
「おおーーーっと! 何がどうなってるんでしょうかーっ!? おっぱいが止まってしまったぞーっ!!」
 和希は原因究明のため人波をかき分けて突撃する。
 すると、彼らを囲んで写メをとりまくってる通行人の壁にブチあたった。
「どうやら、おっぱいが仇になったようだぞ、おっぱいイズジャスティス。そりゃぷるんぷるんしてたら写メられるわ」
「グワワ!」
「最近の携帯は動画もいけるしな……って何の話すか、師匠……とか言ってたら、残りの3チームも来たーっ!」
 冒険屋のノア・セイブレム(のあ・せいぶれむ)は先んじてことを起こす。
「さっきのお返しをさせてもらいますよーっ!」
 何を隠そう彼女も秋葉原四十八星華のメンバー、しかも事前にネットでゲリラライブの告知はしておいた。
 神輿から離れライバルの進路上に立つとライブ開始。あっという間にファンで交差点は埋め尽くされた。
「皆、私の歌を聴けーッ!!」
「まーた、それー? ちょっともういい加減にして欲しいんだけどー」
 かよわい乙女のルカルカ・ルー(るかるか・るー)は頬を膨らませる。
「なに、ここは俺に任せてもらおう」
 ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)はそう言うと、前方目がけてラスタートレインを発車。
 詰まっていた肉の壁……もといファン達はボウリングのピンのように吹き飛んだ。
 と言うか、列車状の光条兵器って何!?
「よし、隙間が出来たよ。フォーメーション変更して突破しよう、水神さん!」
「了解です」
 前方を夏侯 淵(かこう・えん)、後方を水神 樹(みなかみ・いつき)が護る1−6−1の陣形。
 ここから1−3−3−1のフォーメーションに変更。まずルカルカと樹が先行し、ピクピク言ってるファン達を越える。
 そして後ろに残る竜人カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)がドラゴンアーツ。
「ぬおおおおおおおおーっ!!」
 他のメンバーと協力し、持ち上げた神輿を前方に放り投げる。
「ルカルカさん、来ますよ。もうちょっと左……あいや、右に行ってください」
「右ね。オーライオーライ……て、きゃあああああ!」
 突然、神輿は地面に引っ張られ、どぐすんと嫌な音を立てて叩き付けられた。
 慌てて駆け寄る樹。神輿が破壊されても失格……と言うことで入念に状態を確認する、大丈夫、無事のようだ。
「強化装甲で補強して正解でしたね。さ、早く態勢を立て直しましょう」
「う、うん……。でも、どうして急に落っこちちゃったんだろう?」
「どうも犯人は梨ガリくんみたいだぞ」
 ディテクトエビルで警戒していたカノン・コート(かのん・こーと)はポツリと言った。
 神輿が宙を舞ったあの瞬間、悪意が自分たちを包み込むのをハッキリと感じたのだ。
「たぶんサイコキネシスだ。こっそり邪魔してくるなんて、意地の悪いヤツもいるもんだな……」
 その直感は正しかった。
 妨害を仕掛けたのは、梨ガリくんのメガネ成分こと如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)
 かよわい乙女が立て直しに時間をとられてる隙に、別働隊のラグナ アイン(らぐな・あいん)を探す。
 すると、行き交う人の波間に、誘導灯を振って合図を返す彼女を見つけた。
「そこか、ラグナ!」
「こっちです。左右の通行を止めてますから、今のうちに通ってください」
 実は彼女、この日の為に交通整理として運営に潜り込んだのだ。
 なんでもアリなルールなら、ここまでしてこそ勝利に近づける。整理員なら通行操作もお茶の子さいさいだ。
 仲間の通れるだけの隙間を空けて誘導するが……しかし易々と見逃すほど乙女らは甘くない。
 突如、鼻先に落下してきた車が行く手を阻む。
「ぐ……っ!?」
「さっきはどうも。樹の優勝を邪魔するなら、ちょっとここで大人しくしててもらおうか?」
 樹の双子弟にして姉至上主義者の水神 誠(みなかみ・まこと)が迫る。
「悪いけどこっちも優勝を目指してるだ。そのお願いは聞けないな……!」
「なら仕方がないね……!」
 誠は車の残骸をサイコキネシスで手裏剣のように飛ばす。
