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第31試合

 
 
『続いて、第31試合となります。
 イーブンサイド、AI制御のミキストリ。
 オッドサイド、硯 爽麻(すずり・そうま)パイロット、白 海里(ましろ・かいり)ドライバーによる飛鉄塊「斑鳩」。こちらも、パワードスーツ、しかも一機での参戦です。もって2ターンですが、いったいどうなりますでしょうか』
 ミキストリは、玉霞をベースとしたソピローテという機体に重装甲と過剰な火器を搭載した砲撃型イコンだ。両肩に大型ビーム砲と、バインダーキャノンを有している。これらを同時発射する攻撃は強力だった。その他にも、ミサイルランチャーやガトリングなどを装備している。
 飛鉄塊「斑鳩」は、パワードスーツではあるが、形状は戦闘機型となっている。仏斗羽素を装備することによって高速飛行を実現し、ロケット弾による攻撃と爆撃を行う。
『敵は、拠点攻撃型のイコンのようですから、接近すれば勝機があります』
 パワードスーツ輸送車両、仏鉄塊「鶚」から執事姿の白海里が硯爽麻に告げた。
『了解したよ』
 発進前の計器チェックを入念に行いながら、飛鉄塊「斑鳩」の中の硯爽麻が答えた。大きさの関係から、寝そべる形で操縦することになる。
 メインプログラムを起動すると、コンソールパネルに「我、生きずして死すこと無し。理想の器、満らざるとも屈せず。これ、後悔とともに死すこと無し」の文字が表示されて消えた。
『準備、よろしいですか』
『いいよー』
 白海里の問いに、硯爽麻が元気よく答える。
『ハッチ開放。カタパルト展開。飛鉄塊「斑鳩」リフトアップ。主翼展開。進路クリア。どうぞ』
『しゅっぱーつ!』
 元気な硯爽麻のかけ声と共に、飛鉄塊「斑鳩」が発進していった。
 フィールドは森林だ。
 ここのどこかに、敵が隠れているのだろう。
『あまり高度を上げないでください。狙われます……』
 そう白海里が注意したとたんだった。強力なビームが、森の木々を消滅させながら飛鉄塊「斑鳩」にむかってのびてきた。
 間一髪、高度を下げにかかっていた飛鉄塊「斑鳩」が、ビームを逃れる。
『敵意値確認。木に気をつけて侵入してください。掩護します』
 白海里が、仏鉄塊「鶚」からスモークディスチャージャーを発射する。その煙に紛れるようにして、飛鉄塊「斑鳩」が梢の上をかすめるようにして飛んでいった。
『いっくよー』
 敵を発見した硯爽麻が、一気に突っ込んでいった。同時に敵もこちらを発見して、ビーム砲のチャージを開始する。
『こっちのが先だもん!』
 加速した飛鉄塊「斑鳩」が、敵がビーム砲を発射する前にその直上に達した。臨界に達したビーム砲の上に、パンツァーファウストを撃ち込む。
 攻撃力自体はさほどでもなかったが、タイミングが敵には最悪であった。臨界に達していたビーム砲が爆発し、それが他の武装の弾薬に飛び火して誘爆した。
 
    ★    ★    ★
 
『勝者、飛鉄塊「斑鳩」です!』
 
 
第32試合

 
 
『さあ、第1回戦も、最終試合となりました。
 イーブンサイド、高崎 朋美(たかさき・ともみ)パイロット、ウルスラーディ・シマック(うるすらーでぃ・しまっく)サブパイロットのウィンダム
 対するは、オッドサイド、AI制御のイツパパロトルです』
 ウィンダムは、ベーシックなジェファルコンだ。パワーブースターを追加して機動力を増し、ビームサーベル、氷獣双角刀などを装備した白兵戦機体となっている。補助として、アサルトライフルとハンドガンも装備している。
 イツパパロトルはシパーヒーをベースとした機体で、ビームを発射できる剣と、リフレクターマントによるオールレンジ攻撃を主体としている。
『――攻撃は任せたわよ。信じてるよ、シマック!』
『――おう、任せておけって』
 ウルスラーディ・シマックが、高崎朋美に自信満々で答えた。
 地上から発進して、一気に高高度へと上がる。
 それを待っていたかのように、イツパパロトルが中空に浮かんでいた。
『――始めるぜ!』
 ウルスラーディ・シマックがアサルトライフルで先制攻撃を開始した。イツパパロトルがマントを翻す。すると、マントが弾けて霧散した。
 ウィンダムの放った銃弾が、イツパパロトルに辿り着く前に弾かれる。
『――何もないのに、なんで!?』
 浮遊するリフレクタードローンを目視できないでいる高崎朋美が叫んだ。
『――どっちにしろ斬り込むんだ。気にするな。……来る!?』
 突然殺気を感じたウルスラーディ・シマックに呼応して、即座に高崎朋美が回避行動を取った。
 まっすぐ突きあげたイツパパロトルのビームバンカーソードの先端からビームが発射される。あらぬ方向へ進んだと思ったビームが、クンと鋭角的に曲がった。回避運動をするウィンダムを追いかけるように、ビームが屈折してくる。
『――反射装置か何かあるのか!?』
 ウルスラーディ・シマックが氷獣双角刀を拭いて宙を薙いだ。剣の纏った冷気が、空中にあった何かを凍りつかせて撃墜していく。
『いきます!』
 突破口を開いて、ウィンダムが突っ込んでいった。
 その背中に、背後からビームが命中する。
『――まだ!』
 高崎朋美がブースターを排除した。
 ウルスラーディ・シマックがビームサーベルで斬りつける。剣で受けとめたイツパパロトルが、そのままの体勢でビームを発射する。リフレクターに反射されたビームが、ウィンダムの右腕に命中した。剣を持ったまま腕が吹き飛ぶが、素早く左腕でハンドガンを抜いていたウィンダムが、0距離で拳銃を連射した。脇の関節から撃ち込まれた弾丸がイツパパロトルの内部を破壊し、停止した敵が墜落していく。同時に、周囲でドローンがばらばらと雨のように落ちていった。
 
    ★    ★    ★
 
『勝者、ウィンダムです!』