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【蒼空に架ける橋】後日譚 明日へとつながる希望

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【蒼空に架ける橋】後日譚 明日へとつながる希望
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 一夜明けて。
 ウァールたちは壱ノ島の港に集まっていた。
 浮遊島群の新しい門出を祝う祭りはまだ数日続くが、ウァールとツク・ヨ・ミ、そしてコントラクターの何人かは、今後の予定から今日地上へ戻ることになっていた。
「シャンバラとの交流がもっと進んだら、そのときはスク・ナさんもナ・ムチさんと一緒に、地上に来てくださいね!」
 ここまで見送りに来てくれたことに感動しながら、ナオがスク・ナの手を握って言う。
「うん、行く!」
「そのときは俺、案内します!」
「絶対だな! 約束だぞ!」
 そしてそこからそう遠くない、タラップの近くで、ウァールが首を伸ばして人であふれかえった周囲に目をこらしていた。
 スク・ナやかつみたちが乗ってきた伍ノ島からの最初の便に、ツク・ヨ・ミの姿はなかった。やっぱり陸路を使っているのかもしれない。
「……船便を渡すべきだったか」
 思わず独りごちったウァールの横で。
「ウァール、ツク・ヨ・ミちゃんは間に合うでふかね?」
 出港時間が近づくにつれて落ち着きを失い始めたリイムが、何度目かの質問を口にした。彼女を行かせたのはウァールだが、一緒にいた手前、いくらか責任を感じているようだ。
 最初のうち、「大丈夫だろ」と楽観視していたウァールも、出港まで30分を切ってからはちょっとあせりが出てきた。
 最悪、ツク・ヨ・ミが間に合わなかった場合、自分も残るべきか?
(まだ今日の便あるしなあ。あーでも、切符って船が出たあと、変更できたっけ? 次が満席じゃないって保証もないし)
 あー悩む!
「今ごろあせっても遅いでふよ」
 頭に手をやり、掻きむしりだしたウァールに、リイムが少しあきれたときだ。
 ツク・ヨ・ミが外路へ通じる廊下の自動ドアをくぐり、息を切らしてこちらへ駆けてくる姿が視界に飛び込んだ。
「ウァール、ごめんなさい!」
 はあはあとあえぐ息の下、ツク・ヨ・ミはどうにかそれだけを口にする。
「彼女が悪いわけではありません」すぐさま、後ろについて走ってきたナ・ムチが彼女のために弁解をした。「乗合馬車の到着が遅れたんです」
「わたしのせいよ。ナ・ムチは船にしようって言ってくれたのに、おじいちゃんの架けた橋を、わたしが通りたがったから」
 昨夜通ったときは気持ちがいっぱいいっぱいで、景色を楽しむ余裕がなかった。夜だったせいでよく見えなかったこともある。
「馬車のせいです。それと、おれのせいでもありますね。橋は人気スポットで、混雑する可能性を見落としていました。もっと早く館を出ればよかったですが……」
 「まあ! 違うわ!」と即座に否定しようとしたツク・ヨ・ミの先を奪って言う。
 肩の力が抜けて、とても自然に話す2人の姿に、昨夜彼女たちの間で何かあったことを察するには十分だった。
 ツク・ヨ・ミがすっかり以前の元気を取り戻しているのを見て、やっぱり行かせてよかった、と思ったウァールは、にやにやが止まらない。
「ウァール、時間でふよ」
「おっと。
 まあまあ2人とも、間に合ったからいいじゃん。おれは気にしてないし。それより、いつまでもそうしてるとほんとに船に乗り遅れるよ」
「あ、いけない!
 じゃあナ・ムチ。また――」
 来るわね、そう言おうとしたツク・ヨ・ミの言葉を奪うように、ナ・ムチが語尾にかぶせる。
「もうここへは来ないように」
「え?」
「おれが会いに行きます。
 また会いましょう、ツク・ヨ・ミ。今度はシャンバラで」
「――ええ!」
 ツク・ヨ・ミはまぶしいほどの輝く笑顔で応じた。



 島の者たちが見守るなか、船はゆっくりと島を離れた。
「また会おうな!」
「またね!」
 岸とデッキとで、船のたてる音に負けまいと叫ぶ人々の声が行き交う。
 それは再会を約束する言葉。
 浮遊島群と地上、そこに暮らす人々が、ともに同じ未来を描いての言葉だった。


 








『【蒼空に架ける橋】後日譚「明日へとつながる希望」 了』

担当マスターより

▼担当マスター

寺岡 志乃

▼マスターコメント

 こんにちは、またははじめまして、寺岡です。
 当シナリオにご参加いただきました皆さん、ありがとうございました。

 リアクションの公開が遅れに遅れてしまい、申し訳ありません。
 また、今回個別をどなたにもつけることができませんでした。
 これが最後ということもあり、たくさんの熱い思いのこもった私信をいただきました。
 それに対する返答をしたい気持ちは山々なのですが、1秒でも早く公開することを優先したのだとご理解いただけましたら幸いです。

 このシナリオにて、浮遊島群のシリーズは完結です。
 最後までおつきあいいただきまして、本当にありがとうございました。

▼マスター個別コメント