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リアクション
第七章 遊郭炎上4
マホロバ城は夜も眠らぬ城となっていた。
扶桑の噴花は多くの命が扶桑に召されるなど、まだの実情は把握できないほどであったが幕府や各地の藩はかろうじて統治機構を維持できていた。
気がかりは、扶桑の都へ行ったという家臣や大台所樹龍院 白姫(きりゅうりん・しろひめ)、貞継公の御花実たちで、無事とのことだったが未だ戻ってはいない。
噴花で空路が限られ、安全のために陸路を使っているとのことだった。
将軍後継職鬼城 慶吉(きじょう・よしき)は将軍白継(しろつぐ)が無傷であるということを喜んでいたが、一方で、自身に課せられた使命を重く受け止めていた。
「……貞康(さだやす)公。私にこのようなことを託されるか……」
慶吉は白い巻物と黒い印籠を交互に眺めていた。
彼は立ち上がり、城をこっそりと抜け出す。
マホロバ城内にある小高い山――鬼たちが監禁されていた方向とは正反対――を目指していた。
小さな祠があり、慶吉は印籠を取り出す。
印籠は祠のくぼみにピタリはまり、吸い込まれていった。
地下の方で何かが動く音がする。
慶吉は祠の中を進み、そして重厚な扉の前に立った。
「それは何? ははあん、さては逢引! 先をこされたか!?」
「く、クセモノ! ……獣?!」
慶吉は心臓が飛び出すかというほど驚き、後ろに飛び退いた。
声をかけたクセモノ南臣 光一郎(みなみおみ・こういちろう)は口笛を吹きながら朱辺虎衆の面を外した。
「ああ、悪いネ。俺様、夜の猟官活動中なのよ。それで夜這い……いや、お勤めにハゲもうと思ったら、ここへ出くわしたわけ」
「貴様らは一体……今、見たことは決して口外してはならん」
「俺様の口止め料は高くつくよ? ね、鯉くん!」
光一郎のパートナーオットー・ハーマン(おっとー・はーまん)も目を光らせている。
「貴殿が何をされようとしてるかしらぬが、それがしが力になろう……あ、光一郎、勝手に中に入るな!」
慶吉やオットーの話も聞かず、光一郎は蔵に足を踏み入れた。
まばゆい光が彼の視界を直撃する。
「眩しい……これは罠じゃん?!」
「罠ではない。これは、二千年間貯めてこられた黄金だ」
「黄金! 金!?」
オットーは魚眼を白黒させている。
「遊郭からここへは黄金を運び入れることはできても、出すことはできなかった。貞康公の四つの鍵の力に守られていた。しかし、その力も消え結界は解かれた。この印籠は蔵の鍵。今が、この黄金を使うとき――それが、貞康公の最後の遺言」
慶吉は蔵に敷き詰められた黄金を背に刀を抜いた。
「我ら鬼城御三家は鬼城の血の監視ともう一つ、鬼城家の埋蔵金を守ることが使命。有事の際にこの金を使い、マホロバの民を救えとの仰せだ。しかし、賊に渡す金はびた一文もない! ここで果てるがいい!」
慶吉は刀を振るい、光一郎に襲いかかる。
「ちょっと待った! こんなヘソクリ、どうやって使う気じゃん? 闇雲にばら蒔いても、無駄金になるだけじゃん?」
「うるさい、だまれ!」
「俺様に考えがある。マホロバは例のシャンバラ条約で国内の反発が高いじゃん。開国派が見込んでいた歳入の目減り分を、しばらくこいつで補い、国内経済が成長するまで、計画的な経済安定を目指すじゃん。もちろん、埋蔵金はマホロバの扶桑噴花の復興に真っ先に当てられるべきではあるけどナ!」
光一郎に続いて、オットーも意見を述べる。
「通行通商条約の輸出入制限緩和には慎重にですぞ、慶吉様。マホロバは金本位制。下手をすれば、金の流出を防ぎきれん。この黄金の蔵を見て、それがし確信した。貞康公も、黄金がマホロバの武器になると考えておったのではないか。確かに、数千年後に紙幣の紙切れなど、何の役にも立たんしな。このマホロバの遺産を元に、貿易に強いマホロバを。国内産業の保護を。開国を決めたときから、戦いは既に始まっているですぞ!」
