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雪花滾々。

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雪花滾々。
雪花滾々。 雪花滾々。

リアクション



17


「コンきちと遊ぶのだ!」
 と、ハンニバル・バルカ(はんにばる・ばるか)がさも当然のように言い放った。このところ、休みの日になるといつもこうである。
「いやね、ハンニバルさん? お兄さんの家とキツネ君の家と、どれくらい距離があると? それにね、キツネ君にも都合があるんですよ? 第一ハンニバルさんやお兄さんが休みだからといって勤労青年であるキツネ君が休みとも限らへぶっ!」
 クド・ストレイフ(くど・すとれいふ)がなんとか諭そうと色々と言ってみたところ、いきなり鼻っ面を殴られた。身構える暇さえなかった。
「正論で何も言い返せないから殴ったのだ!」
 膝が抜けて床に座り込んだクドを見下して、ハンニバルは言い捨てた。
 ひどいっ、と泣き真似をしている間に首根っこを掴まれて強制的に外出。
 クドを引きずりながら、ハンニバルが紺侍の携帯に電話をかける。
「あ。コンきちか? ボクだ。今から遊びに行くからな! 待ってるのだぞ! いいな!」
 お互い振り回されますねぇ、と内心でホロリ。


 蒼空学園、学生寮。
「遊びに来たぞコンきち! 遊びに行くぞコンきち!」
 紺侍の部屋のドアを連打し、ハンニバルは声を上げる。「ハイハイ」と苦笑いを浮かべつつ紺侍がドアから出てきた。コートを羽織って、すぐにでも出かけられそうな格好になっている。
「クド公はおまけな!」
「相変わらずの扱いスね」
「行く場所は任せるのだ」
「えっと。オレ、今日は養護施設へ行こうかと思ってまして」
 それでも構いませんか? と紺侍が問いかけてきたので、ハンニバルは得意げに胸を張った。
「うむ、それくらい予想済みだったのだ。だから僕らのアルパカも連れてきたのだ!」
 ばばん、とアルパカを披露する。みんなの夢と希望が詰まったこのアルパカは、通常のアルパカよりも一回り大きく、人間なら二人まで乗せることができる偉い子なのだ。
「おー……これはチビたちに大人気になりそうな予感スね」
「だろう?」
「ってェか、ハンニバルさん。つまり、子供たちと遊ぶのを手伝ってくれると?」
「うむ。コンきちと遊ぶついでにチビっことも遊ぶのだ。ボクは大人だからな!」
 ほんじゃ行きましょうか、と仲良く手を繋いで、養護施設のあるヴァイシャリーまでいざ行かん。


 ハンニバルがやたらと紺侍と遊びたがり。
 紺侍は養護施設へよく出向き。
 必然、クドも一緒に行くことになり、つまり、もうこの養護施設――ソレイユに顔を出すようになっていて。
「あーっクドだー!」
「ほんとだクドだー!」
「コルネ、いくぞ! クドのアキレス腱をチョップしてやれ!」
「わかった!」
 ワルガキコンビことコルネとキルシェから、挨拶代わりにアキレス腱をビシバシやられるくらいの仲良しになっていた。
「イタっ、ちょっと二人ともイタッ、あのどうせなら女の子にやられたイタタタタ」
「キルシェー! こいつノーチェやココ狙ってるよ!」
「ルルに報告だ!」
「ルルー! クドがヘンタイだー! どうしよう!?」
「もっとビシビシしてあげなよ」
「「イエッサー!!」」
 本来なら二人のストッパーであるルルススが煽ったことにより、ビシバシ攻撃は苛烈なものとなった。
「あのっちょっ、地味に痛いっていうか普通に痛いっごめんなさい嘘ですいや女の子は好きですけど嘘じゃないけどあだだだだだだっ!」
 ……なんだろう、ごく普通に子供たちと接していたはずなのに、いつの間にか子供たちからはこの対応。
 ハンニバルがいつも過激な攻撃をしてくるから、それを見て覚えたのだろうか。子供たちには一切の容赦がない。
 だがしかしそれがいい。
 ――だってお兄さん変態だもん!
「……そうですお兄さんは変態です」
「お」
「クドがへんなスイッチはいった!」
「ですから脱いでいいですよね! 答えは聞いてません! キャストオフ!」
 んばっ、と服を脱ぎ捨てる。いつも通りのパンツ一丁、際どい限り。
 しかし今が何月なのか思い出して欲しい。
 二月である。
 その上昨日は雪が降った。外気は冷たい。
「ぶえっくしょん!!」
「ぎゃははは! クド、ばかだー!」
「パンツもとっちゃえ!」
「あっちょっやめてっ! そんなにしたらお兄さん感じちゃうからやめてっ!!」


