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精霊と人間の歩む道~イナテミスの精霊祭~

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精霊と人間の歩む道~イナテミスの精霊祭~
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リアクション

 
 
「突然ですがここで、
 『突撃! いけまさんの精霊指定都市代表インタビュー!
  ハーフフェアリーは見たかもしれない!』
 をやっちゃいまーす!」
「いぇ〜い!」


 樂紗坂 眞綾(らくしゃさか・まあや)にカメラを回させ、牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)が一堂に会した五精霊の面々にノリノリでインタビューを敢行する。
「……どうしてこうなった……」
 その光景を目の当たりにしながら、毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)が頭を抱える。
「ああ、何だ……済まない。話を聞いてもらった上にこのような場まで設けてもらったにも関わらず……」
 ケイオースが、苦笑を浮かべつつ大佐を慰める。事の始まりは、大佐が街に来て最初に話しかけた相手がケイオースだったことから進み、その後精霊や街のことに――さらには、国同士の関係のこと――興味あるものが集まり、自己紹介など済ませた後、精霊指定都市成立にまつわる話――エリュシオンの精霊のこと、そこから来るイルミンスールとイナテミス、人間と精霊の思惑まで――をし終え、一息ついたところでアルコリアが……という流れであった。
「……君たちには、重い話をしてしまったからな。彼女はきっと、場の空気を和ませようとしてくれたのだろう」
「……だといいんだけどね」(相も変わらぬ恐ろしい子だよ、牛皮消……)
 とりあえず見守る立場を取ることに決めた大佐が、用意された飲み物に口を付ける。
「まずは炎熱の精霊長、サラ様ー! けしからん胸とむき出しの腰のラインがセクシー!」
「せくしぃ〜!」
「あ、ああ……何だ、聞きたいことなどあれば答えよう」
 アルコリアに紹介されたサラが、そのノリに少々押されつつ答えると、紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が手を挙げて進み出、武術を手解きしてほしいと願い出る。
「……うむ、いいだろう。私でよければ、相手になろう」
 唯斗の眼差しを見つめ、頷いたサラが唯斗と飛び出していく。
「お次は光輝の精霊長、セイラン様ー! 予想に反して控えな胸、それもまたセクシー!」
「せくしぃ〜?」
「な、何をおっしゃいますの!? 比較する対象を間違ってますわよ!」
「……だそうだが、本当のところはどうなんだい? 『お兄ちゃん』?」
「な、ど、どうしてそのことを……海でのことが広まったか……? ……コホン、それについては控えさせてもらおうか」
 セイランの抗議の声、大佐とケイオースのやり取りが見られる中、エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)が進み出、光条兵器関係の質問を投げかける。
「よろしいですわ。では、あちらでお答えいたしましょう」
 セイランが頷き、エクスを連れて歩いていく。
「お次は雷電の精霊長、セリシア様ー! 見た目に騙されちゃいけないけしからん胸がセクシー!」
「せくしぃ〜!」
「皆さん、よろしくお願いしますね」
 アルコリアの性的発言を笑顔でスルーするセリシアには、紫月 睡蓮(しづき・すいれん)が興味津々といった様子でやって来る。
「はい、承りました」
 睡蓮に微笑んで、セリシアが共に連れ立って歩いていく。

「フッ!」「ハッ!」
 電撃と炎がぶつかり合い、弾けて消える。幾度の踏み込みからの技の応酬を経て、サラの一撃で体勢を崩された唯斗の喉元に、揺らめく炎の刃が向けられる。
「……流石だな。俺の負けだ」
「なに、気を抜けば私の方がやられていただろう。いい筋をしている」
 互いに武器を収め、礼を交わし合う唯斗とサラ。
「アンタが友の為に剣を振るうように、俺は友であるアンタ達の為に拳を振るいたい。何かあったら呼んでくれ、必ず助けに行こう」
「ああ、そう言ってくれると心強い。あなたならば、何のために力を振るうべきか、違えることはないだろう」

 弓矢状に形成した光を、セイランが空に引き絞り、放つ。光は宙へ真っ直ぐに飛んだかと思えば、反転して地上へ向かい、置かれていた目標物を違わず射抜く。
「経由点、そして到達点を明確に意識出来れば、このようなことも可能になりますわ。光を絞れば貫通性の高い光、広げれば浸透性の高い光にもなるのです」
 光の特徴を生かした技の原理を、エクスの目の前で実践しながらセイランが教えていく。
「ふむ、なるほど。色々と試せそうな事が有るようだ。セイラン、感謝する」
「どういたしまして。あなたの持つ光が、皆の行く道を照らす光とならんことを」

