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四季の彩り・雪消月~せいんとばれんたいん~

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四季の彩り・雪消月~せいんとばれんたいん~
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リアクション

 第21章 チョコレートファウンテンの艶宴(おとなむけ)

「ひなから誘ってくるなんて珍しいわね。暫く顔出してこなかったし、色々言ってやるんだから」
 パーティーがあるという空京の高級ホテルに到着し、横山 ミツエ(よこやま・みつえ)は空高く聳えるその建物を見上げた。笑顔ではなくどちらかといえば膨れ面で、挑むようにホテルの中に入っていく。
 待ち合わせの場所には、桐生 ひな(きりゅう・ひな)ともう1人、久世 沙幸(くぜ・さゆき)の姿があった。このパーティーは元々沙幸がひなを誘い、更にひながミツエを誘ったものだ。広告には『友達同士でも歓迎』と書いてあったし。
(……友達が一緒なのね。今日は、友達として呼んでくれたのかしら)
 広告をちゃんと見ていないミツエだったが、沙幸を見てそんな事を思った。
「あっ、ミツエさんが来たよ!」
「ミツエ、久し振りですー」
「きゃっ!?」
 気負っていた力を少し抜いて近付くと、ひなはいきなり抱きついてきた。すりすりすり、と頬擦りしてくる。あったかい。
「な、なにするのよ!」
 驚いて身体を離すと、ひなはにぱっと笑ってミツエを歓迎した。
「会えて嬉しいですよー。さあ、パーティーに行くのですー」
「…………もう、仕方ないわね……」
 くるりと背を向けて楽しそうに歩き出す。その毒気の無い笑顔に中てられ、ミツエは結局何を言うでもなくついていく。笑顔に負けたようで、何か、悔しい気がした。

 ひなは、意気揚々と沙幸とミツエを引き連れていく。
「催し物には目が無い私が、こんなお得なパーティを見逃す訳がないのですっ。思う存分堪能していくのですー。安かろうが怪しかろうが、どんなパーティでも楽しめれば無問題なのです〜」
「あれ!ひな、あの主催者の人、どこかで見たような筋肉なんだけど……」
「!!? な、何!? あの謎のむっきむきの物体は!? 女装してるわよ!?」
「どう見てもむきプリ君ですねー」
「ええっ!? 知り合い!?」
 女装むきプリ君を見て、ミツエは仰天した。そのむきプリ君と既知の仲らしいひな達に2重に驚く。女装をしていなかったらそこまで気持ち悪くはなかったが、女装しているが為に気持ち悪さは天井知らずだ。
「会費も払わなきゃいけないし、ちょっと挨拶してくるね!」
「ミツエはそこで待ってるですよー」
 沙幸とひなは、何の抵抗も躊躇も無く女装筋肉男に近付いていった。

 パーティーに来た客の大多数は、むきプリ君を集団無視することに決めたようだ。挨拶してきた女子からチョコを貰い、更にホレグスリを飲ませてうっはうはという完璧な計画だったはずなのに、ハーレムにならないのはどういうわけだ。
(なぜ、なぜ俺にチョコを持ってこない……! 義理チョコも礼チョコも都市伝説なのか……!? それとも、俺の女装が神々しすぎて誰も近づけないのか……!?)
 主催者に対してこうも不自然極まりない現象が続けば、透明人間になってしまったか神オーラを放っているかぐらいしか理由が思いつかない。
「そうよ! アタシは神だったのね!」
「な、なに言ってるの? むきプリ君」
「まあ! チョコレート!?」
 女子の声にむきプリ君は反射的に反応した。おかげで、会話が全然噛みあっていない。
「チョコもありますよー? 今日は面白い格好してますね、むきプリ君ー」
「お、お前達!」
 沙幸とひなを見て、むきプリ君は口調を戻した。この2人をホレグスリの玄人であり敵わないと認めている彼は、ホレグスリの瓶を飲ませようとはしない。
「さすがお前達だな……! 俺のこの美しきかな変身を見抜くとは!」
「いくら女装したって一目瞭然、バレバレだもん。ということで、むきプリ君?」
 沙幸は的確にツッコみを入れると、これはチャンスとばかりに彼に接近した。ホレグスリさえあれば、きっと誰とでもすぐに仲良くなれる。
「な、何だ?」
 超近距離にいる女子に、むきプリ君は興奮した。
「アレが何本か欲しいんだけど……もちろん持ってきてるんでしょ、ホレグスリ?」
「ほ、ホレグスリか?」
「チョコをプレゼントする代わりにくださいですよー。最低でも6本ですねー。出来れば2、30本程度欲しいですがっ」
「おお! 2、30本くらいなら軽くあるぞ!」
 ひなからお土産のチョコを貰うと、むきプリ君は上機嫌でホレグスリを持ってきた。
「ありがとうございますー。そんなにチョコが欲しかったら言ってくれればあげますよ〜?」
「バレンタインに貰うチョコに価値があるのだ! 故に、これこそが至高のチョコ!」
 むきプリ君は喜び勇んでひなのチョコを食べ始めた。3個+云百個目。これで、しばらくは色んな意味で大丈夫そうだ。