 一方その頃、ハンニバルと紺侍は。
 室内で、双子の女の子と一緒にアルパカと戯れていた。
「ぱかー」
「ふわふわー」
 双子――ノーチェとココは、存分にアルパカをもふもふして遊んでいる。
「ふふふ。こやつらもアルパカの魅力に堕ちたな……ふっさふさな毛並みにひれ伏しているのだ」
「うわァ、ハンニバルさんたら超イイ笑顔。小悪魔通り越して魔王みてェ」
「そしてボクもモフる。……うむ、やわらかー。柔軟剤使ってるのだ?」
「のだー」
「のだー」
 幼女と共にアルパカをモフっていたところ、ふと目に付いた窓の外。
「……あの変態め」
 パンツ一枚で子供たちとはしゃぐクドを見つけた。
「ノーチェ。ココ」
「う?」
「なにー」
「あのほぼ全裸マンに雪投げるのだ。雪合戦なのだ」
 窓を開け、窓から届くところにあった雪を丸めて固めて双子に渡す。もちろん、自分の分も用意して。
 一斉掃射。
 ずばばばば、と勢いよく雪玉を投げ続けると、クドの姿は雪に埋もれて見えなくなった。
「こうして今日もクド公は『こんな大人にはなってはいけませんよ』的な反面教師として活躍したのであった。第三部完!」
「ハンニバルさん、それ負けフラグっスよ」
「コンきち先生の次回作にご期待下さいなのだ」
「だが断る」
「コンきちの顔に陰影が! なんだそれどうやってるのだ!? ボクにも教えろなのだ!!」
 と、いう具合で。
 養護施設は今日も平和である。


*...***...*


 積もるだろうなと予測した雪は、案の定世界を銀色に変えていた。
 下宿先のパン屋の軒先の雪かきをあらかた終えたところで、瀬島 壮太(せじま・そうた)はふと養護施設『ソレイユ』のことを思い出す。
 ――雪かき、できてねえんだろうな。
 ソレイユに大人はマリアンただ一人。が、子供は五人居る。
 子供の面倒を見ながら雪かきなんて、できないだろうし。
 けど、やらないと困るだろうし。
「ミミ、出かけるぞ」
 パートナーのミミ・マリー(みみ・まりー)に声をかけて、手伝いに行くことにした。


 ソレイユに着き、壮太が雪かきのために外に出ている間。
 ミミは、マリアンに指示を仰いで手伝いをしていた。
「キツネとかが遊びに来たりしてくれたんだけどよ。それでも雪の日って勝手違うし。結局チビどもから目ぇ離せなくてさ。したらやること何もできてねーとかいうこの現状ですよ」
 それに俺は基本的に要領が悪いんだ、とぼやくマリアンの隣で、窓を拭いたりと掃除に精を出す。
「大変なんですね」
「そりゃーもう」
「でも楽しそう」
 言葉遣いは乱暴だけど、声がどことなく柔らかくて優しい気がして。
 マリアンが、手を止めてミミを見た。笑った気がした。
 嫌じゃない類の沈黙が流れ、掃除も一段落したあたりで時計を見る。
 それなりに時間が経過していた。雪かきの方も、区切りのいいところまで進んでいるだろう。外で遊んでいた子供たちも、遊び疲れて戻ってくるかもしれない。
「お茶淹れましょうか。僕やりますよ」
「場所がわからないことには淹れられませんことよ。ついといで。あ、あと敬語使わなくていーぞ。適当で」
「はーい」
 キッチンに立って、湯を沸かし。
 お疲れ様、ということで。先に二人だけ、お茶を飲む。
「マジ助かりました。ありがとな」
「ううん、僕にできることをやらせてもらっただけだから」
「良い子だなーおまえ」
 感心したように頷かれ、照れくさくなってはにかんだ。
 また、少しの沈黙が落ちる。ミミは、手首につけたブレスレットに視線をやった。バレンタインに、大切な人から贈ってもらった大事な大事なプレゼント。相手の顔が浮かんできて、頬がゆるむ。
「マリアンさん」
「あ?」
「壮太に聞いたんだけど、マリアンさんも大切な人がいるんだよね」
「おー。いますけど」
「名前とか、どうやって知り合ったのかとか。聞きたいなー」
「マセガキ」
「そんなじゃないもん」
「まあいーですけど。……出会いねぇ」
 頬杖をつき、マリアンが黙る。思い出しているのだろうか。わくわくしながら答えを待つ。
「彼女な。ユチドラっつーんだけど。彼女んちがここの子供を一人引き取りたいっつって来たのが出会い。だったかな」
「ユチドラさん、かぁ。写真とかないの?」
「ねーなぁ。自分のこと撮られんの嫌いなんですって」
「残念。ね、じゃあどんな人?」
「超美人で超ドSの頑張り屋さん」
 彼女を評したときのマリアンは、先ほどより優しそうに見えたので。
 ああ、本当に好きなんだな、とミミは思った。
 答えを聞けて、きゃー、と少しテンションが上がってしまい、
「けど、そこまで頑張らなくていいんですけどね」
 と、マリアンが呟いたのには気付けなかった。


