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第四師団 コンロン出兵篇(最終回)

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第四師団 コンロン出兵篇(最終回)

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世界樹の問いかけ
 
 しんと静まり返った空間だった。
 上も下も、右も左もわからない。
 ただただ、静寂と無限に広がる闇がそこにはあった。
 
 * * * 
 
「ここは……?」
 宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)は目を凝らし周囲を見回す。
 が、映るのは暗闇ばかりだ。
「お姉さま、ご無事ですか?」
「母様、ここは一体? メニエスたちは……」
「みな、無事のようだな。ここには我々以外の気配はないようだ」
 直ぐそばから、三人のパートナーたち。
 セリエ・パウエル(せりえ・ぱうえる)同人誌 静かな秘め事(どうじんし・しずかなひめごと)湖の騎士 ランスロット(みずうみのきし・らんすろっと)の気配を感じて祥子は安堵した。
「とりあえず、みんな無事で良かったわ。――さぁ、ここまで来たら腹をくくるしかないわね」
 
 
「ふぅん……面白い趣向じゃないか」
 メニエス・レイン(めにえす・れいん)はそう言って、口元に笑みを浮かべた。
「どうやら、個別に試練とやらを受けさせるようですわね」
 周囲の気配を探っていたミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと)は自分たちの他に気配がないことを確かめると警戒を緩めた。
「あはは! しれんいいなー。おねーちゃん頑張ってね〜!」
 なかなかない状況が面白いのか。ロザリアス・レミーナ(ろざりあす・れみーな)はけらけらと声を立てて笑った。
「ふふ。面白いじゃないか。――さぁ、世界樹、きなよ」
 
 
 ジークフリート・ベルンハルト(じーくふりーと・べるんはると)の笑いが闇を震わせた。
「ふはははは。やったぞ。とりあえず、この魔王にも挑む資格があるということだ!!」
「資格も何も世界樹に相応しいの魔王様をおいて他にはありません! なのに!!」
 シオン・ブランシュ(しおん・ぶらんしゅ)が不満気に頬を膨らませた横で、ノストラダムス・大預言書(のすとらだむす・だいよげんしょ)は預言書を紐解く。
「ジーク――この結末は自分にもわからないのだよ。だが――きっと」
「敵や邪魔するものが来ないとも限らん。――邪魔はさせん。だから、失望させてくれるなよ、“魔王”」
 クリームヒルト・ブルグント(くりーむひると・ぶるぐんと)はそう言って武器を構えた。
「ふははは。世界樹は魔王たる俺に相応しいことを教えてやろう」
 
 
 心地良い――果てしのない闇に包まれてながらブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)は満足気に微笑んだ。
 教導団に捕虜にされた時はどうなることかと思ったが、世界樹に接触できた今となってはそんなことはどうでもいい。
「ふふふふ。……さぁ、世界樹よ。西王母よ。ボクと契約しよう。今度こそ――」
 どこか陶酔しきったように呟くブルタ。
 その背後には試練を見守るためにやってきた彼の三人のパートナー。
 それぞれにタイプの違う、だが、人智を超えた妖艶さを孕んだ――ステンノーラ・グライアイ(すてんのーら・ぐらいあい)ジル・ドナヒュー(じる・どなひゅー)スクリミール・ミュルミドーン(すくりみーる・みゅるみどーん)が静かに佇んでいた。
 
 
「ちょっと、これってどういうことよ?」
 ナイン・カロッサ(ないん・かろっさ)は暗闇に閉ざされた空間で途方に暮れていた。
 確かに先行して世界樹を目指したが、こんなことは想定外だ。
「……参ったわね。とにかく、ここを出る方法を見つけないと」
 
 * * * 
 
 トン――軽やかな音がした。
 固い地面だと思っていた足元に波紋が広がった。
 波紋は淡い光を放ち、闇に閉ざされた世界が照らされる。
 地面だと思っていたのは薄い膜のようなものだと気付く。
 どういう仕掛けなのか、力を入れても破れることはなかった。
 音のした方を見れば――白い炎が立ち上る。
 いや、炎ではない。
 それは光を放つ――この世のものとは思われぬ整った顔立ちの人物。
 
 男の前には女が。
 女の前には男が。
 
「貴方は?」
「あなたは?」
「お前は?」
「キミは?」
「あんたは?」
 
 ――誰?
 
 五人はそれぞれに問いかける。
 答えはない。
 ただ、女は――
 ただ、男は――
 笑みを浮かべて、手を差し出した。
 
「「「「「わたくしと踊って頂けませんか?」」」」」