リアクション
「賑やかな人達でしたね」 卍卍卍 金剛の一番深くて暗いところにある収容所。 捕虜達はそこに数人ずつまとめて牢に入れられている。 その牢の一つ一つをメニエス・レイン(めにえす・れいん)が丹念に覗いていた。その目は、まるで獲物を探しているような目だ。 そして、一人の人物にその目は定められた。 「ギルガメシュさん、あなたにするわ」 いきなり指名されたギルガメシュ・ウルク(ぎるがめしゅ・うるく)はメニエスを睨みつけ、隣の牢に居たエル・ウィンド(える・うぃんど)は顔色を変えた。 ミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと)が鍵を開けて、ギルガメシュを引きずり出すと首に匕首を当てた。 「武装解除だけでは心配だから、人質を取らせてもらうわ。脱獄なんかしたら彼女の首をはねるから、そのつもりで……」 メニエスの酷薄な笑みは、捕虜全員を見渡した後、最後にエルに固定された。 二人は契約者同士だ。ギルガメシュが死ねばエルも道連れとなる。そうなれば、乙軍にいるホワイト・カラー(ほわいと・からー)にも害が及ぶだろう。 屈辱をこらえておとなしくなったギルガメシュに、ミストラルは満足気にニヤリとした。 「ロザ、ティア、ここは任せたわ。ミストラル、行くわよ」 「行ってらっしゃい、おねーちゃん」 元気に手を振るロザリアス・レミーナ(ろざりあす・れみーな)と、少し離れたところから怯えた表情でそれを見ているティア・アーミルトリングス(てぃあ・あーみるとりんぐす)。 メニエスはミストラルを従えて次の目的地へ向かった。 品の良い薄い紫色を基調に整えられた部屋。物語の王侯貴族が使っていそうな天蓋付きのベッド、いくらしたのか考えたくもないような調度品。 ラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)は、深く沈みこむソファに腰掛けてため息をついた。 「曹操に連絡の一つも入れたかったが……」 武器だけでなくケータイまで取られていた。 室内をさまよっていたラルクの視線が、頑丈そうな鉄格子のついた窓で止まる。 体は拘束されていなが、完全に部屋に閉じ込められていた。 唯一の出入り口のドアはピッキングの技も通じず、ドラゴンアーツで強化した力で壁を殴ってもヒビも入らない。 だからといっておとなしく助けを待つのはラルクの性に合わない。 故に、苛立ちが募った。 「くそっ」 悔しさに膝を叩いた時、部屋の鍵が開く音がした。 弾かれたように立ち上がりドアを凝視すると、入ってきたのはティーセットを持ったメニエスだった。 「こんにちは。ご機嫌は……よろしくないようね」 「当たり前だ。何しに来た」 イライラと吐き捨てるラルクに、メニエスは小さく笑うと後ろを振り向く。そこにはギルガメシュを拘束したミストラルがいた。 瞬時にその意味を理解したラルクは、悔しさに小さく呻くと諦めたように再びソファに身を沈める。 テーブルに紅茶を用意していたメニエスは、 「理解力のある人は好ましいわ」 と、勝者の笑みを浮かべた。 そして、向かい側のソファに腰を下ろしたメニエスへ、ラルクは再度問いかけた。 「それで、俺に何か用か?」 「ええ。砕音の恋人がどんな人なのか、一度会ってみたかったのよ。さあ、冷めないうちにどうぞ」 にこやかに勧められたが、とてもそんな気にはなれないラルクだった。 少しでも隙が見えれば、すぐにでもギルガメシュと共に脱出するのだが、今のところできそうもない。 優雅にカップを口元に運ぶメニエスを睨むことしかできなかった。 |
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