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リアクション
第五戦 トーナメントも佳境!!!
「あ〜、おせんに〜キャラメルはいらんアルか〜?」
マルクス・ブルータスが売り歩きをする横で、北条 御影は極力連れだと思われない距離を保ちながら警備を続けていた。既に怪しいと報告を受けていた一人の参加者、アンナ・ネモという女性の姿が必ず視界に入るようにという条件付である。今のところ、フードを深くかぶっているということ以外彼女は怪しいそぶりを見せなかった。売り歩きをしているマルクス・ブルータスから葡萄アイスを買い、それをおいしそうに(見える)食べている姿も、鏖殺寺院の非道さが滲み出てはいない。お会計時に豊臣 秀吉がお釣りをばら撒いても、拾うのを手伝ってくれるという優しい人だ。
「ただの勘違いならいいんだが……」
小さい独り言は、すぐさま実況席から流れるマイクにかき消されてしまった。
『さて、先ほどの戦いはお疲れ様でした〜フォード選手は金葡萄を目当てで大会に参加されたとか』
『うちの学長のカンナ様に献上するためにな』
『いやいや、なるほど。まだ彼女は食したことがないらしいですからね』
『え、あれ食べれるのか?』
『さーて! 次は注目の一戦です! な。な。なんと! 乙女の園、百合園女学院と男の楽園、薔薇の学舎の生徒たちの対決だああ!!』
「いま盛大に誤魔化されたな……」
「政敏、どうかしたんですか?」
「いや、なんでもない」
カチュア・ニムロッドが気がつかなかった疑問点について、リーン・リリィーシアに電話で連絡を入れた。
『こっちもいい情報仕入れたから、ルーノさんの試合の後には控え室に行くね』
とだけ返事が来て電話が切れた。
闇色のマントの下に、漆黒の騎士鎧をまとうが、どちらかといえば軽装を心がけたらしい明智 珠輝(あけち・たまき)は、パートナーであるリア・ヴェリー(りあ・べりー)に投げキッスを送り(虫を追い払うかのように手でシッシッとされてしまったが)石畳の上へ上がった。ルーノ・アレエのセコンドを勤める志位 大地は不安そうに声をかける。手にしているのは、セイバーが持つには少し心もとないレイピアだった。
「本当に、その武器でいいのか?」
「はい」
「ルーノさん、フェンシングの成績はとってもいいんですよ」
「実践とは違うじゃろうが……大丈夫じゃろう」
ルーノ・アレエはフィル・アルジェントとシェリス・クローネの言葉に黙って頷くと、抜いたレイピアを持って石畳へと上がった。制服姿ではなく、剣を扱うのに支障がなさそうな軽装の女性用の鎧を纏っていた。視線を向けた明智 珠輝は口元を歪めて、ルーノアレエの正面に歩み寄っていく。公式の試合の前にそうするように、手を差し出した。たなびく闇色のマントが彼の不思議な魅力を引き出す。緊張しているからか、こわばった面持ちでルーノ・アレエは手を握り返す。
「そう緊張しないでくださいな、ルーノお嬢さん。こんなに美しい女性のお相手ができるなんて、私は幸せ者です」
「え、あ……明智 珠輝、よろしくお願いします」
ルーノ・アレエの黒く細い指先に口漬けを軽くして離す。いつもどおりのパートナーの行動に、セコンドのリア・ヴェリーは呆れてため息を漏らす。
「全く……珠輝のやつ勝つ気絶対ないな……ま、試合後の回復のためにいるんだし……いっか」
「いざ、尋常に勝負いたしましょう、栄光と、金葡萄をつかむために……ね」
ライトブレードを構え、今にも薔薇がどこからか飛び散ってきそうな優雅な動きに負けまいと、ルーノ・アレエも自らの中の戦闘データをフルに呼び起こしてレイピアを構える。しばしの沈黙が会場内を包んだが、その瞬間は訪れた。
ルーノ・アレエが石畳を蹴り上げ、明智 珠輝に突きを繰り出す。幾度もの連続の突きは、流れる赤い髪が軌跡となって見る者を魅了した。
次の試合を控えているララ サーズデイ(らら・さーずでい)は同じ機晶姫として思わず見惚れてしまっていた。
「早い……あれが私と同じ機晶姫とは……完全体としての力なのか……?」
「ルーノは完全体というわけではない。一から作られたとあるが、きちんとした技師に作ってもらったわけではないのだ……」
「そうなのですか?」