 時間は少し巻き戻り。
 施設前の除雪をしている壮太はというと。
「そーたぁ! 動きがにぶくなってるぞ!」
「なってるぞ!」
「うるせえチビ二人乗せて機敏な動きができるか!」
 ソレイユのワルガキ二人――コルネとキルシェを背中に乗せて奮闘していた。
 少し離れたところでは、施設の最年長であるルルが、最年少の双子・ノーチェとココを相手に雪だるまを作っている。時折、そちらの三人組から雪球が投げられてくるのであしらったりもしつつ、スコップでざくざくと。
 玄関先は終わったし、あとは施設・道路間の除雪が少し残るだけ。
 もうひと頑張り、とチビ二人を背中から下ろしたところで、
「手伝えることあります?」
 紺侍に声をかけられた。施設から出てくるところだった。
「おまえいたの」
「午前中チビと遊びまくりまして。休憩してたらうとうとと」
「ふーん。じゃ、おまえちょっとチビ部屋に戻してきて。結構冷えちまってるから」
「うィす」
 てきぱきと指示して距離を置いたのは、なんとなく思い出してしまったことがあったから。
 黙々と手を動かす中、思考もぐるぐる、休みなく動く。
 好きな相手が他の誰かのものだなんて。
 それでもこうして、相手のところに通い続けるだなんて。
 辛いを通り越して拷問ではないか。
「大したどMだな」
 ぼそりと呟くと、戻ってきた紺侍が「へ?」と壮太を見た。聞こえていたらしい。
「いやおまえが」
「オレ別にMじゃないスけど」
「Mは大抵そう言うんだよ」
 言いがかりっスよ、とか抗議する声が聞こえたけれど、無視した。それにしてもドMがドMを好きになるとはどれだけ救いがないのだろうか。あるいは、どこかで共感できる部分でもあったのか。生憎壮太はドMではないので、わからない。
 いろんなことがわからないので、
「おまえってマリアン先輩の傍にいて辛くねえの」
 そのうちのひとつを訊いてみた。
 なんてことのない調子で。世間話の延長線上で。
 でも、突然こんなことを訊かれた相手は、どう思うだろうか。
 ――おまえの秘密を、知ってるぞ。
 とでも感じてくれれば僥倖だ。
 それで、少しでも弱みを見せてくれれば。
 ――話くらい、聞いてやんのに。
 が、紺侍はへらりと笑い、
「辛くないスよ」
 やはりいつもと同じ調子で、言う。
 用意されていた答えのようだ、と感じたのは、壮太自身の主観が入っているせいだろうか。
「おまえ、それ、本当?」
「はィな」
 ああ、またかわすような笑み。
 こうして彼は、本音を隠したがる。はぐらかしたがる。
 本当に辛いときに、誰も気付いてあげられないのではないかと、壮太は心配になる。
「なんかしんどいことがあったら、信頼できる奴にちゃんと話せよ」
 声に出して伝えてみても、紺侍はやはり、笑った。笑って、「はい」と頷く。
「……なんでおまえ、笑うの?」
「え」
「ちぐはぐなんだよ」
「…………」
「おまえのそういうところがムカつく」
 そっぽを向いて、いつの間にか止めてしまった手を動かして。
 以降、会話はなかった。
 ざく、ざく、と、雪をかく音だけが、響く。


*...***...*


 紺侍が、養護施設『ソレイユ』に頻繁行く関係で。
 柚木 貴瀬(ゆのき・たかせ)もよく顔を出すようになっていた。
「いくね、みんなといっしょに、ゆきうさぎさんと、ゆきだるまさんと、かまくらさんつくるのー」
 また、貴瀬に連れられて柚木 郁(ゆのき・いく)も行くようになって。
 雪が積もったから遊びに行きたいとねだるくらい、ソレイユの子供たちと親しくなっていた。
「外は寒いぞ。暖かい格好をしないとな」
 と、郁の首にマフラーを巻きながら柚木 瀬伊(ゆのき・せい)が言う。
「今日は本当、寒いもんね」
 頷く貴瀬に、
「というか、寒かった」
 なんて、瀬伊が言うものだから。
「もう外に出たの?」
「……つい、な。俺は雪に慣れていないから」
「はしゃいだんだ」
「うるさい」
 なんとなく、いつもよりそわそわしているなと思っていたら、そういうことか。
「瀬戸内って雪が降らないもんね」
「しつこいぞ」
「あはは。ところでそれ、瀬伊のお手製?」
 話題を変えるために、テーブルを指差す。テーブルの上には、風呂敷に包まれたなにかがあった。
「ああ。向こうで場所を借りて作る」
「何作るの?」
「甘酒と汁粉」
「そっか。それは出来立ての方がいいもんね」
「したく、できたよー」
 郁の声に、振り返る。手袋、帽子、マフラーで完全防寒の郁が笑っていた。
「似合ってるよ」
「えへへー。あったかいのー」
「そうか」
 それらを作った瀬伊が、優しく笑って郁の頭を撫でる。
「よく思うんだけど」
「何だ」
「瀬伊って、郁のこと大好きだよね」
「今更だな」
「で、俺の防寒具はないの?」
「何とかは風邪を引かないというが、本当かな?」
 なにやら酷いことを言われた気がする。
 まあいいか、と笑顔で流して、家を出た。


