リアクション
「あれ? こっちはほぼ空……みたいだな」
大熊や聖と別れて軍事基地へ向かったウォーレン・アルベルタ(うぉーれん・あるべるた)は、木の上から基地の様子を見て首をひねった。放棄されたわけでもなさそうだが、当然居るだろうと思っていた飛龍の姿がない。
「俺たちが来ることを予測して、どこかへ隠してるっていう風でもなさそうだ」
狼の姿になってウォーレンに抱っこされた清 時尭(せい・ときあき)が、鼻をひくひく動かしながら言う。
「て言うことは……どっかへ出撃したってことか?」
ウォーレンは顔色を変えた。清を放り出して登っていた木から滑り降りる。
「おいっ! 俺は狼なんだぞ! 猫じゃないんだから高いとこからいきなり放り出すなよ!」
放り出された先にあった木を蹴って落ちる向きを変え、減速して、どうにか無事に地面に降りた清が叫ぶ。
「すまんっ! でも、出撃した先がシクニカなんじゃないかと思うと……」
ウォーレンは両手をあわせて拝む仕草をしながら清に謝った。
「……何あれ。龍なんて一頭も居ないじゃない」
ウォーレンたちがシクニカに向かった後で軍事基地の様子を偵察に来たシンシア・ランバート(しんしあ・らんばーと)も、あまりにも兵の数が少ない基地の様子を見て首を傾げた。
「これなら、楽勝で潰せそうだね」
一緒に偵察に来たジョージ・ブリッジス・ロドネー(じょーじ・ぶりっじすろどねー)が囁く。
「そうね。さくっとやっちゃいましょ」
二人は携帯でパートナーのウィルフレッド・マスターズに連絡を取った。軍港を制圧した仲間たちが到着するのを待って、小型飛空艇から爆撃を開始する。
ウォーレンが、そしてシンシアとジョージが見た通り、軍事基地には最小限の守備兵しか残っていなかった。空から攻撃されて、軍事基地はあっけなく陥落した。
「あとは、潔くクィクモの本営の処分を待つだけね」
覚悟を決めた表情で、ローザマリアは言った。
「海軍の今後についての上申書を作成したんだが、持って行って貰い難い雰囲気だな」
ジェンナーロがため息をつく。
「……一応、預かっておくわ。私が処分されたら、その後の海軍の処遇も変わるかも知れないし」
そっと微笑むローザマリアの手を、やっと再会できたエリュシカが握る。