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【光へ続く点と線】遥か古代に罪は降りて (第2回/全3回)

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【光へ続く点と線】遥か古代に罪は降りて (第2回/全3回)

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獅子身中の虫

「そこまでにして」
女の声が割って入った。ルカルカ・ルー(るかるか・るー)だ。その背後にはダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)も控える。アクリト・シーカー(あくりと・しーかー)の艦に万一の参戦を考えレイを搭載し乗艦していたのだが、今回の一件を聞きヘクトルの心労を少しでも和らげようと、ゴダートの元に駆けつけたのである。彼女は教導団員としてはゴダートの命令に従う義務があるが、レナトゥスを無理矢理に拘束するのは避けたいと考えていた。ゴダートの補佐を勤めながら、彼の強硬な態度を和らげたい、徒に反発して逃がそうとするばかりでは解決しないと思っているのだ。
(相互理解が彼女を救う道に繋がるはず)
ルカの意図を汲みダリルが抗議しかける神条、煉らに何か伝えると、彼らは不承不承引き、素早く部屋を出た。
「ゴダート殿、申し訳ございません。私のほうから手配を行わせて頂きます。
 飛行機晶兵を街の上空に放ち、追跡の様子や逃亡補助者の動向を観測しております。
 地図とあわせてレナトゥスの予想逃亡ルートをダリルに計算させ、割り出しましょう。
 ダリルは各種スキルで機晶兵と通信によりリンクし、機晶姫を目としてレナトゥスを追跡することができるかと」
「フン。ワシを懐柔するつもりか?」
「いえ、滅相もございません。立ち話もなんですし、こちらに指令本部を設営し、指令拠点といたしましょう」
ダリルの介抱でサンダークラップのダメージから回復した強化人間の少女たちがゆっくりと立ち上がる。
「いつまでサボっているつもりだ、人形共! とっとと奴等のあとを追え!」
源 鉄心(みなもと・てっしん)はパートナーたち……ティー・ティー(てぃー・てぃー)イコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)スープ・ストーン(すーぷ・すとーん)らとともにルカルカたちの後ろからゴダートを観察していた。
(ずいぶんと極端に前時代的なモノの考え方だな。過去にあったというナントカ至上主義者たちと変わりない。
 送り込んだ側も契約者との不和の発生を予期しなかったわけではあるまい。
 よもや意図してやってるのではないかと言う気さえしてくるな。
 出来るだけヘクトルさんの頭と胃を痛めない方向で自爆し失墜して貰えれば良いのだがな……。
 契約者の非協力的な態度が原因で云々あってもまずいし、またラインが切れてこちらに情報が入らんのもまずい。
 ゴダートの部下の実力がどれほどのものか未知数だが、強行手段で成果を上げてきているとの予想はつく。
 あの少女たちは未知数だが……)
思考がひと段落し、穏やかにゴダートに声をかける。
「配下の強化人間のお嬢さん方の護衛をかねてルシア、レナトゥスの追跡しましょう」
ゴダートは鼻を鳴らした。
「幾分かは従順な者もいると見えるな。行け」
鉄心はパートナーらと少女たちを伴い、街に出た。テレパシーでルシアに声をかけてみる。
『こちら鉄心だ。追跡側として参加した。
 とりあえず時間は稼いで見るから、その間に進んだらいい。何かあれば動向を伝えるよ。
 調査隊全体としてなんらかの成果が上がればゴダートも文句は言えないはずだ』
『わかったわ、ありがとう』
ティーが表情だけは生真面目そのもので、ワールドぱにっくのミニうさティーを大量に呼び出す。
「長距離索敵陣形を組むうさ……! 出撃ぃ〜うさー!!
 アルファちゃんベータちゃんガンマちゃんを守るうさー!」
わらわらとゴダートの強化人間たちに群がるミニうさティー。
「さあ遊……もとい、皆さんをお守りします。
 ミニキャラたちでも、多分そこそこはお役に立てるはず…?
 私の名前もアルファベット一文字で「T]だったし、仲間ですね……うさ。
 ……えと、本当のお名前があるなら教えて欲しいですケド……」
強化人間の少女たちは肩や頭に乗って落ち着いてしまミニうさティー困惑している様子だった。イコナは封印の魔石を握り締めながら呟く。
「ダメですわこのうさぎ……早く何とかしないと……」
イコナのネコ耳がピクリと動く。
「わ、わたくしのねこみみは、嫌だったけどティーが無理やり……。
 でも、うさぎよりこっちの方がかわいいのですわ!」
対抗心を燃やしたイコナが封印石を振りかざしてティーに向かってゆく。
「きゃぁ」
おもむろに針路を変えるとティーに突き飛ばされたふりをして目に涙を浮かべ、少女の一人の足にしがみついてよじ登ろうとした。
「ひどいのですわ! あのうさぎときたらわたくしを突き飛ばしたりして!」
もとはギフトであるストーンは、今回は人の姿を取って護衛にあたることにしていた。
「拙者は基本的にイコナ殿と一緒にアルファ殿達の傍について置くでござる」
そう言いながらティーとイコナの掛け合い漫才(?)を眺めながら、強化人間らにプリンを勧めた。
「これから働く分、必要な英気を養うのも仕事のうちでござるよ。
 ティー殿とイコナ殿の分ももちろんある……が、鉄心殿のはないでござる。
 別に食べる必要はないのでござるが、拙者も頂くでござる」
鉄心以外が黙々とプリンを食べる。ストーン自身は盗聴や監視の目も想定しての油断を招く演技のつもりでいた。もっとも鉄心が怒り出さない程度に加減しながら、ではあるのだが。ティーがプリンを食べ終わり、立ち上がった。捜索命令を出すと、ミニうさティーたちが三々五々に散ってゆく。
「何か生き物が居て、怖そうじゃなかったらお話聞いてみたりしますね。
 ……また、あの巨大Gさんいたりしないかなぁ」
それに対抗してイコナはきりっとした表情を貼り付けて言う。
「薬箱や塗り薬に、蒼き涙の秘石などの回復アイテムを持ってきています。
 必要に応じて治療に当たりますわね」
さりげない様子でストーンは『アルファ』の側によった。
「まだミニうさティーがくっついているでござるよ」
偶然触れたかのように彼女のホルスターに手を触れてサイコメトリを試みる。何の統一性もなく混沌として朦朧とした記憶がなだれ込んでくる。その中でゴダートの命令など必要な情報だけがクリアに響いている。そしてもやに包まれたようなイメージの断片の中に、薬剤を手にした男のシルエットと、強い不安と恐怖のイメージが重なる。
「……!!」
即座にストーンは彼女の元を離れ、鉄心に小声で声をかける。
「……あの娘御たち……薬剤でコントロールされているでござる……」
「なん……だって?!」

