リアクション
卍卍卍 ミツエは怒気を抑えつつ、金 鋭峰(じん・るいふぉん)と付き添いに来た関羽・雲長(かんう・うんちょう)に対面した。 「お久しぶりです、横山ミツエ嬢。……劉光栄様とお呼びした方がよろしいでしょうか」 相変わらずの乏しい表情で嫌味なのか何なのかわからない金鋭鋒の挨拶に、ミツエは遠慮なしに顔をしかめた。 「その名前はとうに捨てたわ。お母様とあたしがあの男に捨てられた時にね。何の用? 縁談ならお断りしたはずよ?」 団長に対するあまりな物言いに関羽はミツエを睨みつけるが、ミツエは意に介してはいなかった。 「……国家主席よりご伝言です。『いつまで地べたに這いつくばっているつもりだ』と」 その言葉を聞いた瞬間、ミツエを中心に光が渦巻いた。 「朕を蛆虫扱いするかっ!」 皇氣である。 放射された光に金鋭峰と関羽は圧倒されたが、倒れることはなかった。 しばらくすると光は消え、ミツエは肩で息をしていた。 「国家主席はあなたがシャンバラを離れる事を望んでおられる。しかし、それを聞くような方ではないでしょう」 「……それを分かっていながら、良くここへ来たわね」 「軍人である以上当然のことです。それに、伝えたかった事がある」 「何よ?」 ふと、金鋭鋒の瞳が強さを増す。 「あなたは私に野心がないと憤慨していたが、それは違う。このシャンバラを理想の国家とする。それが私の野心です」 「……“成都の英雄”の選んだ道ということなのね。縁談の時は、ごめんなさい」 金鋭峰の決意を込めた言葉にミツエは頭を下げた。 まさかの素直な態度にいささかとまどう金鋭鋒。 「い、いえ」 「でも、あたしはここから離れないわ。あの生徒会たたきつぶして、仲間を救うまではね」 「わかりました。どうか、ご無事で」 「ちょっと待って。これあげるわ。関羽にも」 ミツエは金鋭峰と関羽に小さな箱を渡した。綺麗なラッピングからわかるそれは……。 「あ、ありがとうございます。チョコレートですか……」 「遅くなったけど、バレンタイン用よ。みんなに配ろうと用意していたんだけど、余っちゃったから……」 ミツエは若干表情を暗くしていた。 それが共に戦っていた仲間の離反にあることは明らかであった。 しかし、金鋭鋒はそのことには触れず、もらったものへの感謝のみを示す。 「大切に食べさせて頂きます」 「ええ。あたしも金団長の無事を祈っておくわ。次に会う時は敵かも知れないけど」 こうして金鋭峰とミツエの会談は終わった。 帰りのヘリコプターの中、金鋭鋒ははっきりと表には出さないものの、それはそれは上機嫌だったそうだ。 卍卍卍 教導団のヘリが飛び去った後、ミツエの元に劉備が走りよってきた。 「教導団の援助を受けることも出来たのに、なぜ断ったのですか?」 「あたしたちは学生なのよ。困ったら先に頼るものがあるでしょう?」 「とおっしゃいますと?」 「先生よ。……生徒会にイジめられているんだから、先生に注意して貰わないとね!」 何やら策を思いついたらしいミツエは、ほくそ笑んでいた。 『横山ミツエの演義乙』 第一話 完 担当マスターより▼担当マスター 冷泉みのり ▼マスターコメント
大変遅くなりました。 |
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