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リアクション
第5章 闇、晴れて
「大和ちゃん、追撃班出発するよー!」
追撃班と共に潜んでいた参謀班のラキシス・ファナティック(らきしす・ふぁなてぃっく)は、パートナーの譲葉 大和(ゆずりは・やまと)に連絡をした後、仲間達にパワーブレスをかける。
「サンキュ。数は多そうだが、逃がさないぜ!」
「ただ少し気掛かりなことがあるけど……とにかく行こう」
教導団のデゼル・レイナード(でぜる・れいなーど)と、ルケト・ツーレ(るけと・つーれ)が、軍用バイクを発進させ、裏口から脱出した残党に向かっていく。
「飛空艇やバイクは別班が破壊してくれたようですが、馬も有翼種の速度も侮れません」
「俺達は屋敷の周りからだね」
教導団の比島 真紀(ひしま・まき)とサイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)は、軍用バイクで逆の方向から正面へと向かい、正面側から逃走を試みる残党を追うことにする。
「有翼種は任せて……絶対に許せない! 逃がさないんだから!」
「急ぐぞ!」
蒼空学園の倉田 由香(くらた・ゆか)とルーク・クライド(るーく・くらいど)は、飛び出したヴァルキリー3人の姿を確認し、急ぎ小型飛空艇を発進させる。
「手負いのようです。回り込みましょう」
「皆、油断しないでね」
蒼空学園の樹月 刀真(きづき・とうま)と漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)も小型飛空艇を走らせる。
「まだたんと出てきそや」
攻撃が正面に集中しているため、裏口から逃走を図る敵が多い。
「取りこぼしのないように頑張りましょう」
蒼空学園の一乗谷 燕(いちじょうだに・つばめ)と宮本 紫織(みやもと・しおり)は、上空から屋敷を見下ろし、目を光らせる。
飛空艇破壊班が、駐機場の乗り物の破壊に成功していたため、敵は騎乗して逃げ出そうとする者と、走って逃走を図るもの――それから、自らの翼で逃げようとする者のみだった。
敵が本陣を狙った時もそうだが、有翼種については、人質確保の知らせを受けるまで攻撃、追撃は一切行なっておらず、逃走を許してしまっている。追うつもりではあるが、小型空飛艇と同程度の速度が出せるため、また空を移動しており向かった方向も定まらないため、見つけ出すことはほぼ不可能だろう。
真紀とサイモンは、それぞれ走って逃げる残党の足を攻撃し逃走不能に陥らせながら、正面近くで合流を果たし騎乗して逃走する敵を追っていく。
「貴殿に、逃げ道はありません」
真紀は、騎乗して逃げるシャンバラ人の男に向けて、銃弾を打ち込む。
弾丸が馬の足に当り、馬は激しく暴れ、男を振り落とす。
「大人しくしていた方がいいよ!」
立ち上がろうとする男に、サイモンがドラゴンアーツを叩き込んだ。
そのまま駆け逃げる馬は狙うことなく、真紀は男に駆け寄って縛りつけ、猿轡をかませると木の後に隠す。
「援軍が来るとは思えませんが、街に向かわれると厄介です」
「人に紛れ込まれると、判別つかないしね」
「逃げ出した者の中には使用人として働いていた人物……あるいは、働かされていた人物もいるようですから、抵抗しない者には危害を加えず捕らえましょう」
「分かった。気をつけるよ」
真紀とサイモンは軍用バイクに乗り、正面付近を走行し、逃走を図る者達の前に回りこみ、抵抗する者の足を射抜き、投降する者はそのまま捕縛していく。
「さて、止まってもらおうか」
「怪我はしたくないでしょう?」
デゼルとルケトはそれぞれ馬に乗り道の無い荒野を走る2人に追いつく。
シャンバラ人と思われる男は、鞭を振るいながら無我夢中で馬を走らせている。
やむなく、デゼルはランスで馬の足をついた。
ルケトはもう1人の男が乗る馬の斜め前に出て、カルスノウトを振る。
馬が嘶き、転倒し男達は落馬する。
落馬のショックで動けない男達を手早く縛りつける。
「やれやれ……こんなもんかねぇ」
「こんなもんってどんなもんだよ」
デゼルの言葉に苦笑しながら、ルケトも男を縛り付ける。
「っと、本陣にお招きする時間はないみたいだ」
馬を駆り、遠くに逃げようとしている者がデゼルの目にはいった。溜息をひとつついて、デゼルは再びバイクに乗る。
「走って逃げようとしても無駄だ。これ以上怪我をしたくなかったら、大人しくしていることだ」
捕らえた者にそう声をかけた後、ルケトもバイクに飛び乗って、デゼルと次の残党に向かっていく。
由香とルーク。刀真と月夜は手負いのヴァルキリーと守護天使の一団を追っていた。
「いけっ!」
由香がリターニングダガーを力の限り投げつける。
ナイフを背に受け、1人のヴァルキリーがよろめき、一団の速度が僅かに落ちる。
追撃班の4人は小型飛空艇の速度を限界まで上げて近付く。
「散って!」
負傷して落ちていくヴァルキリーの女がそう言い、残りの4人がパッと2手に分かれる。