 ノーチェとココが、ルルに協力してもらいながら雪うさぎを。
 コルネとキルシェが、郁と一緒になって雪だるまを作っている光景を、カメラに収める。
 小さい子が集まって楽しそうにしている様子は、なんとも和むものだ。
「……んー」
 けれど、雪は光を反射する。
 どうにも上手く撮れないな、と首をかしげていると、
「こうやるといいスよ」
 声を掛けられた。
「あ、」
 振り返る。紺侍がいた。
 びっくりした。そう言って、笑おうとしたのだけれど。
「……っ、」
 前に会った時のことを思い出した。
 ――う、わ。
 どうしよう。
 とても、恥ずかしい。
 まともに顔を見ることが出来ないくらい、恥ずかしい。
「ちょ。何で顔真っ赤なんスか」
「!」
 指摘されて、気付いた。ばっ、と顔を背ける。
「…………」
「………………」
 沈黙が、流れた。恥ずかしさが伝播してしまったようだ。
 どうしよう、どうしよう。何か話しかけなければ。しかしそう焦れば焦るほど、言葉は出てこない。
「にーちゃんたちなにやってんの」
「貴瀬おにいちゃん、ゆきだるまさんのあたまくっつけるのてつだってー」
 と、困ったところに雪だるま作成組がやってきた。
「頭?」
 あれ、と彼らが指差す方を見れば、大きな雪玉が二つ。
「乗せられねェくらいの作るとは。やるねェ」
「「だろー」」
「だろー」
 コルネとキルシェが言うのを真似て、郁が言う。可愛かった。ぷっ、と吹き出すと、隣で紺侍も笑っていた。
「乗せてあげよっか」
「そうスね」
 片方ずつ持って、
「せーので」
「はィな」
「いくよ、せーのっ」
 身体の上に、頭をどんっ。
 同時に歓声が上がった。いつの間にか子供たち全員が注目していたのだった。
 雪だるまの周りを走り回ったり、手や顔を作ったり。
 そんな子供たちを見ていたら、自然と笑えてきた。恥ずかしさも、どこかへ消えた。
「……なんか、ごめんね。ちょっと、恥ずかしくなって……」
「いえいえ。オレも変な沈黙作っちゃって」
「紺侍のせいじゃないよ」
「じゃ、貴瀬さんのせいでもないっス」
 や、俺のせいだと思う。という一言は、飲み込んだ。そういうことにしてくれるなら、そういうことにしてもらおう。
 へらり、笑い合っていると。
「紺侍おにいちゃん」
 郁がやってきて紺侍の服の裾を引っ張った。
「ん? 何スか?」
「あのね、ゆきうさぎさんとゆきだるまさん、クロエちゃんにみせたいの」
「じゃ、記念写真撮りましょっか。郁さんもそこ、並んで? っと、もうちょっと左。そ。そこで」
「…………」
「貴瀬さん。あんまじっと見られてると、ちょっとやりにくいっス」
「あ。ごめん。でも」
 紺侍が写真を撮るところをじっと見たことはなかったから。
「ちょっと気になる」
「えー。ま、いいスけど」
 許可はもらったので、眺めつつ。
 気になる、から派生して、もうひとつ。
「そういえばさ。紺侍のパートナーさんって、見かけたことないよね」
 紺侍のパートナーのことだ。
 それなりに付き合っているのに、名前すら知らない。
「どんな人なの?」
「んー。超美人スよ。街中ですれ違ったら思わず振り返っちまうくらい」
 外見的な意味で問うたのではないのだけれど。
 意図とずれた回答は、わざとなのだろうか。わざとだろう。普段なら、口に出さないところまで読んで答えるのだから。はぐらかされた。そう取るの

が、正しい。
 まだ、自分が触れていい問題ではないのだろう。貴瀬はそう判断して、「そっか」と頷いた。
「仲良し?」
「うーん。普通スかねェ」
「心配になるような返答だね」
「はは。でも、そんなもんなんで」
 二度目の、そっか。
 ぱしゃりと、シャッターが切れる音がした。
「ちょっと冷えてきましたね。部屋、戻りましょうか」