 しかし祐也も負けじと氷像のフラワシを発現。飛び交う車の残骸を凍結と共に粉砕し、次々に叩き潰して行く。
「おー、なんだか盛り上がってきたわねー!」
 ガチバトルな2人を前に、祐也の相棒、アルマ・アレフ(あるま・あれふ)は不敵に笑う。
 上半身は胸に晒だけ巻いて、ボトムはニッカボッカと言ったお祭り装束。なんとも色っぽいアルマである。
 同じく色気を振りまく玉藻 前(たまもの・まえ)と並び、戦闘態勢。
「よしっ、あたし達もおいしいところとられない内に加勢するわよ!」
「よかろう……花火代わりだ、我が一尾より煉獄がいずる!」
 玉藻の放つ業火が一帯を薙ぎ払う。飛来する金属部品は融解し、誠は炎を避けるように後退。
 それに合わせ、アルマは奈落の鉄鎖でマンホールの蓋を外し落とし穴を作る。
 進路を阻害され、かよわい乙女の神輿はフラフラと彷徨う。
「上出来ね」
「ああ、さぁ今のうちに順位を繰り上げるとしよう」
「ふふ……、ウフフフフフ……!」
 ふと、聞こえる不穏な笑い声。
「ねぇ、なんだか凄い殺気を感じるような気がするんだけど……」
「奇遇だな。我もだ……」
「あらあらあら皆さん見せつけてくれちゃって……そんなに大きい胸を自慢したいのかしらぁ?」
 血走った眼を向けるのはライバルではなく……味方のラグナ・オーランド(らぐな・おーらんど)だ。
 どうも2人のまぶし過ぎる晒姿が、ラグナさんのコンプレックスをビシバシ刺激してしまったようである。
 しかしゴメンナサイするのも意味不明だし、それはそれでキレられそうだ。
 仕方なく2人は何も聞かなかったことにして神輿に戻った。
 だが……。
「あらあら、無視するんですねぇ。そういうことなら、いいでしょう。あとで刈り取って差し上げますわ……!」
 ラグナさんの前に正解はなかったようである。
 玉藻は目を合わせないようにして、アルマに耳打ちする。
「……いつもああなのか?」
「時々……」
 梨ガリくんもスクランブル交差点を離脱、やや遅れてかよわい乙女も通過していった。
 ここでまたしても出遅れてしまったのが冒険屋である。
 攻めの姿勢を見せていたのは好感が持てるが、交差点の人ごみ対策をとっていなかったのが大きく響いた。
「ええと……冒険屋はまだ人ごみを抜けられないっぽい。すげぇゆっくり進んでるけど大丈夫かよ、あれ?」
 和希はポリポリと鼻先を掻きながら実況。
「やっぱし大人数だと神輿もデカくなるし、小回りが利かないのは致命的だよなー」
「グワグワッ!」
「え、冒険屋よりさっきのセクシーコンビのことが知りたいって?」
 師匠の言葉にふっふっふっと笑う。
「そんなこともあろうかと、俺が隠し撮りしたあの2人が晒に着替えるとこの映像がここにっ!」
「グワーッ! エローッ!!」
「さぁセンター街のおまえら、交差点の大画面で堪能するがいいっ!!」
 しかし一瞬だけ映ったと思えば、すぐヴァイシャリー湖を行くナイスな船の映像になってしまった。
『公共の電波に流してはならない映像が流れかけたことを深くお詫びします』
 清らかな音楽と共にJJが謝罪。
 そんな小馬鹿なやりとりを眺めつつ、レン・オズワルド(れん・おずわるど)は険しい表情で言う。
「このエリアも最後尾となると今後が厳しくなるな……。メティス、この先のコースはどうなっている?」
「ここを抜けると第2チェックポイントまでは直線コースとなります。ここで離されたら優勝は厳しいと思います」
 根回しで手に入れた地図を見ながら、メティス・ボルト(めてぃす・ぼると)は言う。
「さて、どうするか……?」
「ここは我慢の時だと思います。牛歩をよぎなくされている今、次のエリアへの準備を行うべきかと」
 そう言って、ドリンクや塩飴、着替えの法被をメンバーに回す。
「直線での勝負に備え体力を全快にしておくと言うわけか。しかし、差が広がってしまうと元も子もないぞ?」
「その辺りは心配ないぞ、レン」
 帝王ウインクをしながら、ヴァルは言った。
「既にザミエルを配置に付けておいた。アイツならしばらく足止めしてくれるだろう」


 【このエリアでの中間順位】
 【1】ヒーロードッグ
 【2】タシガン馬術部
 【3】流れ☆首
 【4】おっぱいイズジャスティス
 【5】かよわい乙女
 【6】梨ガリくん
 【7】冒険屋