追撃班の4人も、目で合図を交わすと2手に分かれる。
由香とルークは左側のヴァルキリー2人を追う。
「しつこいよ!」
ヴァルキリーの女は速度を弱めて銃を撃つ。
「怖くなんかないよ! 苦しめられた子供達に比べれば――っ!」
由香の頬を掠めるが、由香は速度を緩めることはなくリターニングダガーを放つ。女の手に刺さり、武器が地上へ落ちていく。
「落ちろ!」
ルークは小型飛空艇を飛ばし、もう1人のヴァルキリーにアシッドミストで攻撃をする。
酸の霧を受け、バランスを崩す敵にドラゴンアーツを叩き込む。
「あなたも落ちなさい!」
由香も武器を落とし再び逃走を図るヴァルキリーの背にドラゴンアーツを放つ。
「大人しくしてな!」
更にルークが雷撃で女の背に攻撃を加える。女は意識を失い、落ちていく。
「大丈夫か?」
心配げにルークは由香に声をかけた。
「平気平気! さ、次行くよ」
由香は頬の血を拭って強い笑みを見せた。
刀真と月夜は右の守護天使の男2人を追い、負傷と疲れで速度の落ちた男達の前へと回り込む。
「相応の事をやってきたんです、覚悟は出来ていますよね?」
「ここで終わりにする」
刀真と月夜のその言葉に、守護天使1人が剣を構える。
「俺ら2人は地球の女と契約をしている。攫われて連れてこられた女だ! 俺を殺せば彼女も死ぬぞ!」
言いながら刀真に向かって飛び、剣を振り下ろす。
「人質のつもりですか。他に人には有効でしょうが俺には無駄です」
冷たく言って、刀真は爆炎波を放った。
男の体炎に包まれる。
「刀真!」
パートナーの月夜が咎めるような声を上げた。
「……死ななければ君が癒せる」
その言葉に軽く息をついて、月夜は地上に落ちた守護天使を追った。
まだ息のあるその男を縛り付けてからヒールをかける。
さらに。
もう1人、守護天使が黒こげになって落ちてくる。
「刀真……全く」
月夜は冷徹な目でこちらを見下ろすパートナーに、眉を寄せて苦笑をする。
「こら、待ちなはれ!」
燕は小型飛空艇で屋敷から飛び出した男を追う。
遠距離攻撃手段がないことにもどかしさを感じる。
敵は走っての逃走だがバラバラの方向に逃げているため、どの相手を優先すべきか迷い――燕は一番身体つきの大きな男の足止めをまず行なうことにする。
小型飛空艇に乗ったままでは捕まえられないので、一旦乗り物から下り、バーストダッシュで距離を詰めて、剣を叩き付ける。
「ここで捕まっておいた方が楽どすよっ」
1人に構ってはおられず、燕は小型飛空艇の方へ走る。
「ラキシスさん、縛っといてくれやすー!」
参謀班に状況を伝えるラキシスにそうお願いをする。
「うん。もうちょっと頑張ってだって!」
ラキシスは紐を持ってぱたぱた走りより、燕が倒した残党達の両手両足を縛っていく。
「もはや逃げ場などありませんよ」
ヴァルキリーの紫織は、守護天使の男を追って行く。
男が振り向き、光の魔法を放つ。
紫織は、その身に攻撃を受けながらも剣を振り上げ、男の元に飛び込んだ。
「例え今を逃れたとしても、天が貴殿の悪行を見逃すはずがない!」
躱そうとした男の腕を斬り裂いた。
「知るかああああっ」
悲鳴のような声を上げて、尚男は逃げようとする。
「仕方ありません」
紫織は背を見せた男にバーストダッシュで近付き、背に剣を叩きつけた。
男は倒れるも、休む暇はない。息をついた紫織だったが……。
「大丈夫ですか」
声に顔を上げれば、上空班の御宮 万宗(おみや・ばんしゅう)の姿があった。
正面の戦闘が随分と治まり、全体での追撃が始まっていた。
○ ○ ○
侵入班と一緒に侵入を果たしていた
国頭 武尊(くにがみ・たける)は、味方の攻撃が落ち着いた頃、ようやく3階の部屋に到着できた。
戦闘中は2階も3階も忙しなく組織の人間が行きかっており、とても移動が出来る状態ではなかった。
正面に面した部屋には派手な攻撃が仕掛けられていたため、武尊も迂闊に入り込むことが出来ず、柱の影で息を潜めているより他なかった。
目指していたのは、組織幹部の部屋。
廊下から見た限りでは、部屋に違いはない。
負傷した残党との交戦を交えながら、調べて回りそれらしい部屋に突入するも――めぼしいものは結局手に入らなかった。
「関係なさそうなものも、もてるだけ持って行くか」
部屋には壊されたパソコンが一台あった。散らばった本や書類をかき集め、壊れたパソコンの本体を持って、武尊は脱出をすることにする。
長時間攻撃を受け続けた建物は、今にも崩れそうであった。
組織のメンバーは最後の最後まで、抵抗、もしくは逃走を試みるも、白百合団と契約者達の手で屋敷は制圧された。
捕まっていた少女達は全てを終えてもまだ震えていた。
怪我をした仲間達は、重傷な者から優先的に魔法を施されるも、1度の魔法で回復しない者も多く、全ての傷を癒す間もなく、全員が動ける状態になった時点で空京へ帰還することになった。
「心に負った傷というのは、表面に見えるものより厄介だからな……」
震える少女達を見て、
