リアクション
* * * (あれが、地球側の代表か) 警備役の一人として着任していた橘 恭司(たちばな・きょうじ)は、六人の男女の姿を捉えた。 「こちらへ」 彼女らを控え室まで誘導する。 その間、常に周囲に気を配ることを忘れない。 推測するに、シャンバラはF.R.A.G.と何らかの協議を行おうとしている。何かあった場合、それが全て台無しになりかねないからだ。 控え室の前で警備に当たっていたハーヴィット・カンタベリー(はーびっと・かんたべりー)と入れ替わりで持ち場につく。 部屋の中に入ってもらう前に、室内を隈なく調べ上げる。ハーヴィットが何か仕掛けていないとは限らないからだ。 とはいえ、監視カメラも回っている。彼が不審な動きをしていたらすぐに分かるだろう。あまり周りを疑いたくはないが、今は確実に安全だと言える者の方が少ない。自分自身も、同じように警戒されていることだろう。 しかし、この建物の中で何かしでかそうものなら、すぐに強化型のPキャンセラーが発動し、パラミタ線の影響を受けている者は皆行動不能になる。もし危害を加えようとするなら、あらかじめ仕掛けておくものになるだろう。 (爆弾が仕掛けられていたりするかもしれませんからねぇ) パティ・パナシェ(ぱてぃ・ぱなしぇ)は施設を巡回しながら、主に不審物がないかを調べていた。 パートナーがシャンバラ側の代表であるため、彼女はここで交渉が行われることを知っている。 他の者達はその内容までは知らないだろうとはいえ、地球とシャンバラが歩み寄ることを良く思わない人間が何かを企んでいる可能性はある。 そのため会議室の中だけではなく、そこに至るまでの通路や建物の基礎部分など、会場全体を念入りにチェックしている。一周して「異常なし」と気を緩めることなく、調べた後に仕掛けられている可能性も考え、巡回ルートを変えながら常に目を光らせた。 * * * (あそこが交渉が行われる会議室か) エイミー・サンダース(えいみー・さんだーす)は、外から国際会議場を見渡していた。 状況が状況なだけに、中にいる人間の方に注意が向きがちだろう。しかし、外部に敵が潜んでいる可能性を捨ててはいけない。 会議室が窓のない部屋なら良かったが、残念ながらそこまで都合良くはいかなかった。「狙撃」される可能性は十分にあり得る。 (待機命令が出てるっつっても、上手く監視を掻い潜って来るヤツだっているかもしれないんだぜ) しかも、ここは高層ビルが立ち並ぶ海京西地区だ。狙撃手にとっては、絶好の場所である。 しかし、交渉が行われる会議室を狙うとなれば、狙撃可能ポイントは限られてくる。そこに人を配置しておき、狙撃出来ないようにしておく。 始まる時間になったら代表の一人であるパートナーから連絡が来ることになっている。それが来たら、狙撃ポイントを狙える場所に身を隠して待機するだけだ。 もし、配置した人員を倒して狙撃しようとする者が現れたら、即狙いを定められるようにするためである。 これが今後のシャンバラと地球の関係を大きく左右することになるだろう。 気を抜くことは許されない。 |
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