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リアクション
裏口班の先導により、人質救出班は人質が捕らえられていると思われる地下への階段前まで到着を果たしていた。
この付近の部屋に裏口班は潜んでおり、救出後は援護に当ってくれるはずである。
そっと壁に手を当てて、音を立てないようにゆっくりと下りた先に、厚いドアがあった。
武来 弥(たけらい・わたる)はピッキングで鍵を開ける。
後を振り向き、松平 岩造(まつだいら・がんぞう)、フェイト・シュタール(ふぇいと・しゅたーる)と頷き合うと、ドアに手をかけて極力音を立てぬよう、しかし出来るだけ素早く開け放った。
先の廊下に人の姿はない。
薄暗い廊下に弥が足を踏み入れる。
岩造は大剣の光条兵器を手に突入する。
岩造、フェイト、神楽坂 有栖(かぐらざか・ありす)とミルフィ・ガレット(みるふぃ・がれっと)と続き、残りのメンバーは階段のドアの前で待機して様子を伺う。
部屋数は5。
ドアは皆同じだった。どの部屋もドアが閉じて――。
突如、一番手前の部屋のドアが開いた。瞬間に銃弾が飛んでくる。
弾は弥の身体を掠め、岩造の腕に飛び込んだ。
怯まず、岩造はドアへ突進し剣を振り下ろす。
中には男が1人、さらにもう1人隣の部屋へ駆け込むところだった。
「貴様ら悪党は、鬼の岩造が相手をしてくれるっ!!!!」
岩造が部屋へと踏み込む。
フェイトもその後に続いた。
岩造は銃弾を浴びながら男の元に跳び、大剣を頭上から叩き込む。
フェイトは隣室へと駆け込んだ男に走りより、その先に――震える少女の姿を見た。
顔や、露出した腕に大きな痣がある。
「お前達悪党は我が鬼の花嫁が成敗する!!!!」
フェイトの中に怒りが込み上げる。
男が少女に銃を向ける。
フェイトはホーリーメイスを男に投げつけ、少女の元に跳んだ。
メイスの直撃を受け、男の手元が狂う。
放たれた銃弾はフェイトの脇腹を貫いた。
「フェイト!」
駆けつけた岩造。少女を背に立ち上がったフェイト。
2人は同時に光条兵器を持ち、銃を構える男へと走り光剣を振り下ろした。
弥と、男達の部屋から持ち出した鍵束を使って、開錠し部屋のドアを次々に開けていく。
「百合園の白百合団です。さ、早く」
「逃げましょう」
有栖とミルフィはそれぞれの部屋にいた少女達に手を伸ばした。
警備員の部屋は最初に部屋だけであり、その他の部屋には、少女や幼子、ゆる族が別々に監禁されていた。
「大丈夫です。ご存知ありませんか? 白百合団」
「……知って、る……」
震えながら駆け寄ってきた少女をミルフィはぎゅっと抱きしめて部屋から導き出す。
「絶対に……護ります……!!」
有栖は小さな子供の手を引いて、自分にパワーブレスをかけると廊下へと出た。
少女が2人、小さな男の子が1人、河童のゆる族が1人。
救出班は囚われていた子供達を真ん中に保護すると、その手や身体を掴み、抱きしめながら地上へと向かう。
「逃がすな、全て殺せ!」
上方から声が響いた。
続いて、戦いの音が地下に響き渡る。
「大丈夫だからね」
蒼空学園のリアトリス・ウィリアムズ(りあとりす・うぃりあむず)は、怯える少女達の肩を抱きしめる。
「駆け抜けますか」
パートナーのパルマローザ・ローレンス(ぱるまろーざ・ろーれんす)は、リアトリスの前に立つ。
「だね。いくよ、道は1本しかないし」
蒼空学園のラティア・バーナード(らてぃあ・ばーなーど)は、少女達に笑みを見せた。
そして彼女達の前に立ち、手を引いて階段を上る。
階段の上は、弾丸と魔法が飛び交っていた。
侵入班が2階から下りて来た敵と交戦をしている。
「私が盾になるから、行って」
ラティアは少女の手を放ち、階段の前に立つ。
階上から放たれた弾丸がラティアの騎士の鎧を掠めていく。
「無理はしないでね!」
リアトリスは幼子を抱えて走り出す。
「お願いします!」
パルマローザは河童のゆる族を庇いながら走り抜ける。
「人質さん達よりも、私の体のほうが頑丈だからね」
ラティアは微笑んでみせた。その彼女の肩に弾丸が直撃し、彼女はよろめく。しかし倒れはしない。
「お嬢様が人質を守るなら、そのお嬢様を私が守ります」
パートナーのサテラ・ライト(さてら・らいと)が、階段を1段上り、ラティアの前に立ち敵の攻撃にその身を晒した。
「サテラ……っ。早く、彼女の為にも!」
ラティアが竦んでいる少女達の背を押す。
「さ、急げ!」
振り向いて弥が声を出す。
「大丈夫ですっ、この純白の鎧にかけて、必ず貴女がたを助けます!」
有栖が竦む少女達に声をかけ、抱きしめるように庇いながら走り出す。
「もう、誰一人傷つけさせはしません」
ミルフィも、強く少女の手を引いて庇いながら走る。