「じゃあ、さっき主催者さんからもらったこのドリンクの乾杯からはじめようか。アルコールじゃないから大丈夫だよ」
 戻ってきた沙幸とひな達は、ピンクの小瓶を何やら一杯持っていた。その内の1本を渡され、ミツエは眉を顰める。
「何? この液体。ジュースのようには見えないけど」
「食べる前に飲む、胃腸薬的なモノですよ〜」
「おいしいものをたくさん食べられるようにする胃薬みたいなものだもん」
「胃薬……?」
「蕩けた気分になるので、実際食事も進むと思うのですっ」
「そうなの? でも、蕩けた気分って……?」
 その言葉のチョイスに、ミツエは違和感を完全には拭えなかった。だが、答えが出る前に沙幸は小瓶を掲げて明るく言った。
「はい、それじゃあ、かんぱーい!」
「か、かんぱい……?」
 それぞれ軽く乾杯して、沙幸とひなは躊躇無く中身を飲み干す。ひな達は飲み慣れているみたいだし、遠慮するのも失礼かとミツエはそう思い直した。2人と一緒に、ホレグスリを飲む。
「……?」
 途端に身体が火照ってきて、なんだか頭がふわふわする。
(風邪でもひいたのかしら。でも気持ちが良いわ、空に舞い上がるってやつ? それに、ひな達が何か魅力的に……)
 ――さゆゆ、手伝って下さいー。
 ――うん、もちろんわかってるよ。
 薬の効果が出てきたのを見て取って、ひなは沙幸に目配せする。それを受けた沙幸の行動は早かった。ミツエの後ろに周り羽交い絞めにして、耳元で小さく囁く。
「……身体がぽーっとしてきたでしょ?」
「ええ……。あたし、どうしたのかしら……どんどん熱くなってくるし……」
 ――さぁ、いっきにやっちゃって大丈夫だよ。ひな?
 ――りょーかいですよー。
 ひなは2本目のホレグスリを口に含むと、判断力が低下しまくっているミツエに唇を寄せる。
「ひな、ちょっと顔近すぎ……んんっ」
 口に流れ込んでくるホレグスリ。抗おうとしたのは最初だけ。どきどきしてきて止まらなくなって、ミツエは積極的に、ひなの香りのする薬を飲み込んだ。
「がっつりギア上げていきますよー、遠慮無く飲ませてあげますね〜」
「……ああっ! ひなも沙幸も大好きよっ!! 今日は無礼講でなんでもするわよっ!」
「えへへ、スイッチがはいりましたね〜」
 チョコレートだらけの世界で、沙幸とひな、ミツエはお互いを思い切り触りあう。
 密着しながら冷え冷えのポッキーグラスを倒してお互いに加え、キス前提のポッキーゲーム。人目も憚らず、そうやって手で、口で、そして身体で……
 とろとろに、跡形もなくとろけてしまうくらいに、瓶の中身を飲ませあってかけあって。
「……もう、なにもかんがえられないわ……」
 きもちよすぎておもうがままに。脳の指示するままにやりたいことだけに身を任せる。いつの間にか、3人は服を脱ぎ捨て肌と肌を合わせあっていた。
「もうがまんできないよっ!」
 そのまま、脚や手を絡ませながら彼女達はチョコレートファウンテンの中にダイブした。フルーツをチョコにつけていた客が驚いて悲鳴を上げる。
「いっしょにちょここーてぃんぐされながら、むさぼりあいまくりましょー」
 3人はそうして、全身をちょこまみれにしていった。