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まほろば遊郭譚 最終回/全四回

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まほろば遊郭譚 最終回/全四回
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第六章 黄金の国マホロバ3

 ――TOKYO CITY――

「ねえ、あっちゃん。今日の三限の授業アテられそうなの。お昼、データうつさせて!」
「またあ、しょうがないな」
 あっちゃんと呼ばれた少女は、背負ったリュックから小型PCを取り出す。
「あれ……桜の花びら。こんな季節に?」
 彼女たちの頭上には季節外れの花びらが舞っている。
「変だよね、でもきれい」
 そう、変だ。
 でも、どこかで、これと同じものを見たことあるような気がする。
 季節はずれの桜の花。
 大きな桜の樹から一斉に噴きだした――
 背中に十文字の槍を背負った男の姿。
「ありがとう。ん、どうしたの? ぼーっとして、誰かいた?」
「うん、さっき……ちょっとカッコイイ人がいた、かも」
「え、どこどこ!?」
 友人がキョロキョロと探すのと見て、『あさ』はぷっと笑った。
 『愛に咲く』と書いて『あさ』。
 『あさ』自身もこの名前を気に入っている。
「アタシの見間違えかもしれない。だって、変な槍みたいの持ってたし……でも、すごくカッコ良かったな……その人だけじゃなく、他にもいたよ。刀持ったり着物着たり……。あの人たち何だったんだろう?」
「えー、ずるい。なんで? 近くでコスプレイヤーの撮影会でもあったのかな。私も見たかったー」
 いつもの日常。
 いつもの光景。
 日本は今日も……平和かもしれない。
 『あさ』はスカートのポケットから自転車の鍵を取り出す。
 小さなコインのキーホルダーがちゃりんと鳴った。
 かなりの年季が入ったものだ。
「それ、可愛いよね。ピカピカ光るし、本物の『金』みたい」
「うん、どうかな。ずっと昔から家にあったってきいたけど、不思議とこれを握ってると落ち着くの。アタシのお守りみたいなものよ」
 ふと、地面に落ちていた新聞に目が止まった。
 電子媒体が発達した今日では、紙を見るほうが貴重だ。
「……ナニナニ、『埋蔵金伝説』? 『発掘調査隊募集』だって。今時、こんなの探してる人がいるんだ……って、あっちゃん何拾ってんの!」
「面白そうじゃない。夏休み暇だし、探してみようよ」
 怪しさバツグンの記事だが、なぜか『あさ』は惹きつけられた。
 もし、見つけられたら、困ってる人に寄付しよう。
 埋めた人がどういう気持ちで隠したかはわからないけど、ありがたく使わせてもらおう。
 ――あれ? 自分でも気づかないうちに考古マニアにでもなったのだろうか。
 それとも慈善家?
 夏の強烈な日差しが眩しい。
 この光に輝く黄金を想像するだけで心踊った。
「やだ……そんな柄じゃないよ。アタシ、どうしちゃったんだろう」
 『あさ』は頭を抱え込む。
 予鈴が聞こえてきた。
「急がないとお昼終わっちゃう。行くよー」
「ああん、待ってよー!」
 女の子たちはパタパタと足音を立てて去っていく。
 今日もまた、暑くなりそうな一日だった。