 一方のルカルカたちは光条兵器の設置場所にテーブルや椅子を運び込み、臨時指令室として使っていた。
「光条世界を求めておいでなのは、どのような?」
ルカルカがが尋ねるが、ゴダートは鼻を鳴らしてそれには答えようとしなかった。
「レナトゥスが鍵とはどういう事なんでしょうね?」
「あれが何らかの影響を光条兵器に与えていた。これは重要な手がかりだ。
 すぐにあれを調べるべきだろう」
「私も覚醒光条兵器を使えるので、気になりますね」
ルカルカは言い、有機コンピューターの異名を持つダリルが提示するレナトゥスの逃走経路の予想や各種データにさっと目を通し、ゴダートに差し出す。
「それはなかなか使えそうだな」
ゴダートがルカルカの後ろに控えるダリルを指差して言った。ダリルをモノ扱いされ、ルカルカは思わず口を開きかける。即座にダリルが頭を垂れ、それを制した。
「閣下、なんなりと御命令下さい」
ルカルカは瞳にひらめく怒りの炎を見られまいと目を伏せ、ダリルにテレパシーで懸念を送る。
『俺は兵器種族だ。だが古王国時代と違って今は道具階級の種族でもなければ人形でもない。
 それは俺やルカが知っている……それで十分』
ダリルの思念が返る。
「先ほどナトゥスとルシアに発信機を付けてはと提案しました。
 うまく行けばレナトゥスはいつでも補足可能。泳がせて開く方法を探らせ、扉を開けさせたらどうでしょう」
ゴダートは考え込んだが、すぐに否定した。
「人形ごときに出し抜かれるのは面白くない。
 捕獲して連れて来させろ」