慶吉は刀の手を止め、ぽかんと彼らを見た。
異国の見聞は多少あるという自覚はあっても、その渦中に放り込まれるとなると、不安がよぎった。
慶吉は刀を鞘に収めると、光一郎たちに言った。
「もっと、くわしく話してくれるか。私は、マホロバはこれからどうすればいい」
卍卍卍
扶桑の噴花は、これまでのマホロバの人々を一変させていた。
幕府や各地の藩は、かろうじて統治機構を維持している状態であった。
幕府・葦原軍は扶桑の都を守る必要最低限の人数を残し、瑞穂藩は大部分が撤退している。
しかし、七龍騎士
蒼の審問官 正識(あおのしんもんかん・せしる)率いる第四龍騎士団はこの地に留まり、最後の戦いを挑もうとしている。
正識は幕府・葦原軍を追いかけるように、マホロバ城を目指していた。
そのころ、扶桑の都から命からがら戻ってきた人々の中に、
鬼城 貞継(きじょう・さだつぐ)がいた。
奇しくも、貞康(さだやす)公が最期に残した遺言により、黄金の蔵が発見された翌日のことだった。
そして、火災により焼け野原となった東雲遊郭。
マホロバの復興ために、多くの人々の力が必要とされていた――
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担当マスターより
▼担当マスター
かの
▼マスターコメント
こんにちは、ゲームマスターのかのです。
この度は公開が大変遅れました。
おまたせしてしまい本当に申し訳ありません。
プレイヤーの皆様、運営スタッフには、ご迷惑をおかけしてしまい申し訳なく思っています。
今後につきまして、別途マスターページへ記載させていただきます。
アクションは総合的に判断していますが、『マニュアル』に準拠しています。
ダブルアクションやグループアクションはご注意ください。
『托卵』によって『天鬼神の血』を受けた方は、今回の噴花によって力を扶桑に返すことで『天鬼神の血』のリスクは無くなりました。
また、『天鬼神の血』を受け継ぐ子に関しては、子供の鬼の力も返す場合は、『鬼』の兆候が出るかのサイコロチェックも必要なくなります。
鬼の力を残す方は、引き続き挨拶掲示板にて、サイコロの出目の確認をしてください。
ゾロ目で『鬼』化します。
今回のシナリオ中に遊郭などでの動いた金額は、キャラクターデータには反映してませんが、私のほうで管理しています。
個別メッセージで残金をお知らせしてますので、そちらをご参照ください。
今回動いた方のみ記載しています。
違っている場合は、お手数ですが次回アクションでお知らせください。
※所持金は平成23年6月28日のキャラクターデータを使用してます。
また、給金前借り年季奉公のため、遊郭で働いてる方への給金は初回のみ、二十大判を一律加算させていただいてます。
遊郭からあがる場合は、最低でも二十大判プラスアルファ(ランクによる)の金額が必要になります。
※桜木に取り込まれている(SFM0002869)秋葉 つかさ、(SFL0002870)ヴァレリー・ウェイン、(SFL0034733)蝕装帯 バイアセートは扶桑の噴花によって解放されました。
【NPC一覧】
鬼城貞継(きじょう・さだつぐ)……マホロバ前将軍。扶桑の噴花を止めるため将軍職を白継に譲ったが、廃人となる。
房姫(ふさひめ)……葦原藩姫。大奥入りし、貞継の意思を継ぐと約束した。
睦姫(ちかひめ)……瑞穂藩姫。行方知れず。貞継との間に子「雪千架」がいる。
ハイナ・ウィルソン……葦原明倫館総奉行(=校長)。房姫のパートナー
ティファニー・ジーン……葦原葦原明倫館・元分校長。将軍家の秘密を流したため、追われる身となった。現在は『東雲遊郭』にて遊女見習い。
鬼城慶吉(きじょう・よしき)……鬼城御三家の一人。将軍後見職。
白継(しろつぐ)……マホロバ将軍。貞継と(SFM0033439) 樹龍院 白姫の子。
