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リアクション
第四章 洛外の戦い4
「どうしたんだ。鬼鎧が……雷炎が急に……動きがよくなった?」
鬼鎧で防衛戦にあたっていたテンサ・トランブル(てんさ・とらんぶる)は、直ぐにその異変に気がついた。
同乗しているマホロバ人の千石 皐月(せんごく・さつき)もすでに感じ取っている。
「そうですね。何か……鬼鎧の意思のようなものが働いているように思います。どうしたのでしょうか」
鬼刀を振り回す雷炎が、何やら喜んでいるようなのだ。
まるで水を得た魚のように駆け巡っている。
「ここで……味方を攻撃すると……混乱するよな」
ぼそっと呟くテンサ。
皐月は慌てて、テンサの台詞を軌道修正した。
「そ、そうですわね……だからこそ、周囲をよく見ておかないと……って、いきなり手槍を飛ばしてくんな! 龍騎士共、イチビリちゃうど、ワレ!」
龍騎士からの攻撃で雷炎に傷を受けた皐月は、急に人が変わったようにがなりはじめた。
「変な動きをしている鬼鎧だけど、大丈夫かな」
セルマ・アリス(せるま・ありす)がイコンジョバンニを通じて、テンサたち雷炎を見ている。
強化人間リンゼイ・アリス(りんぜい・ありす)が分析をはじめていた。
「セル、この鬼鎧、さっきよりパワーが増してる気がします。スピードも、何かが吹っ切れたみたいに……葦原は特別な装置でも開発したんでしょうか?」
「葦原が? さあ……新型の鬼鎧を開発したってことしかきいてないけどな」と、セルマ。
「おかしい動きをする機体は、味方であろうと撃って構わないって言われてるけど。【機晶ロケットランチャー】で撃ち落としても平気だよね?」
ゆる族ミリィ・アメアラ(みりぃ・あめあら)は地上で颯爽と武器を構えている。
「ワタシとシャオは生身だから、イコンの攻撃を受けるようなことになったらひとたまりもないしね!」
すでに起動は捉えている。撃つ気まんまんのミリィ。
中国古典 『老子道徳経』(ちゅうごくこてん・ろうしどうとくきょう)も怪しい動きのイコンに注視していたが、あの鬼鎧は違うような気がしていた。
「確かにはしゃいでるように見えるけど、悪意があるようには見えないわ。もしかしたら、搭乗者の具合が悪いだけかも。イコンの操縦には気も体力も使うからよくあることだしね……あ、ミリィ待って!!」
『老子道徳経』が止めるより先に、ミリィは発射装置を押していた。
弾道は弧を描いて飛んでいく。
雷炎に乗る皐月が、いち早く察した。
「まずい、テンサ避けて!」
「無理だろ、そんなの! 鬼鎧は急に止まれないって!」
テンサが叫び、もうダメかと思った瞬間、御剣 紫音(みつるぎ・しおん)のディープ・ブルーが、マジックカノンで撃ち落としていた。
「危なかったな、大丈夫か」
紫音が呼びかける。
どうやら鬼鎧の二人は無事のようだ。
「ごめんね、変な動きをしてたから、俺の味方が撃ったんだよ」
と、セルマが詫びている。
同じようにミリィたちも困惑気味だ。
「いや、戦場では何が起こってもおかしくない。この場合はしょうがない」
紫音が冷静にそう判断を下すと、雷炎の中からテンサが言った。
「さっきからこの鬼鎧、やけに威勢が良くてね。すまん」
「鬼鎧が……これはまたデータがとれますぇ」
情報管制を務める綾小路 風花(あやのこうじ・ふうか)が、情報収集に勤しんでいる。
これは実戦でとれる貴重なデータである。
紫音は頷いた。
「確かにな。しかし、鬼鎧は面白いな。本当に生きているみたいだ!」
天御柱学院生の紫音や風花にとってみれば、変則的なデータをたたき出す鬼鎧は不安定で兵器としてどうなのだろうという疑問もあった。
突然に機動性を発揮する鬼鎧は予測もつかず、かなりの荒武者のようだ。
それでも、いいようのない魅力が鬼鎧にはあるように思えた。
「さて、それでは鬼鎧の機動性を確認させてもらおう。俺達は、手近なやつから打ち落とす!」
ディープ・ブルーは戦闘態勢に入った。
「マホロバは、お前たちを必要としてない!この地から手を引け!」
紫音は反撃に転じていた。
卍卍卍
「……幕府軍。鬼鎧を揃えてきたのか」
加賀 北斗(かが・ほくと)が第四竜騎士団と瑞穂軍から急ぎの伝令を受けていた。
彼は、頭上にあるマホロバの軍艦ワタツミを忌々しそうに見上げる。
「いつの間にこんなものを作って、運んできたんだ。ただのハリボテではないのか」
空中戦では龍騎士が有利である。
これは変わらない。
しかし、意外なことにその空中戦を、幕府軍が善戦していた。
「扶桑の都を占領する前に長引けば面倒だが……何を考えている、
蒼の審問官 正識(あおのしんもんかん・せしる)?」
正識は扶桑へ向かったまま連絡はない。
北斗も扶桑の周辺で起きようとしている、不穏な空気を感じていた。
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