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フューチャー・ファインダーズ(第3回/全3回)

リアクション公開中!

フューチャー・ファインダーズ(第3回/全3回)

リアクション


【14】


「この命、お前に預ける」
 レンはコクピットに座った。次のメインパイロットは彼だ。
 メインモニターに映るナンバーゼロ、けれど彼の視線はゼロではなくミレニアムの都市に向かった。区画整理された美しい街並みが無惨に踏みにじられていた。
「……気に食わないな」
 サングラスの奥の目に怒りが宿った。
「PTAフィールド! 出力全開!!」
 前面にフィールドを展開して、グランガクインは走り出した。
 正面からガン! と体当たり。
「頑張れ、グランガクイン! お前の意地を見せてみろ! 火事場のガクインブースターッッ!!
 ガクインの目が光った。
 動力炉”ビッグバンジェネレーター”のリミッターが一時的に解除され、溢れ出す機晶タキオンエネルギーが機体の隙間から噴き出した。
「うおおおおおおおーーーっ!!」
 機体各部にあるスラスターが光を放ち、ナンバーゼロの大きな身体を後ろへ後ろへ、一気に海へと押し切った。
「海……?」
 雅香はきょとんとした。
「俺には俺の戦い方の矜持がある」
 レンは言う。
「ここにも人々の暮らしがある。それを守るのも俺達の務めだ。高火力の武器を振り回して、焼け野原を作るのは本末転倒だ。それに」
「それに?」
 レンは視界の隅で大文字博士を見た。
「この機体を作った博士の気持ちを無下にしてはならない。グランガクインは博士のヒーロー、ヒーローはヒーローらしく戦わなければな」

「その通りだ!!」
 次のメインパイロットを務める桂輔は声を上げた。
「俺は負けない! 俺達の未来のため! そしてこの時代で出会った人達のために!! 皆! 少しづつでいい! 俺に力を貸してくれ!」
 博士の弟子として、炎のように魂を燃やす。
「いくぜグランガクイン! ガクインブースターオーバードラァァァイ……ブ? あれ?」
 ガクインの目の光が消えた。エネルギーの放出もピタリと止まってしまった。
「え? え? な、何? 押しちゃいけないボタン押した?
 思わず素になる。
「……桂輔、これ……」
 横のコクピットにいたアルマがモニターを指した。
 ”ガクインブースター使用限界”。
「なっ!」
 ブースターはさっきレンが使ったのでしばらく使用出来ない。
 そしてこの効果が切れたということは……モニターに表示されたガクインの性能がガクンと急降下した。グラフにすると鋭角の三角形ができる折れっぷりだ。
「……ま、まずすぎ!」
 ゼロの三つの口元が灼熱するのが見えた。
「……代わってください!」
 メインパイロットがアルマになった。
「PTAフィールド出力全……」
 ビーッビーッとコクピットが叫んだ。
 ”PTAフィールド使用限界”。フィールドは連続使用出来ないのだ。
「……しまっ」

 ドゴオオオオオオオオオオオオオオン!!

 メギドファイアの直撃に、司令部は激しく揺れた。
「うわああああああああああっ!!」
「きゃああああああああああああっ!!」
 想定外の事態に、桂輔もアルマも精神的動揺を隠せない。タマムスビドライブのプラス値が一変、マイナスのほうに行ってしまった。
「……まずい!」
 ダリルはメインパイロットを切り替えた。
 2人に続くパイロットに抜擢されたのは、煉だ。
「……え? 俺?」
 彼は出番はも少し後だろうと、コクピットでお茶を飲みながらマニュアルを眺めていた。
「……き、気を抜くな!」
 ダリルは叫んだ。

 ドゴオオオオオオオオオオオオオオン!!

 次の瞬間、ゼロの尻尾に払われて、ガクインの巨体は宙を舞った。

「奴をメインパイロットにするのは、嫌な予感しかしないがいたしかたあるまい……!」
 ダリルは最後のパイロット、ブルタをメインに据えた。
「……ボクという切札を温存しているんだと思ったよ」
 グランガクインはゼロの攻撃をかわして間合いをとった。
「よ、よし!」
 大文字博士、太公望、ダリルは思わずガッツポーズ。
「……ちょっと待って」
 雅香は言った。
「タマムスビドライブが全然働いてないわ」
 数値はプラス10%とマイナス10%の間を彷徨っていた。
「何をしている! もっとテンションを上げるんだ!!」
 博士は言った。
「そんな事言ったって、人間何か目的がないとモチベーションが上がらないよ」
「モチベーションだと……どうすれば上がるんだね?」
「そうだなぁ……あのパーフェクトボディのアルティメットクイーンを尋問する権利をもらえないかな?」
 ぐふふ、とゲスに笑った。
「ど、どうする、太公望?」
「いいよ」
「え、いいの!?」
 軽く返されて、ブルタは驚いた。
「……ま、言うだけならタダだし。つか、まだ捕まえてないし」
 小声で太公望は言った。それでやる気を出してくれるのなら、である。
「ぐふふ……待ってろよ、クイーン!!」
 タマムスビドライブがすさまじく唸った。
 機体性能上昇、40%……50%……60%……!
 グランガクインは妖しく目を光らせた。
 そしてくるりと踵を返すとスラスター全開で、一路大神殿に。
「……え?」
 司令部の全員が呆気に取られた。
「何をしているんだ……?」
「何ってクイーンを捕まえにね。それがキミ達の目的だろ? ぐふふ……ガクインアンカーで縛り倒してやろうかな……」
「アホか!」
 物事には優先順位があるのだ。
 それは目の前の怪物に背を向けて、女子を縛り倒しに行くことではない。
「ブルタ、後ろ!」
「……あ」
 案の定、背を見せたグランガクインは熱線を喰らい、撃墜された。