穂高(ほだか)……貞継と(SFM0034290) ファトラ・シャクティモーネの子
明継(あきつぐ)……貞継と(SFM0015871)葛葉 明の子
貞嗣(さだつぐ)……貞継と(SFM0002869)秋葉 つかさの子
珠寿姫(すずひめ)……貞継と(SFM0016822)度会 鈴鹿の子
緋莉姫(あかりひめ)……貞継と(SFM0032573)水心子 緋雨の子
雪千架(ゆきちか)……貞継と睦姫の子
蒼の審問官・正識(あおのもんしんかん・せしる)……七龍騎士の一人。瑞穂藩主。マホロバ名では(まさおり)
日数谷現示(ひかずやげんじ)……瑞穂藩士。瑞穂藩を追われ、流浪している。
瑞穂弘道館分校……葦原明倫館分校と同じで、マホロバ内作られた瑞穂藩分校
胡蝶(てふ)……ティファニー・ジーンの源氏名
明仄(あけほの)……『竜胆屋(りんどうや)』No.1の売れっ子。姉遊女。ランクは天神。
海蜘(うみぐも)……妓楼(ぎろう)『竜胆屋(りんどうや)』楼主
正識(ごしき)……美形の影蝋。正識の源氏名
【付録】
●瑞穂藩(みずほはん)
マホロバ西国一の大大名。
二千五百年前の戦国時代、鬼城・葦原に破れ、西国に追いやられた。
現在は若き藩主、正識(マホロバ読みでは『まさおり』)が治めている。
瑞穂藩はエリュシオン帝国との貿易により栄え、その文化や風土の影響を受けてきた。
新しい藩主正識はエリュシオンのユグドラシルに強い感銘を受け、七龍騎士として働いており、臣下にもそれが影響されている。
●暁津藩(あきつはん)
マホロバ西国の藩のひとつ。
二千五百年前の天下二分の戦いでは鬼城家につき、「戦功大なり」の褒章に預かった。
現在まで続く大名として優遇されてきたが、藩政改革は進んでいない。
暁津勤王党(あきつきんのうとう)という一派が藩内で一大勢力となり、扶桑の都で活動を行っている。
しかし最近では、その反体制運動に懐疑的な複数の同志達が決別、脱藩者を出している。
●マホロバ二大遊郭
東雲(しののめ)遊郭……マホロバ城下にある幕府による唯一公許の遊女街。幕府の規制もあり、出入口は大門のみ。
水波羅(みずはら)遊郭……扶桑の都にある伝統ある花街。一般に出入りは自由。
●遊女の階級
太夫(たゆう)……最高位の遊女。遊郭における伝説的存在
天神(てんじん)……高級遊女
花扇(かおう)……一人前の遊女
雛妓(ひよこ)……見習い遊女。
的矢女郎(てきやじょろう)……最下級の遊女。病に冒されたものも多く、あたると死ぬという意味
芸者・舞子(げいしゃ・まいこ)……遊興時の舞や三味線、唄などを行うもの。身体は売らない
楼主(ろうしゅ)……遊女屋の主人
※『花魁(おいらん)』と呼ぶのは『花扇(かおう)』以上の遊女
『影蝋(かげろう)』……男娼。客は男だけでなく女もいる
●花魁道中(おいらん どうちゅう)
花魁が雛妓などの見習いを引き連れて揚屋や茶屋まで練り歩くこと
●揚代(花代)
遊女を呼んで遊ぶ時の代金のこと。
高級花魁(太夫)と一回遊ぶのに揚げ代、人数分の料理代+酒代、ご祝儀などで100〜200万円前後、三度通って馴染みになるまでには1,000万円はかかる。。
座敷で芸者や舞子などをたくさん呼んで、賑やかに騒ぐ金払いの良い客はお大尽(おだいじん)として喜ばれる。
『天神(てんじん)』で10〜20万円程度。
『花扇(かせん)』で5〜6万円程度。
一番安い『的矢女郎』は3,000〜6,000円程度。
●身請け
遊女の身代金や借金を支払って勤めを終えさせること。
相場は、
花扇で三百小判〜百大判(300万〜1000万円)
天神で三百大判(3,000万円)
太夫だと七百大判(7,000万円)
●マホロバの通貨
マホロバには大判・小判(金貨)、銀(銀貨)、銅(銅貨)がある。
一銅=1円
一銀=1,000円
一小判=10,000円
一大判=100,000円
(参考)1ゴルダ=100円〜500円