リアクション
○ ○ ○ 途中から離宮対策本部に加わり、関わってきた冒険屋のレン・オズワルド(れん・おずわるど)は、離宮に下りることを望まなかった。 多くは語らずとも、ソフィア・フリークスという人間を、彼なりに気にかけてきた。 そして、アレナ・ミセファヌス(あれな・みせふぁぬす)のことも。 彼は彼女を地上に戻すために、仲間と、ラズィーヤと共に、方法を探し求めてきた。 だけれど、ソフィアを、アレナを迎えに行く者は、自分である必要はない。 再び離宮に下りる者達を。 忘れ物を取りに行く者達を、レンはそっと支え、見守ることにした。 (滞在時間は2時間か……短いな) 限られた時間で出来ることは少ない。 それでも多くの人間が離宮に降りることを望んだのは、彼らにとって忘れえぬモノが其処にあるからだ。 他の人間からすれば些細なことかもしれない。 しかし行動することで自分の心に決着がつくのであれば、それだけで行く価値はあるだろう。 準備を進める者達を見ながら、レンはそう考える。 レンは、無言で彼らが帰還した時の為の、準備を進めていく。 地上では、彼らが戻るまでの間に、数十時間の時が流れるだろう。 「こちらの時計を、1人、1つずつ持って行って下さい」 レンのパートナー、メティス・ボルト(めてぃす・ぼると)が、時計を持って走ってきた。 ラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)に頼み、借り受けた軍用の時計だ。 「時間を正確に合わせて下さい」 メティスは離宮に向かう者全員に時計を渡して、皆に真剣な目を向ける。 「離宮の封印は何度も解けるものではありません。むしろ完全に封じるつもりで向かって下さい」 それから、少し心配気に皆を見つめる。 「集合時間を過ぎて置き去りになるなんて、本末転倒なことにはならないよう注意して下さいね」 離宮に下りることを希望した者たちの目的と、移動先についても確認してある。 多くの者が、亡くなった人達、離宮に残っている人達を、連れて帰ることを望んでいた。 「それでは皆さん、どうかご無事で」 そう言って、メティスは皆から離れる。 レンは遠くから何も言わずに見守っている――。 離宮からの合図を受けた後。 契約者達は、テレポートで離宮へと下りていった。 戦いの傷跡がそのまま残っている、悲しみの地へと。 |
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