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フューチャー・ファインダーズ(第3回/全3回)

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フューチャー・ファインダーズ(第3回/全3回)

リアクション


【7】


「ふふ、ついにこの時が来ましたわ!」
 ゾフィエルに搭乗するフランチェスカ・ラグーザ(ふらんちぇすか・らぐーざ)は瞳を煌々と輝かせて、敵を見つめた。
「忌々しい異教徒たち……ここで断罪し尽くして差し上げますわ。わたくし達の時代にこれないよう、一人残らず、確実に」
 狂気に取り憑かれたフランに、サブパイロットのカタリナ・アレクサンドリア(かたりな・あれくさんどりあ)は眉を上げた。
「フラン、やる気があるのは大変結構ですけど、まわりが見えなくならないよう気を……」
 ゾフィエルはスラスターを全開に、高速で砲弾のまっただ中に突っ込んだ。
「……と言ってもこうなったら無理ですわね」
 カタリナは、わかっちゃいたけど……とため息。
 それから策敵に注視して、普段以上に機体の安全に目を光らせた。
「主に愛されたわたくしの機体に、穢れた弾など当たりませんわ」
 残像を伴って飛行するゾフィエルに砲弾はかすりもしなかった。
「あら、随分甘い照準なのですね」
 カタリナは不敵に笑った。
「この時代では久しくイコンは使われていないとおっしゃってましたから、あちらはイコンとの高速戦闘に不慣れのようですね」
「ふふ、虎の子の飛行戦艦もただの棺桶ですわね。グランツ教の方は随分準備がよろしくて感心してしまいますわ」
 フランはニヤリとくちを歪めた。
 次の瞬間、ゾフィエルのスラスターが光を放った。
 高加速状態に入ったゾフィエルはアダマントの剣で敵艦を撫で斬りに。旋回して二度、三度と斬る。斬る斬る斬る、斬って斬って斬りまくる。
断罪! 断罪! 断罪!! 薄汚いはらわたをブチ撒けなさい!!
 艦に無惨に走った刀傷から爆発が起こった。
「……フラン!」
 レーダーが敵艦の接近を知らせた。
「あらあら、雁首揃えて懺悔にいらしたのかしら」
 スラスターの光に包まれて、白いゾフィエルの機体は美しく、そして禍々しく輝いた。
「でもごめんなさい。懺悔室はもう閉まっておりますの」
 その時、下から放たれた一条の光が戦艦を腹から串刺しにした。
「!?」
 轟沈する船を前に、フランとカタリナは目をパチクリ。それから発射源をズームアップする。
 ミレニアムの都市渓谷、その谷間にバイパーゼロの姿があった。
「わたくしの獲物を横取りしないで下さいな」
 柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)がモニターに現れた。
『バカ言え。お前の獲物なもんか、ここじゃ早いもの勝ちだろ?』
「恭也、敵艦に位置を気取られたぞ」
 サブパイロットの柊 唯依(ひいらぎ・ゆい)が言った。
「それじゃ楽しい戦争の時間といきますかね」
 艦載用大型荷電粒子砲を発射。凄まじい閃光とともに空が引き裂かれた。
 脅威の威力に飛行戦艦もひとたまりもない。
「砲身の冷却開始。冷却完了まであち60秒」
「了解。おっと……早速反撃が来やがった」
 発射された航空魚雷が白い尾を引いて飛んで来た。
「せっかちだねぇ」
 ババイパーゼロはもう一つの武装を展開した。
「スーパー・オリュンポスキャノン。2022年にも試作品とは言え、時空断裂砲は存在してたんだぜ?」
 イコン用小型空間断裂砲と言ったところだろうか、まだ未完成ながらその威力は折り紙付きだ。
 魚雷全てを照準に収め、トリガーに指をかけた。
「……ん?」
 ふとコンソールパネルにある見知らぬドクロスイッチが目に留まった。
「……何だ、これ? こんなもん付いてたっけ?」
 スイッチと見れば押さずにはいられないのが男の子。恭也もまたポチっとなとスイッチを押した。
『番組の途中ですが緊急ニュースです。第8地区に巨大な人型兵器が出現しました。現在、所属不明の巨大兵器とミレニアムの防衛部隊が交戦中です……』
 ガクッと恭也はずっこけた。
「わぁい、誰だよ人のイコンに自爆スイッチに見せ掛けたラジオ組み込んだ野郎は」
「自爆装置だと思ったのに何故押す」
「あたっ」
 唯依はスパコンと義弟の頭を引っぱたいた。
「まぁいい。どうせだしラジオの音楽でも流せ。こんな状況でも東京のローカルテレビみたく平常運転してる局はあるだろ」
「へいへいっと」
 適当に周波数を合わせる。
『……空京ロックヘブン、続いての曲はスマッシュヒットを飛ばすこのグループ! マリエルとデバンスクナイエヌピーシーズで”ガイドにだして”!!』