「だが、安定性は抜群。きっと、あの身に宿された機晶石の力のせいなのだ」
「金の煌きを宿した、機晶姫……可能なら、勝ち上がってもらい、手合わせをしてみたい」
リリ・スノーウォーカー(りり・すのーうぉーかー)はララ ザーズデイの言葉に無言で頷いた。この大会に参加したのも、ルーノ・アレエを救助した仲として、金葡萄をルーノ・アレエに一粒だけでもわたせないかという気持ちからだった。聞いたところ、大草 義純たちもそれを目的としていたらしいから、彼女がココで勝たなくてもいいと考えていた。それに、不利なのは残念ながら
目に見え始めていた。
「早いが、やはり戦うことが身体に染み付いていないのだろうな……あのままでは、先に力を使い果たしてしまいそうだ」
怒涛の突き攻撃が、次第に勢いをなくしていく。明智 珠輝はそれを見逃す事はしなかった。明智 珠輝が一瞬の隙を突いて繰り出したチェインスマイトが直撃すると、ライトブレードをレイピアに叩きつけようと一気に振り下ろす。ルーノ・アレエはすぐに身を引くが、レイピアをたたき落とされてしまう。拾いに行く事は命取りであることが分かっていたが、予備の武器は手に持っていない。
敵を砕くだけの力なら、その身に秘めているのだが。そんな言葉が頭をよぎって目いっぱい頭を振る。
「ふ、ふふふふふふふ…………あっはっはっはっはっはっは!!!」
明智 珠輝が突然狂ったように笑い出し、ライトブレードを振りかざしながら間合いをつめていく。鎧を纏っているとはいえ、武器を持たぬルーノ・アレエへのその容赦のない進撃に、リア・ヴェリーは思わず柵に身を乗り出して舌打ちをした。
「珠輝のやつ、少しぐらい容赦してやったって……!」
本気を出すためか、闇色のマントの留め金に手を添える。片手で見事にはずし、バッサア、と勢いよく明智 珠輝の漆黒の鎧姿が現れる。
「ふふ……ほぉら、金の干し葡萄ですよぉ」
…………胸元の、丁度乳首のところだけ穴を開けられた、漆黒の鎧だ。金色に上から絵の具で着色されているそれは、干し葡萄と呼ぶのには少々小さかったが。
「あ、あ、あの馬鹿あああああああああ!!!!!!!昨日夜なべして作ってたのはそれかっ!!!」
ぽかーーーーーん
会場内が異常な静寂に包まれた頃、ルーノ・アレエは腰を抜かしてへたり込んでしまった。あまりのくだらなさゆえに、とリア・ヴェリーは頭を抱えながら同情したが、次に聞こえてきたのは彼女の笑い声だった。今度は彼女の笑い声に一同は沈黙してしまった。
「くすくすくす……っうふふふ、や、やだ……明智 珠輝……っ」
「は!今ですよ!!」
明智 珠輝は大慌てでルーノ・アレエをお姫様抱っこして抱えると、石畳の外へとポン、と放り投げた。ルーノ・アレエの失格が言い渡されてすぐ、彼女の手をとって石畳の上にまた誘う。石畳の中央に立ち、彼女の手をとって歓声を受けるべく両手を客席に振った。
「このド変態ヤローーーー」
「いや〜〜〜!!やっぱり薔薇の学舎って変態ばっかりなのよ!!」
「いいぞ〜っもっとやれ〜」
「いっそ脱げ〜〜!!!」
どう考えても半分以上が非難だったのだが、それが快感らしく身をよじって頬を赤らめていた。ルーノ・アレエにはよく分からないようだったが、試合終了ということで石畳の上に上がったリア・ヴェリーに思いっきりどつかれて、その場はようやく収まった。ルーノ・アレエは明智 珠輝からの攻撃を受けてひどい損傷こそないものの、内部を修理するには落ち着いた場所がいいと朝野 未沙からいわれておとなしく客席で残りの試合を観戦することになった。負けた選手は次の試合の解説につくのだが、明智 珠輝が快くかわりと引き受けてくれた。
「くくっ……ルーノ、やはり違いの分かるやつだな……っ」
「佑也さん? って、まだ笑ってるんですか!? もう、ルーノさん、残念でしたね……」
「はい、でも、自分の力で挑んで負けたのです仕方がありません」
「そう悲観することもないぞ」
志位 大地が一枚のメモを持って救護室へ訪れた。まだ朝野 未沙がルーノ・アレエの腕の調子を見ていた。メモには短く書かれていたようで、志位 大地が変わりに読み上げながら、ルーノ・アレエの修理が終わっている腕にメモを持たせた。
