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イコン博覧会(ゴチメイ隊が行く)

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イコン博覧会(ゴチメイ隊が行く)
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「はい、最後は百合園女学院のブースですぅ」
 各学校のメイン展示の最後として、メイベル・ポーターたちが古巣の百合園女学院のブースへとぞろぞろやってきた。
「い、いらっしゃいませ……。た、ただいま、こちらのブースでは、キラーラビットを展示しています。他にも、個人ブースでも、ウサちゃんの……展示を行っていまーす」
 ちょっともじもじしながら、八薙かりんが頑張って呼び込みをしていた。葦原めいと同じく、身体にぴっちりとしたラビット隊パイロットスーツを着ている。
 キラーラビットは、エリュシオン帝国から技術供与を受けてく作られたイコンである。最近では、鹵獲したヴァラヌスもちらほら見かけるようになったが、エリュシオン製のイコンの特徴は、大型の動物型イコンであるということだ。
 これは、イコン技術がほとんど発展を見なかった帝国において、小型化が進まなかったことが大きい。だが、その分ペイロードは大きく、大型の火器を搭載することが可能となっている。もともと、帝国はドラゴンやワイバーンを擁する竜騎士団が主力であり、イコンに取って代わっている。最近ではユニコーンドラゴネットのような巨大生物が、イコンと同等の戦力として広まりつつもある。
 キラーラビットは、四足歩行型のイコンであり、兎型の機体の腿部に二箇所ずつ、左右で四箇所のハードポイントを持ち、背部にも大型火器の設置が可能である。桜井 静香(さくらい・しずか)の専用機には、大型のニンジンキャノンが搭載されている。耳部も換装が可能であり、武装次第では武器庫のようなイコンも作ることができる。
 今回ここに展示はされていないが、ヴァラヌスは二足歩行の恐竜型イコンで、長い尾を持ち、水中行動が可能なことが大きな特徴である。背部に大型火器を搭載でき、クローによる格闘も可能である。ただし、地球の技術が流入する以前の旧型イコンという感は否めず、新型の開発が急がれてもいるようだ。
 他にも、鏖殺寺院の開発した機体も存在する。
 シュバルツ・フリーゲは指揮官用の機体で、イーグリットに相当する。肩部のフライトユニットの他、背部に大型ブースターを有し、胴部横から上方にのびたチューブが特徴的である。主に実体弾の兵器を使用する。
 シュメッターリングはイーグリット・アサルトに相当し、ブースターを排した代わりにやや脚部を強化していた。チューブは臀部から背面下方へ二本が確認されている。
「ニンジン背負ってるなんて、馬鹿じゃないの?」
 呆れたように、フェルクレールト・フリューゲルが言った。
「キラーラビットって、エリュシオンから提供されたわけじゃない? そのへんの整備マニュアルとかパーツ交換に必要な部品の生産とかはどうなってるの? さすがにエリュシオンから部品の輸入しているわけじゃないでしょ?」
「えーっと、えーっと、すいません、すいません、よく分かりません」
 十七夜リオに矢継ぎ早に質問された泉 美緒(いずみ・みお)が、半べそで謝りだした。
 彼女は知らないだろうが、実際には百合園女学院がヒラニプラなどに部品は発注している。そのへんは、帝国なしでもメンテナンスできるようにコア部分以外はシャンバラ製で量産しているわけだ。その証拠に、帝国の所有するイコンにキラーラビットは公には含まれていない。現在では、ほぼ帝国とは関係なく量産体制が整っている。
「確かに、キラーラビットは明らかにデザインが違うな」
「こだわりますね、デザインに」
「いや、重要だぞ。格好いいにこしたことは……、いや、イコンの形状は、運用に大きな影響を及ぼすからな。格闘や射撃、あるいは突撃や支援など、意外に重要なんだぞ」
 トマス・ファーニナルは、そうミカエラ・ウォーレンシュタットに説明した。
 その近くでは、泉美緒に突撃しようとしたロイ・グラードを事前に阻止したアイアンさち子が、ずるずると獲物を引きずっていた。
「それにしても、かわいいのか凶暴なのか、よく分からないイコンだわね」
 見学に来ていた天城 紗理華(あまぎ・さりか)が、しみじみとキラーラビットを見て言った。
「あら、いいんじゃないでしょうか。アルマインを乗せて疾走するなんていいかもしれませんよ」
「兎よ、兎。ピョンピョンと跳ねたとたんに飛ばされちゃうわよ」
 呆れたように、天城紗理華がアリアス・ジェイリル(ありあす・じぇいりる)に言った。
「かわいいかも……」
 ちょっと物欲しそうに、物陰からエメラルドがじーっとキラーラビットを見つめた。