 ドンドコドンドコドコドコドコドンドコドンドコドコドコドコ!!
 ボォォォォォオェォォォォ!!(デスボイス)

「なんかアツイ曲来た!」
「気のせいか、聞き覚えのある名前が出てきたような……」
 バイパーゼロはオリュンポスキャノンで魚雷を撃った。空間が歪曲してそこに飲み込まれた魚雷が爆発を起こす。
「荷電粒子砲の冷却完了」
「よし、エネルギー充填! 目標、敵飛行戦艦……発射っ!!

「旧世代の遺物め……!」
 飛行戦艦のブリッジにクルセイダーの声が飛び交っていた。
「メガフロート要塞への援軍要請はそうなっている?」
「わからん。どういうわけか通信が途絶えていて……」
「正面に白のイコン。本艦に高速で接近中」
「照準合わせ、機関砲撃て!」
 砲弾はかすりもせず空に消えた。
「全弾失中!」
「まだ地球にあれほどの乗り手がいたとは……」
 その時、コンコンとブリッジの窓が叩かれた。
 はっと顔を上げたクルセイダーが見たのは、超感覚でぴょこんと獣耳を生やしたリカインだった。
 灯台下暗しというやつである。戦艦が策敵をイコンに注力してる隙にここまで来たのだ。
はああああああああああーーっ!!
 咆哮で窓を破壊。ブリッジに侵入して、レゾナント・ハイで引き出されたパワーで設備を叩き壊して回った。
「……貴様もあのイコンの仲間……」
「誰が暴力”アライグマ”よ!」
 リカインは超パワーで敵を外に放り投げた。
「……誰も言っていない」
「嘘よ! 言ったわよ! 言ってないにしても言いそうな顔してるわよ!
 アライグマ嫌いが進行しすぎて、被害妄想が入り始めていた。
「……あ」
 彼女は何かに気付き、翼の靴で外に飛び出した。その瞬間、剥き出しになったブリッジの正面にゾフィエルが現れた。
「悔い改めなさい、愚かな異教徒共!!」
 ファイナルイコンソードが一閃。
「断罪の刃っ!!」
 両断された戦艦はバチバチと光を放ち、爆散した。

 その頃、黄山はメガフロート要塞にいた。
 通信ケーブルと燃料を運ぶパイプを切断、孤島となった要塞に仕掛けた機晶機雷を爆発させ、破壊工作を行う。
「今回は魔法少女にならなくて済みました。良かった……」
 メインパイロットの叶白竜は言った。
「ま、魔法少女……」
 サブパイロットの世 羅儀(せい・らぎ)は頭を抱えた。記憶が戻った今、あの思い出も鮮明に思い出せる。
「すべて教団の所為だ!」
「でも記憶が戻って良かったじゃないですか」
「そ、それは……くっ! 思い出したかったけど、思い出したくなかった!」
 バンバン! とコンソールパネルに頭を打ち付けた。もう一度消したい、あの記憶を。
 その時、ビーッビーッと警報機が鳴った。
「向こうに気付かれたようですね……!」
「レーダーに反応……敵潜水艇、数……10!?
「囲まれた……!」
 黄山の横で幾つもの魚雷が爆発した。
「く……っ!」
「ま、まずいぞ、白竜!」
 その時、また警報が鳴った。
 次の瞬間、上空から無数のミサイルが降り注いだ。
「……あれは!」
 銀色の飛行艦隊が太平洋上空に現れた。
 船首にたなびく旗は日本国の旗。救國軍弩級飛行戦艦『天津風(あまつかぜ)』だ。
『出前は届いたかい?』
「太公望隊長……!」
 モニターに映った太公望に、白竜は敬礼をした。
『こんなことしか出来ないが、どうにかそいつらと協力して要塞を抑えてくれ』
「いえ十分です。そちらに援軍は向かわせません。ここで食い止めます」
『頼んだぜ、叶さん』
「……隊長」
『ん?』
 自分達が元の時空に帰還するまであと僅か、きっとこの通信が太公望との最後の通信だ。
 話したいことはたくさんあったが、グッと飲み込み、
「ご武運を」
 白竜は敬礼をした。
『……そっちもな』
 太公望も小さく敬礼を返した。