「リリ・スノーウォーカーからだ。自分が勝ったら一粒だけでもわたせるようにするから、落ち込まないでほしいってさ」
「彼女が……私は、本当に友人に恵まれていますね」
ルーノ・アレエは目を閉じてそのメモを愛しげに抱きしめる。そこへ、フランソワ・ド・グラスと神和 綺人が駆け込んできた。そのあとを落ち着いた様子で緋桜 ケイたちがついて入ってくる。駆け込んできた二人は少し息を整えようと深呼吸を繰り返す。緋桜 ケイと悠久ノ カナタは差し入れに葡萄シャーベットをいくつか持ってルーノ・アレエのそばにあるイスに腰掛ける。
「試合、残念だったな」
「もう少し、鍛錬が必要そうじゃの」
「はい、沢山の友人たちを守れるようになりたいと、今日は心から思った。次は、もっといい戦いができるようにしたい」
「る、ルーノ・アレエ……だよな?」
「僕たち、金葡萄について調べているんだけど……」
「機晶石の力を凝縮してできた……金の機晶石を持ってるんだってな」
「鏖殺寺院の施設で作られたって、本当なの?」
フランソワ・ド・グラスの問いかけに、ルーノ・アレエは無言で頷いた。フィル・アルジェントは二人の前に立ってきっと睨みつける。
「それが、なんですか。今は、百合園女学院の生徒ですよっ」
「ち、違うでござる! もしもの話なのだが、似た事例で植物に同じく金の光が宿ることなんてありうるのだろうかと……」
「あ〜……それ、俺たちも調べてたんだよ。ルーノの事例とよく似たことが、植物でも起こったのだろうか、ってな。だとしたら、鏖殺寺院のやった事は研究の成果じゃなくって、偶然の産物じゃないかなって」
緋桜 ケイの言葉に神和 綺人とフランソワ・ド・グラスはへたり込んでしまった。
「なんだよ……それなら先に話してくれればいいのに……」
「話を聞かないで走り出したからであろうが」
悠久ノ カナタが呆れながらため息を漏らすと、緋山 政敏が立ち上がって救護室を出て行こうとした。カチュア・ニムロッドはその後について立ち上がり、どこへ行くのか問いかける。
「金葡萄を昨日から見ている警備班要員に話を聞くんだ。生の葡萄か、作り物か位は分かるだろ? それに……」
「鏖殺寺院が攻めてこなかった。この後の試合で攻めてくる可能性があるということだね」
「生の葡萄だったら教えてくれ、まだワイン作りを諦めたわけではないからな」
駆け回って疲れたのか、フランソワ・ド・グラスと神和 綺人は声をかけながらルーノ・アレエのそばにあるイスに腰掛けて休ませてもらうことにした。クリス・ローゼンは差し入れでもらったシャーベットを受け取り、口に運んで至福の笑みを漏らす。アルチュール・ド・リッシュモンはルーノ・アレエの手をとって口付ける。
「ルーノ・アレエ……美しい響きだ。どうだ? この後一緒にカフェオレでも……」
「けが人相手に容赦がないでござるな……」
「それよりも、その手だと明智 珠輝と間接キッスじゃな」
シェリス・クローネが茶化すと、アルチュール・ド・リッシュモンは真っ青な顔になってトイレへと駆け出していった。
『それにしても最後のどつきっぷりは最高でしたね、セコンドのヴェリーさん』
『(珠輝がこれ以上公然でセクハラしないようにするにはこれしかないんだ……)え、ああ。まぁ……慣れてますので』
『ではでは、解説の代役の代役、ヴェリーさんから次なる選手の紹介をお願いいたします!!』
『麗しき機晶の姫騎士、ララ ザーズデイ、セコンドにつくのはリリ・スノーウォーカーだ。対するは百合園女学院出身、あだ名はミュウで知られるミューレリア・ラングウェイだ』
黄色く輝きを放つ巻き髪、その身に纏う白い鎧が高貴さをさらに引き立たせていた。一歩一歩進む姿は、会場内から感嘆の声が洩れるほどだった。その相手は百合園女学院といってもスポーティな格好に、長いプラチナブロンドを黒いリボンで結い上げた少女。刃を潰したグレートソードを軽々しく掲げながら、相手に習って石畳の中央へと進む。白騎士は優雅な一礼をし、エペをすらりと抜いた。その一連の流れだけで、一部から悲鳴が聞こえたほどだった。
「ララ ザーズデイ。正々堂々と、戦おう」
「ミューレリア・ラングウェイだぜ。よろしくな!」
