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リアクション
第9章 邪剣乱舞(校庭)
そしてそこに、『声』が響いた。
「いいね、いいよキミ。ボク、そういう貪欲な人間ってスキだなぁ」
「鏖殺寺院の者と見た」
確認したのは、イーオンだった。
使い魔たるカラスが教えてくれた。
だが、カラスの発見から……学園に侵入してからここまでが、速すぎた。
「成る程、一筋縄ではいかないという事だな」
「あまり、風紀を乱すのは感心しないな、大人しくして……ッ!?」
同じく取り押さえようとしたフィーネは、その侵入者の気配に息を呑んだ。
警告。
魔道書としての本能が、激しく警告していた。
その正しさを証明するように。
鏖殺寺院の制服を着た少年はそうして、手にした漆黒の刃持つ剣を高く掲げ。
振り下ろされた剣と共に、黒い風が……嵐が、全てをなぎ倒した。
「……無事か?」
「うん、ありがと」
咄嗟に理沙を庇ったリュースは、シーナ達の無事も確認し、少年を睨みつけた。
「……てめぇ、人の大事なもんに手を出しやがって、五体満足で帰れると思うなよ!」
「遥遠、瑠璃、無事ですか?!」
「遥遠は大丈夫です……!? 瑠璃は?!」
遙遠と遥遠が駆けつけると、瑠璃はぼんやりしていた。
肩口からわずかに血がにじんで。
「瑠璃、大丈夫ですか?!」
「え、と……うん、大丈夫」
「……瑠璃?」
応える声はやはりぼんやりと……どこか、遠かった。
「朱里!」
「大丈夫だよ。アインこそ、大丈夫?」
「無論だが……正直、生きた心地がしなかった」
安堵と共に、抱きしめる愛しい腕は微かに震えていて。
「大丈夫、私は大丈夫たよ」
朱里は繰り返した。
「いった〜、何が何だか」
頭を振るカリン達に安堵しつつ、朔もまた少年をギリっ、と睨みつけた。
反則だとかは正直、どうでも良かった。
ただヤツは……朔の大切な者達に手を出したから。
「……スカサハ!」
「ええい、いっけぇぇぇぇぇぇぇっ!」
朔の意に従い、スカサハが六連ミサイルポッドをぶちかました。
だが、それらは全て漆黒の剣に阻まれる。
全てを切り裂く、黒き刃。
「堕ちた魔剣か……ふむ、私も実際に目にしたのは初めてだよ」
「堕ちた魔剣?」
フィーネは静かに頷いた。
「わ☆ ボクを知ってる人がいるなんて嬉しいね……ん〜、『人』じゃないか」
「私はシャンバラのルカルカ。貴方の名前を教えて」
警戒はマックスのまま、ルカルカが問い。
「ボクは『邪剣』。約束を果たす為に……影龍を復活させる為に、来たんだ」
少年……邪剣はそして、にっこりと無邪気に笑った。
「それは……させるわけにはいかないわね」
直後、ルカルカが動いた。
「わっ、速い速い」
「流石に最終兵器の呼び名は伊達じゃないですね……しかし自分も負けませんよ」
ルカルカに合わせ、ザカコも一気に間合いを詰めた。
カタールが、少年の左腕に突き刺さる。
ポタリと流れる血と、ダラリと下がった腕。
「すごいや、ふぅん、もっと速くないとダメなんだね」
けれど少年はまるで痛みなど感じないかのように、嬉しそうで。
「あの少年……身体は操られているだけに過ぎない。あの少年を斬っても、おそらく邪剣は別の器を得る……ヘタをすれば犠牲者を増やすだけだな」
「喋っている奴……本体はあくまであの剣って事なのか」
「つまり、あの剣を折ればいいってコトだな!」
「ダメダメ、そんな簡単にはやられないって」
「ガガチの邪魔はさせないんだから!」
言いながら、なぎこが横合いから斬りつけた。
「非戦闘員を避難させて下さい!」
「てか、人使い荒いで」
大会委員長たる輝樹は言いつつ、雪華達に指示を出す。
「ケガ人を先に……早く!」
「え縲怩チ、ギャラリーは多い方が楽しいのに」
「痴れ者が! させません!」
美央は一喝すると、放たれた攻撃を受け止めた。
「……っ!?」
騎士としての信念が、揺らぐ。
それを無理やり押さえつけ、美央はケガ人を守る。
「大人は子供を守るものなんですよ」
同じくエメは、厳しい表情で生徒達を守っていた。
「あの剣……邪剣とかいったあれ、危険ですね」
「変な力を感じます。あの力……出来るだけ触れない方がいいでしょう」
優斗も言って、木刀を構えた。
「大丈夫、君達は守るから」
守るべき者達をそう、安心させながら。
「理子っ!」
葛葉翔は傷ついた身体で、理子を庇っていた。
悲鳴を上げる身体を、無理やり叱責し。
黒い風が、掠める。
そして翔は違和感に気付く。
理子が……高見沢理子はよく知る相手だったはずだ。
それが今、ひどく遠い。
こんなに側にいるというのに。
その、戸惑い。
空間、志、願い……絆。
邪剣は目に見えぬものをも、斬る。
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