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聖戦のオラトリオ ~転生~ 第1回

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聖戦のオラトリオ ~転生~ 第1回

リアクション


(・生身での正攻法)


 百を超えるイコンが戦いを繰り広げている中、その身一つで舞台へ上がろうとする者がいた。
「これだけの数ならば、退屈しないで済みそうですね」
 牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)である。
 部隊最後尾のイコンにしがみつき、ここウクライナまでやってきたのである。彼女達の姿はイコンのセンサーには反応しない。頭部カメラの死角にさえいれば、その存在を悟られることはない。
「サロゲート・エイコーンを身に纏うことが絶対の有利でないと知らしめてあげましょう……全員、突撃!」
「イエス・マイロード」
「了解した」
「きゃはは、思いっきり遊んでいいんだね」
 パートナーであるナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)シーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)ラズン・カプリッチオ(らずん・かぷりっちお)と共に寺院イコンへと飛び込んでいく。
 アルコリアは対イコン用武器であるレーザーブレード【S・T・K】を構え、セントフリューガーで空を駆ける。また、ナコトがエターナルコメットに跨り、さらに空飛ぶ魔法で全員の飛行補助を行っている。
 イコンほどの速度は出ないまでも、空中戦を行うには十分だ。
 まずは、小手調べ。
 発進してからそれほど経っていないであろう、低高度にいるシュメッターリンクへと、真正面から接近する。
 そのままレーザーブレードを胸部装甲に突き立て、
「一刀……両断っ!」
勢いよく――振り下ろした。
 ダメージを負った敵の機体は制御を失い、地面に落下していく。
 だが、それによって敵は「不可解な何か」が起こっていることに気付いたようだ。
(編隊を組んできますか。ならば……)
 まとめて薙ぐだけだ。
 敵機の眼前を駆け抜けるようにして、絶零斬を繰り出す。それだけでは完全に撃墜することは出来ない。
 装甲が斬り裂かれたのを確認し、ナコトがファイアストームで機体を包み込む。
「照覧あれ、我が力」
 イコンの装甲特性から、ただの炎で機体を焼き払うのは困難だ。だが、破損した箇所に熱が加わり、内部を焼かれたらどうなるか。
 敵機が轟音を立て、爆発する。それに巻き込まれ、三機の機体が誘爆した。
 これで撃破数はシュメッターリンク五機。
「きゃははっ、かわいそう痛くないなんて! 生きてる実感がないのね! 同じ人に纏われるモノなのに!」
 シュバルツ・フリーゲの頭部の背後に回りこんでいたラズンが龍の波動を飛ばした後、そのまま鳳凰の拳を叩き込んでカメラごと破壊する。
 そしてアルコリアはその上から一気にレーザーブレードを振り下ろし、機体を両断した。
「ラズンちゃん、ここからは全力でいきますよ」
 ラズンを纏い、別の敵機へと向き直る。
「この剣が貴方達の墓標です」
 チャージブレイクで、力を溜める。
 神速。
 守りを完全に捨て、全速力で敵機の懐へと飛び込んでいく。
 その間に、ナコトがアルコリアの目標とする機体へと天のいかずちを放つ。頭部カメラを破壊し、目視させないようにするためだ。
 そのままそのシュメッターリンクに真空波を叩き込み、一気に斬り捨てる。
 だが、そろそろ敵も彼女の存在を感知していた。
 シュバルツ・フリーゲの機関銃からの銃撃が彼女へと向けられる。
「ナコちゃん!」
「イエス・マイロード」
 ナコトに清浄化を施してもらい、迅速に防御へと移る。
 ブレイドガード、残心で機関銃の弾丸を弾く。その弾いた弾丸を利用し、連鎖的に銃弾を無効化していく。
 いくらアルコリアが強くとも、イコン兵装による攻撃が直撃するのは危険だ。
 相手は単機で彼女と向き合う。
「立ち向かうなら……殺します。逃げるなら……止める術がありませんね。さあ、どうしますか?」
 勧告するが、彼女の声が敵機に聞こえているのかは分からない。
 が、敵前逃亡する気はないようだ。
「やはり、そうでなくは!」
 銃撃が行われ、同じ要領でアルコリアは対処する。
 それでも弾幕の全てを落とせるわけではない。
 アルコリアの前にシーマが出る。オートガード、オートバリアで守りを固めた上で、英雄の盾を構えた。
「イコンを駆る者に驕りがあるとすれば」
 機関銃の前に立ちはだかり、
「――生身の相手なら、当てれば一撃で仕留められると思っていることだ!」
 銃弾を受け止める。
「アル、今だ!」
 無論、受け止められるとはいえ、それだけで盾は消し飛ぶ、同じ手は二度使うことは出来ない。
 だが、攻撃を防がれたことで、相手に動揺が生まれたのは確かだ。
「お眠りなさい、この黒い十字架の許で」
 機体を貫いた上で、チャージブレイクで溜めた力を解放し――動力炉に直接真空波を叩き込む。
 内側から機体は音を立て爆ぜた。
 残骸は跡形も残らない。