グレートソードを構え、八重歯を見せながらにっこりと笑う。それに応じるように笑みを返すララ ザーズデイの隙を突いて石畳を蹴り駆け出した。高く飛び上がって振りかぶったグレートソードを叩きつけようと全身の力を込める。エペでそのグレートソードを迎え撃つように構え、叩きつ蹴られ石畳がはじけ飛ぶが、エペで上から押さえつけられている。
「な!」
「可愛いお姫様だが、そんな大きな武器を使うとは意外だな」
「あんまり見くびってると、痛い目にあうぜ!!!」
力任せにグレートソードを引っ張りあげてその勢いで回転切りを敢行するも、華麗に飛び上がって一回転してからの着地……白き姫騎士には余裕が伺えた。
「へへ……それなら……バーストダッシュ!!」
さらに加速し、小さな体には似合わないグレートソードで切りかかる。余裕の笑みでララ ザーズデイは受け流そうとしていたが彼女の表情が突如凍りついた。ミューレリア・ラングウェイは気に留めずそのまま突っ込み、ララ ザーズデイは吹っ飛ばされる。幸い、石畳から出ることなく踏みとどまることができたが、白い鎧に軽くひびが入ってしまった。
「まさか、今不具合が……頼む、持ちこたえてくれ!……水鳥斬っ!!!」
自身を叱責するように声を荒げると、自らも突撃を行う。ミューレリア・ラングウェイは「今度は場外に飛ばすぜ!」とさらにバーストダッシュを駆ける。互いの剣がぶつかり合う、そう頭が意識していたが身体に衝撃はなく、ミューレリア・ラングウェイが認識したときにはララ ザーズデイの姿はなく、背後から凛とした声が響く。振り向いたとき、喉元にエペが触れるか触れないかの位置にあてられていた。
「……これで、ジ・エンドだ……降参したまえ。お姫様」
ミューレリア・ラングウェイはグレートソードから手を離し、両手を持ち上げた。ほっとした様子でララ ザーズデイがエペを喉元から離す。ミューレリア・ラングウェイはにやりと笑うと、しゃがみこんで足払いをする。倒れる直前、またしても不具合が生じて身体が動かなくなる。
「ララ……!」
リリ・スノーウォーカーが呪文の詠唱を始めると、ララ ザーズデイの右腕に入っているリリ・スノーウォーカーの杖が反応を示す。その魔力の流れのおかげで不具合が一時的に治ると、白き姫騎士は叫び声を上げる。
「リリ、これは私の戦いだ!」
「何いってんのさ、もう負けちゃうぜ〜!」
「少し、お仕置きさせてもらうよっ!!」
もう一度高く跳躍し、水鳥斬を決め背後を取ると、今度はエペを当てるのではなく回し蹴りをしてバランスを崩し、二撃目でグレートソードを場外まで蹴り飛ばすと、ミューレリア・ラングウェイをお姫様抱っこする姿勢にまで持っていく。
「ちょっとオイタが過ぎた様だね、お姫様」
「ちぇ、まけちゃったかぁ……」
「楽しいひと時だった。ありがとう」
「うん!参った!」
すっきりとした表情でそう言い放つ剣闘士ミューレリア・ラングウェイと、華麗なる剣士ララ ザーズデイの戦いに幕が下りた。ミューレリア・ラングウェイは客席にいるルーノ・アレエを見つけると、駆け寄って残念そうな笑みを浮かべる。
「あーあ、負けちゃったよ〜」
「でもとても凄い戦いだった。とても楽しそうで羨ましかった」
「えへへ。相手がよかったなぁ……あ、私次実況か、また後でね〜!」
『さーて、さくさくっといくぜ!次は巫丞 伊月(ふじょう・いつき)、セコンドが二人るなぁ。エレノア・レイロード(えれのあ・れいろーど)ラシェル・グリーズ(らしぇる・ぐりーず)だな。相手は……のぞき部実践訓練らしいぜ〜よくやるなぁ。椿 薫(つばき・かおる)』
日の光が椿 薫の頭を照らしていた。身に纏うローグというより忍者に近く、対戦相手である巫丞 伊月とよく合っていた。彼女は赤い着物を優雅に着こなす、黒髪が溢れんばかりの色気を振りまく。
「よろしくねぇ」
「楽しい試合にしようでござる」
椿 薫はじゃらじゃら、と音を立てていくつものとラップに使うアイテムをばら撒く。それを楽しげに眺めながら左半身を一歩引いて口もとを楽しげに歪める。先に仕掛けだした椿 薫はロープや鎖鎌を投げかけながら、駆けてくる。巫丞 伊月は緩やかにかわしながら、「あらあら、沢山持ってるのねぇ」と呟きながら背後を取り、綾刀を振り上げる。身を低くしてすぐさますり抜けた椿 薫は石畳を時折手のひらで叩きながら駆けていく。巫丞 伊月のセコンドは2人もいるからか、大変賑やかでお玉でフライパンを叩きながら激励(?)するエレノア・レイロードや、試合そのものよりも会場に安置されている金葡萄に視線を向けて必死にメモをし続けるラシェル・グリーズは時折いらだった様子で声をかける。
