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第5章 囚われの宇宙人を助け出せ!


 金元 ななな(かねもと・ななな)隊長とシャウラ・エピゼシー(しゃうら・えぴぜしー)隊員は、宇宙人の秘密基地(種もみの塔)に囚われているという宇宙人確保(射的)という秘密任務遂行のため、55階に潜入していた。
 イカ焼き屋台の陰から、射的の的にされている小型宇宙人が囚われている屋台を観察する二人。
「こんな時にあれだけど、食券ありがとう。すげー助かった」
「本当? よかった〜。いっぱい食べて強い体をつくってね」
 小さく笑って頷いた後、一変してシャウラは声をひそめ、かしこまった口調で提案した。
「ななな隊長、一般人のふりして彼らの解放にあたりましょう。彼らにはちょっと痛い思いをしてもらうことになりますが、あの檻からの解放のためにはやむを得ません」
「そうだね……。じゃあ、あのちょっと大きめの子からいくよ」
 と、羊のぬいぐるみを指さすななな。
「了解!」
 二人は周囲で楽しそうにしている一般人のような雰囲気をつくり、射的屋台へ向かった。

「さあ、ななな隊長、次に解放するのはどの子だ?」
「子ブタに似たあの子にしよう」
 シャウラの脇には、羊のぬいぐるみを始め、女の子のぬいぐるみや各地のマスコットのぬいぐるみが積まれている。
 ここまで見事な集中力を見せていたシャウラだったが、とうとうそれも切れたのか、コルク弾が当たったのは隣の男の子のぬいぐるみだった。
「何かこれ、うちの団長に似てるな」
「宇宙は広いからね〜。似た人が三人はいるって言うよ」
「なるほど。中身も似てるのかな……『そのような愚劣な提案、我が校では検討する意味もない』なんてな」
「あははっ、そっくり!」
 教導団団長のモノマネをしたシャウラに、なななは楽しそうに笑った。
「それじゃ、次はななながやるよー!」
 なななは遊び賃を支払うと、真剣な表情でおもちゃの銃を構えた。
 無邪気に笑っていたなななと任務のために表情を引き締めるななな、どちらもシャウラは好きだ。
「もう少し腰を落として」
 シャウラはなななと視線の高さを合わせてアドバイスした。
 頷き、腰を落とすななな。
 まっすぐに標的を見据える横顔を、かわいいなとシャウラは思った。
 直後、おもちゃ銃からコルク弾が飛び出し、子ブタのぬいぐるみに命中した。
「やった! さすがななな!」
「えへへっ」
 囚われの宇宙人を無事に保護した二人は、ベンチで休憩していた。
 シェイクを飲みながら、渡すなら今だと決意したシャウラは、シェイクを脇に置くと今日のために用意したプレゼントをなななに差し出す。
「これ、俺からの気持ちだ」
 綺麗にラッピングされた箱をきょとんと見つめた後、なななはそれを受け取った。
「もしかして、チョコレートだったり? 開けてもいいかな?」
「ああ。気に入ってくれるといいけど」
「あっ、動物のチョコだね! かわいいな〜。ありがとう、ゼーさん!」
 一つ一つ種類の違う動物の形をしたガナッシュチョコだった。
 なななはさっそく一つを口に含んだ。
 とたん、幸せそうな笑顔になる。
「おいしい〜! そうだ、なななからもチョコがあるんだよ。はい、どーぞ!」
「え、マジで? マジで俺にくれるの? うひゃー、どうしよ!」
「あははっ、チョコは食べるものだよー。喜んでくれてよかった。みんなを幸せにするのは宇宙刑事の役目だからね!」
 シャウラのためだけに用意されたわけではないようだったが、彼にとってはささいなことだった。
 なななが何人にチョコを渡したかはわからないが、忘れられることなく手渡しでくれたのだから。
 そこには、なななからの愛がてんこ盛りだ……!
 と、シャウラは解釈した。
 シャウラはやさしい笑みでなななを見つめた。
「ありがとな。もうずっと飾っときたいくらいだけど、ちゃんと食べるよ」
「うん! ねえ、まだ時間あるね。もう少し見回りしようか?」
「そうだな。……では、行きましょう隊長」
 立ち上がったシャウラは、なななへ手を差し出した。