「セリシアさんにも姉さんがいるとお聞きしました。よろしければ、どんな方か話していただけませんか?」
「そうですね……時に厳しく、そして私が進むべき道へと導いてくれる、そんな方です。たとえ離れていても、心はいつでも繋がっている、そう思うことが出来る方ですね」
 『姉』であるサティナのことを尋ねられたセリシアが、自然な心でそう評する。
「そうですか……私もいつか、セリシアさんのように思える日が来るでしょうか」
「互いに想い合う心があれば、いつか必ず……。大丈夫ですよ」
 睡蓮に微笑んだセリシアが、皆の下へ戻っていく唯斗とサラ、エクスとセイランを認める。
「さあ、私たちも行きましょうか」

「え〜っと、リンネちゃんたちがいるここが、イナテミス。
 今歩いてきたみたいに、町長さんがお仕事してるところから順に、商業が盛んな地域、住宅地、穀倉地帯って感じで成り立ってるね!
 で、外に出たらイナテミスを三角形に囲んで、光輝さんと闇黒さん、炎熱の精霊さんの街が出来たんだよ!
 こっから北に行ったところに『氷雪の洞穴』、カヤノちゃんが治めてる洞窟があるの! と〜っても寒いところだけど、カヤノちゃんはあったかいんだよ〜。
 洞穴から西に行ったところには『ウィール遺跡』、セリシアちゃんが治めてる遺跡があるの! 森の緑が綺麗なんだよ、落ち着いた気分になりたい時にはいいかもね!」
 その他、ウィール遺跡と氷雪の洞穴で守護されている『雷龍』と『氷龍』のこと、それらを守るために雷電と氷結の精霊はその場所に都市を築いたことなどを、リンネは同行するフィリップ、及び神裂 刹那(かんざき・せつな)ルナ・フレアロード(るな・ふれあろーど)赤城 花音(あかぎ・かのん)リュート・アコーディア(りゅーと・あこーでぃあ)に説明していた。
「説明どうもありがとうございます。今まであまり深く関わる機会がなかったので、この地域について詳しくなかったので、助かりました」
「うん! リンネちゃんの説明だけじゃよく分からないこともあると思うから、五精霊のみんなに聞いてみるのもいいと思うよ! これから案内するね!」
 礼を言う刹那に頷いて、リンネが一行を五精霊が集まっていると思われる場所へ案内していく。
「ねえねえ、リンネがパラミタに来たのって、魔法の復権と強力な魔法を使うことだよね? リュート兄さんが、ボクとリンネは似たもの同士だって言うんだけど……どうだろう?」
「う〜ん……どうなんだろう。
 リンネちゃんはね、最初はそう思ってた。とにかくすっごい魔法が使いたくって、授業とか探検とか頑張ってたらいつか使えるようになるかな、ってくらいに思ってたんだ。
 ……でもね、ここに来て、色んな人に会った。色んなことも経験した。
 いつの間にかリンネちゃん、ロイヤルガードなんていう偉そうな役職につくかもしれないって言われた。
 そうなったら、今までのように気楽に考えることもできなくなるんじゃないかな〜って思っちゃった」
 話してるうちに段々訳が分からなくなってきた様子のリンネが、バタバタと手を振って仕切り直すように答える。
「でも、初心忘るべからず、だよね! これからもリンネちゃんは、強力な魔法をぶっぱなしていくぞー! おー!」
「り、リンネさん、大丈夫ですか? 何か勢いだけで突っ走ってるような……」
 宥めようとしたフィリップに、リュートがアドバイスを与えるように小声で呟く。
「フィリップさん、お転婆な女の子の相手は、一呼吸置く間合いが大切だと思いますよ。
 普段はノラリクラリと避けつつ、いざという時に守れる、そんな具合でよろしいかと」
「はぁ……って、僕がリンネさんの相手ってことになってません!?」
「おや、違ったのですか? 僕はてっきり……」
 首をかしげるリュートに、フィリップが手をぶんぶんと振って否定する。
「おや〜、こちらの似たもの同士は何を話してたのかな〜?」
 首を突っ込んだ花音が、フィリップとリュートのことを草食系男子と称し、否定しないリュートの横でフィリップは「僕って草食系なのかなぁ……」とちょっぴりうなだれていた。
「あっ、いたいた! ……あれ? カヤノちゃんは?」
「カヤノなら、もうすぐ来ると思うぞ。……ふむ、あなた方は確かロックフェスの時に……」
「はい。改めまして、初めまして、イルミンスール所属の神裂 刹那と申します。ロックフェスの際はお手伝い下さりありがとうございました。おかげで想像以上の盛り上がりでした」
「刹那のパートナーのルナ・フレアロードと申します。ロックフェスの際はありがとうございました。刹那共々、以後お見知り置き下さい」
「あの時は最高のステージになったよ!! お礼が遅くなったけど、どうもありがとう。
 今後も力を合わせて、頑張ろうね!」
 再び出会うことができた五精霊の皆々へ、刹那とルナ、花音とリュートが口々に挨拶を交わし、場は賑わいを増していく。