「私が最初の盾です、でもここを抜かせるつもりはありません」
弾丸を顔に受けたサテラは、頬から血を流しながら気丈に言った。
「1人だけいい格好しようなんてズルイ!」
ラティアが軽く笑みを見せながらその隣に立つ。
「封鎖しておくべきだったか。お前達は班員と一緒に行け!」
侵入班のロブ・ファインズ(ろぶ・ふぁいんず)が、交戦をしながら振り向かずに言う。
アサルトカービンで撃ち倒すも、敵は2階から次々姿を現す。
2階にももう避難場所はないようであり、敵も死に物狂いであった。
「任せて下さい」
パートナーのアリシア・カーライル(ありしあ・かーらいる)は言った途端、バーストダッシュで駆け上がり、潜んでいた魔法使いの男を階段から突き落とす。
瞬時にロブが銃を撃ち、倒す。
「数はあと5人です」
銃がアリシアに向けられる。即座にアリシアは飛び下りて、ロブの傍、柱の後ろに隠れる。
「私達だけでやれます」
「……ということだ」
ロブはちらりとサテラに目を向ける。
「頼んだよ」
「お願いします!」
人質が離れたことを確認し、サテラとラティアはその場から走り去った。
「逃がすか!」
狂気の目をした男が銃を乱射する。
白百合団の純白の甲冑を纏った有栖とミルフィは身を挺して捕まっていた少女達を守る。
「君達に付き合ってる暇はないんだ」
リアトリスはフラメンコを踊り、独得な動きで銃弾の直撃を避けて轟雷閃を加減して打ち込む。
「撃たせません」
白目をむいて倒れた男を飛び越えて、パルマローザは柱に隠れている男に雷術を打ち込んで気絶させる。
「早く。出口が見えてきたよ! 後もう少しだから」
「急ぎましょう。前だけを見て一気に駆け抜けて下さい」
リアトリスとパルマローザは再び子供達の手を引いて、元気づけながら走り出す。
「これで全員でござるか!?」
侵入班の椿 薫(つばき・かおる)は階段の方へと走り、少女達の後方を守る岩造とフェイトに声をかけた。
「ああ。地下の敵も全て片付けた」
「誰も残っていません」
2人の言葉に、薫は強く頷く。
「早く抜けて治療するでござる」
負傷している2人にそう声をかけると、薫は階段付近の加勢に向かう。
「出るぞ!」
弥が裏口傍に駆けつけた敵シャンバラ人をドラゴンアーツで吹き飛ばし、ドアの傍に立つ。
リアトリスとパルマローザが、幼子とゆる族を連れて走り出る。
有栖とミルフィは、少女達の手を引き、背を押して飛び出した。
救出班が全て駆け出した後、弥も裏口から脱出し、皆と共に駆け出す。
少女達を抱えるようにして、遠くへ。ひたすら遠くへ走りぬける。
「人質救出班、裏口から全員無事に脱出しました」
アマーリエ・ホーエンハイム(あまーりえ・ほーえんはいむ)は、参謀班のミヒャエルにそう冷静に報告をする。
「うふふ、それじゃあ、私達も退散しましょうかねぇ」
巫丞 伊月(ふじょう・いつき)が声を上げる。
階段付近でまだ銃を撃ち合う音が聞こえるが、自分達の役割は自分達だけで敵を殲滅させることではない。
「通してくれまへんか」
橘 柚子(たちばな・ゆず)が華麗な足裁きで扇子型の光条兵器を振るい、敵を切り裂いていく。
「このっ!」
敵シャンバラ人が柚子に銃を向ける。
「命知らずどすね……」
銃弾が柚子の身体を掠めるも、即座にパートナーの木花 開耶(このはな・さくや)がヒールで癒す。
次の瞬間には、敵の身体はズタズタに切り裂かれていた。
「急いで脱出してねぇ、殿は任せて頂戴〜」
「早く終わらせて帰るのです」
伊月のパートナーのエレノア・レイロード(えれのあ・れいろーど)は、憮然と潜んでいた部屋から姿を現す。
「ロブ殿、アリシア殿、戻るでござる!」
声をかけて、椿は裏口の方へと走る。
ロブとアリシアも、後に向けて銃を打ち、剣を振って牽制しながらその場を離れる。
「さあ、急ぎましょう」
開耶は、負傷している2人にヒールをかけて、裏口へと共に走る。柚子も続く。
「あらあら、うふふ。まだ懲りないのねぇ」
伊月は、リターニングダガーを階段から姿を現した敵に投げつける。ダガーが男の腕から拳銃を弾き飛ばす。
仲間達が駆け抜けたのを確認して、伊月は自らも裏口へと走る。
銃弾が舞い飛ぶ。身体を軽く掠めたが、逃がすこと、逃げることに専念する――。
「人質の救出に成功したそうです!」
治療と休憩から戻った上空班綾瀬 悠里(あやせ・ゆうり)は、正面班、上空班のメンバーに大声で伝える。
「それでは、本格的に行きますわよ!」
千歳 四季(ちとせ・しき)は、残りの敵の傍を巧みに飛び回り混乱させていく。
すーっと高く浮かび上がった直後に、敵に向かって悠里の火術が放たれた。
一斉攻撃が始まる。
もう屋敷の破壊も厭わない。
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