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第25試合

 
 
『では、第25試合に参りましょう。
 イーブンサイド、AI制御のプラヴァー・マジック仕様
 対するオッドサイドは、鑑 鏨(かがみ・たがね)パイロット、カガリ グラニテス(かがり・ぐらにてす)パイロットのバンガイオーです』
 プラヴァー・マジック仕様は、対魔法戦闘に特化したプラヴァーだ。大型のマジックカノンを装備し、剣もマジックソードを使用している。
 バンガイオーは、クェイルをベースとしている。外装をスーパーロボットふうの重圧な物に換装はしているが、基本スペックは変化していないようだ。仏斗羽素で推力を補い、金棒とアサルトライフルで武装している。いざとなれば、パンチでの格闘も辞さない。
 要は、コンセプトの定まらないバラバラのセッティングなのだが、それゆえにある程度の汎用性は有しているようである。
「頑張ってください、二人とも。番外王、ムキムキボンバァ、イェーッ!」
 メイド姿白 海里(ましろ・かいり)が、なんだかよく分からない応援で鑑鏨たちを送り出した。
「やれやれ、姦しい」
「出る」
 カガリ・グラニテスがちょっと呆れる艦に、鑑鏨がバンガイオーを発進させる。
「作戦は?」
「なし。虎穴に入らずんば虎児を得ず」
 訊ねるカガリ・グラニテスに、鑑鏨が淡々と答えた。
「なら、オレが敵の隙を超感覚で探ろう」
 カガリ・グラニテスが言った。バサリと、コウモリの翼が広がる。
 フィールドは真っ暗だ。ザナドゥあたりの空中のようだが定かではない。
 突然、閃光が闇を切り裂いてのびた。プラヴァーからの砲撃だ。
 すぐに鑑鏨がライフルで反撃するが、ほとんどあてずっぽうの攻撃にすぎない。敵も、正確にこちらの位置を掴んでいるとは言いがたかった。だが、お互いの射撃で、だいたいの位置は掴んだ。
「指示する方向へ……」
 目を瞑っていたカガリ・グラニテスが、敵の予想座標を指示した。
「応!」
 迷うことも疑うこともせずに、鑑鏨が金棒を構えさせて全速で突っ込む。わずかにマジックソードらしき輝きが見えた。バンガイオーがブンと金棒を振る。受けとめるようにマジックソードがきたが、それを打ち砕いて金棒がプラヴァーの機体を捉えた。鈍い手応えと共に、ひしゃげたプラヴァーが墜落していく。微かな爆発音と共に閃光が垣間見えた。
 
    ★    ★    ★
 
『勝者、バンガイオーです!』
 
 
第26試合

 
 
『第26試合となります。
 イーブンサイド、AI制御の応龍
 オッドサイド、猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)パイロット、セイファー・コントラクト(こんとらくと・せいふぁー)サブパイロットのバルムング!』
 応龍は、教導団の大型可変イコンである。その巨体と火力は、拠点攻撃用として申し分ない火力を有している。飛行形態はデルタ翼のリフティングボディタイプの爆撃機だ。
「敵はすでに着地しているようだな。こちらもいくぞ」
 氷原に着陸している応龍を発見して、猪川勇平がバルムングを急がせた。その眼下の応龍が形を変え始める。変形だ。左右の翼が折れ曲がって四肢となり、むくりと立ちあがる。
「でかい……」
 量産型饕餮クラスの巨体を見て、猪川勇平がゴクリと喉を鳴らした。
「何してんのです。やられてしまうですよ。回避でございます!」
 機晶制御ユニットにほとんど全身を沈めたセイファー・コントラクトが、直結したブレスノウから危険を察して叫んだ。
 反射的に、猪川勇平が機体をロールさせて回避運動を取る。そのそばを、巨大な砲弾が超音速で通りすぎた。ショックウエーブにあおられて、バルムングの機体がバランスを崩した。あわてて猪川勇平が機体を安定させる。
 ズンと雪原から雪煙を散らせて、応龍がゆっくりと前進していた。両肩の巨大レールガンが再びバルムングを捉えようと微妙に角度を変える。
「あれにあたったら一撃だな」
「ねえ、マスターが撃墜される前に、撃ってもよろしいでございますか? 撃ってもいい?」
 冷や汗をかく猪川勇平に、セイファー・コントラクトがせっつくように聞いた。情報処理以外でセイファー・コントラクトが任されているのは、レーザーと滑空砲だけだ。
「牽制だ、やれ!」
 猪川勇平が命じた。
 わーいとトリガーを引いたセイファー・コントラクトであったが、応龍の対空機銃の攻撃を猪川勇平が避けたため、狙いが逸れる。腕を振り上げた応龍が、分厚い装甲でバルムングの攻撃を受けとめた。その有り余る出力で、イコンバリアの強度も増しているようだ。さすがに攻撃を受けとめた腕はかなり変形してはいるが、行動に支障は出ていない。並のイコンであれば、今のスフィーダレーザーの一撃で致命傷となっているはずであった。
 間髪入れず、たたみかけるように対空ミサイルが飛んでくる。超電磁ネットで迎撃しつつ、猪川勇平は一気にバルムングを地上に下ろした。急降下で地上直前で逆噴射をかけつつ変形を行う。のびた脚が地表に触れたとき、容赦なく応龍から機銃が浴びせかけられた。地表に積もった雪を激しく舞い上げて横滑りしつつ、なんとか上半身の変形を完了させた。
「少しあたってるでございますよ。マスターったら、この程度の攻撃も避けられないで、よくイコンの大会に出ようなどと思いましたですね」
「うるさい。こちらに有利な接近戦で決めるぞ!」
 セイファー・コントラクトの台詞を半ば無視して、猪川勇平が叫んだ。
 応龍の攻撃は強力だが、近距離の物ではない。懐に飛び込んでしまえば、まだ勝機はあった。
 機銃の雨をかいくぐって、バルムングがスフィーダソードを一閃させた。脚部を一刀両断されて、応龍がバランスを崩して傾く。
「止めだ。神気孔衝!」
 無防備になった底部に、猪川勇平が機神掌を叩き込んだ。衝撃が応龍のコックピットを貫通して爆発を呼び起こす。即座に後退して防御体勢を取ったバルムングの眼前で、応龍が頭を垂れるようにして擱坐した。
「今回は俺の方が一枚上手だったみたいだな」
 スフィーダソードを雪原に突き立てて柄頭に手を載せると、猪川勇平が言った。
 
    ★    ★    ★
 
『勝者、バルムングです』