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第27試合

 
 
『第27試合は、お互いにAI制御の雷火シュヴァルツフリーゲの戦いとなりました。
 嵐のステージで相対した二機でした。
 悪天候の中、低空での戦いを余儀なくされたシュヴァルツフリーゲが終始圧倒的でしたが、一瞬の隙を突いて雷火の投げた槍によって致命傷を受けてしまいました。
 それでも、無理矢理相討ちに持っていったのは、さすがは鏖殺寺院の指揮官用イコンのいやらしさと言いましょうか。シュヴァルツフリーゲの誘爆に巻き込まれて、雷火も破壊されるという結果となっています。
 これによって、両者敗退となりました』
 
 
第28試合

 
 
『それでは、第28試合に移ります。
 イーブンサイド、シルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)ライダーの駆るペガサスディジー
 オッドサイドは、AI制御のクェイルです』
「なんですってえ!?」
 シャレード・ムーンのアナウンスを聞いたリカイン・フェルマータが叫んだ。
 イコンを目の敵にしているパートナーのシルフィスティ・ロスヴァイセが大会直前から姿をくらましていたので、もしやとは思っていたのだが。まさか、本当にペガサスでイコンに戦いを挑みに来るとは。
 さすがに生身でイコンに戦いを挑んで死なれでもしたら、パートナーロストでリカイン・フェルマータもただではすまないが、とりあえず今回はシミュレータである。いっそ完膚無きまでにボコボコにされれば懲りるのではと思っていたのだが、よりによって相手がクェイルだとは。こんな旧型の、しかも一切強化もしていない、さらにさらに適当なAIが動かしているとあっては、ティラノサウルスに踏まれてもピンピンしているシルフィスティ・ロスヴァイセでは、まかり間違って勝ってしまう可能性もあるではないか。
 これはまずい。
 変な自信でもつけられては大変だ。ここはひとつ、しっかりとお仕置きしておかなければならない。こそこそとプログラムを書き換えると、リカイン・フェルマータはシミュレータに入っていった。
「イコン、ぶっ潰〜す!!」
 イコンに対する敵意をむきだしにするシルフィスティ・ロスヴァイセに呼応して、ディジーが一声高くいなないた。
「悪いけど、メインスクリーンにモザイクかかるような状態になってもらうわよ」
 そうつぶやくと、リカイン・フェルマータは格納庫からクェイルを発進させた。
「えっ、あれあれ?」
 なんだか足許が縺れる。
 フィールドが浜辺だったからというわけでもないが、今ひとつコントロールが悪い。
「いったいどうなって……、はっ、サブパイロットは!?」
 後ろを振り返ったリカイン・フェルマータが、空っぽのパイロットシートを見て青ざめた。
「久我くん、どこ行っちゃったのよお!」
 
    ★    ★    ★
 
「んっ? 何か言いましたか?」
 彩音・サテライトと一緒にお弁当を食べていた久我浩一が、誰かに名前を呼ばれた気がして周囲を見回した。
「おいしいねー」
「うん、おいしいですねー」
 そう彩音・サテライトに言うと、久我浩一はのんびりとお昼休みを続けた。
 
    ★    ★    ★
 
「ええい、たとえ出力30%でも、やってやるわ!!」
 パイロットデータを入れ替えたときに、すっかりサブパイロットのことを失念していたらしい。
「これなら、もっと強力なイコン、いっそゾディアックのデータに差し替えておけばよかった……」
 リカイン・フェルマータはそう悔しがったが、多分そんなことをしたらまったく動かないか、疑似データで起動したとしても出力1/13なんてことになっていそうだ。
「とにかく、イコンの強さを思い知らせて……うきゃあ!?」
 激しい衝撃を受けて、リカイン・フェルマータが悲鳴をあげた。
「それそれそれ。やっちゃいなさい、ディジー!」
 シルフィスティ・ロスヴァイセの命令で、ディジーが海岸においてあった消波ブロックをゲシゲシと蹴飛ばしていた。
 蹴飛ばされた消波ブロックがドーンとクェイルにぶつかっては弾き返され、それをまた蹴っ飛ばすと言うことが続く。反撃の暇さえなくクェイルがボコボコにされていった。
「う、動け〜!」
 リカイン・フェルマータが叫んだが、もはやどうしようもない。
手加減も遠慮もなしよ。本気の一撃をくらいなさい!
 シルフィスティ・ロスヴァイセがそう叫ぶと、ディジーが後ろ足のブラスターフィストの一撃でクェイルを空中へと蹴りあげた。
 吹っ飛ばされたクェイルが、空中で爆発して四散する。
 
    ★    ★    ★
 
『なんと、勝者、ディジーです』