早川 呼雪(はやかわ・こゆき)はそう言葉を漏らした。
一緒に連れてこられた友達を、目の前で殺されてしまった子もいるという。
組織の敷地内には、大きな焼却炉があった。その中に、殺された人々が眠っているのだろうか。
出来れば、親の元に帰してあげたい……。
「コユ……」
パートナーの
ファル・サラーム(ふぁる・さらーむ)は、呼雪の心中を察して、いつものように無邪気に笑ったりはせず、静かに呼雪の傍に居た。
これ以上自分達に何が出来るわけでもないが――。
出発前に、小さな慰霊碑を皆で作って祈りを捧げる。
白百合団副団長、神楽崎優子は、本陣近くに咲いていた百合を摘んで、慰霊碑に手向けた。
「どうか安らかに眠ってくれ」
「もう誰も、君達を傷つけたりしないから」
クリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)と、
クリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)も亡くなった子供達に祈りを捧げる――。
空京へ戻って直ぐに、百合園女学院を通し、シャンバラ教導団に組織についての情報が送られた。
飛空艇で逃げようとしていたメンバーがこの拠点の重役だったらしい。
捕縛した全ての者達が、教導団により連行され尋問を受けるだろう。
捕まっていた皆の連携により、子供達は全て無事救出することができた。
だが――恐らくあの屋敷は、組織の拠点のひとつでしかない。
集ったもの達はそれを心に留めて、日常へと戻るのだった。
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担当マスターより
▼担当マスター
川岸満里亜
▼マスターコメント
シナリオへのご参加ありがとうございました。
まずは、皆様に盛大な拍手を贈りたいです。
内心は兎も角、ご参加された方全てが、協力姿勢で行動をしてくださいました。全員がルールを守ってくださったことがとても嬉しかったです。
相談にも沢山の方が顔を出してくださり、進め方にも感動を覚えておりました。
協力型シナリオは蒼フロでは初めての試みでしたので、参加してくださった方も色々と戸惑いがあったかと思います。
また機会がありましたらこのような形式のシナリオも出したいと思っておりますので、プレイスタイルが合った方や、こういった遊び方も楽しいと感じた方は、是非ご参加いただければと思います。
ルールや、こういったゲームでの常識についても、相談の中やシナリオを経て気付いていくことが結構あると思います。
マニュアルを全部読んでも全て完璧に頭に入るわけではありませんし。
他のマスターの発言とも被りますが、いくつかルール絡みについてのお話をさせていただきます。
※戦闘に使える武器は、持っている武器だけです。
※今回は状況的理由で、コンビニ程度、常識的範囲と限定しましたが(コンビニで購入できないようなものの採用は控えました)、基本的に、シナリオで持っているとして行動できるアイテムは、所持品以外はコンビニ、ホームセンターで購入できる程度のものです。
※スキルや、自らで考えた技に名前をつけても構いません。ただ、スキル以上の特殊な効果があったり、人より優れた効果を発するという独自設定は蒼フロでは認められません。
※アクション欄やその他方法により、マスター個人への、PC行動以外のシナリオ展開の要望、設定の要望は残念ながら採用できません。お考えやご主張に対し、マスターが同意権を持っていたとしても、PCの行動以外の一部PLの意見を採用することは、公正でなければいけないマスターとして行なってはいけないことです。お手数ですが、ご要望はオフィシャルへお願いいたします。
また、こういった意見を戴いた際には、個別コメント等でのご返信も控えさせていただきます。お許し下さい。
※その他シナリオごとのルールが設けられている可能性もありますので、ご参加の際にはシナリオガイドとマスターコメントをご確認の上、ご参加下さい。
蒼フロは、色々な考えを持った皆さんと楽しむゲームであり、マスターシナリオは注文小説ではないので、お1人お1人の色々なご要望にお応えできないことも多々あります。
でも、自分のキャラクターだけが活躍する話なら、皆さん自分で描ける力があると思います。
一緒に楽しむ方々がいるから、この世界を楽しむことができます。
沢山の個性溢れる人物がいるこの世界で、これからも一緒に物語を築き楽しんでいきたいです。
ご参加本当にありがとうございました。
またどうぞ、よろしくお願いいたします。
【お詫びとお知らせ】
個別コメントが反映されない不具合が発生しておりました。申し訳ありません。
現在は正常に表示されておりますので、川岸のシナリオにご参加経験のある方は、ご確認いただければ幸いです。
次のシナリオガイドは9月9日に、百合園キャンペーン「狙われた乙女〜ヴァイシャリー編〜第2回/全3回」の公開を予定しています。