「下等生物! そんなハゲさっさとやっつけなさいです!!!!」
「お嬢!あんまりふざけていないでまじめにやっていただかないと……!」
「だそうよ、小細工はよして、まじめに攻めてきたらどうかしらん?」
「そうでござるな。もう小細工は仕掛け終わったでござるよ」
「ふふ、いうじゃないの……さ、楽しませてもらうわよ〜」
一歩引いて切りかかる際に飛び出すような勢いをつけて切りかかる。椿 薫は高く飛び上がって場外ぎりぎりの柵の上に立つ。巫丞 伊月は気がついて足を止めるが既に遅く、足元には転ばせるためのトラップがあり一度目はすんでのところで避けたが、次の着地地点にも仕掛けられておりそれにはつかまってしまう。
「っく、ふふ……やるじゃあない」
「下等生物め、なにを楽しんでるのです……さっさとやっちまえばいいのです」
「お姉さま、ああなってしまってはお嬢は楽しみ終わるまで無理ですよ……まぁ、私は金葡萄をしっかり目もできたので十分でございます……」
うっとりした表情でメモ帳を抱きしめるのを、エレノア・レイロードは冷たい眼差しで見つめる。だがそれよりもうっとりした表情でいるのが戦闘中の巫丞 伊月だった。
「ふふ。こんな安物を使うなんて……っ」
引っかかった縄(ホームセンターでセール品に並ぶような安物)のトラップをそれごと引っ張りあげ、全ての石畳の下に仕掛けられていたトラップを引きずり出して壊す。椿 薫は目を丸くして驚くが、すぐに飛び上がった石畳の上に飛び乗って、上空から巫丞 伊月に向かってアーミーショットガンで狙いを定める。巫丞 伊月は自らに絡み付いているロープを用いて振りマワそ、絡み付いている石畳で壁を作る。弾は綺麗にはじかれてしまう。
「くぅ、人のトラップを逆に利用するとは……」
「まだまだねぇ……せっかくのステージなんだから、もっと楽しんでいかなきゃダメよ?」
宙から降り立つ椿 薫に切りかかろうと綾刀を引き抜いて振り上げると、笛の音が響いた。
二人がはっとして手を止めると、実況席からかしこまった声が聞こえる。
『ええ、ただいまの試合の結果……巫丞 伊月選手の失格となります』
「あらあら?なんでかしら?」
『石畳から降りたので失格です』
巫丞 伊月が足元を見ると、剥がしてしまった石畳がそこにはなかった。運よく、椿 薫の足元はまだ石畳が存在していた。
「あらあら、うふふ……それじゃあ仕方ないわね」
「楽しかったでござる。あんなふうにトラップを使われるとは思っていなかったでござる」
「私も楽しかったわ。もっと腹黒く戦えなかったのが、ちょっと残念ね」
そういうと、二人は互いに握手を交わして試合は終了した。
『あの下等生物にはがっかりなのです!!』
『ええと、巫丞 伊月選手の代理で解説席に座っていただいているのは、エレノア・レイロードさんです。レイロードさん、先ほどの試合は残念でしたね』
『あの下等生物を自分の腕で倒せないなんて、あのハゲも無能なのです』
『ちょ、ちょっとご機嫌斜めのようなので、今回の選手紹介は私が行いましょう……次なる選手は、ルカルカ・ルー選手、セコンドは夏侯 淵さんです。お相手は……あの薔薇の学舎出身、麻野 樹(まの・いつき)選手ですね』
「ルーノ〜! 変態学舎の仇とるからね〜!!」
「まぁ、あの後じゃあ仕方がないか……」
短い胴着で会場内の視線を独り占めするルカルカ・ルーは客席のルーノ・アレエに声をかける。それを受け、背がやけに高いパーカー姿の青年は三叉槍という名のランスを構えてうなだれる。
「それにしても、そんな格好じゃ目に毒だぞ」
「そんな心配よりも、自分の心配したらっ!」
ルカルカ・ルーは武器を持たず拳を作り、すぐさま駆け出して胴着がはだけるのも構わずに突っ込んでくる。麻野 樹は少しばつが悪そうに避けながら三叉槍で何とかならないかと足払いを仕掛けるも、それもすぐさま飛び上がって避けられてしまう。
「くぅ、あの格好じゃ攻撃しづらいなぁ……手を抜いたら失礼だろうし……」
「抜いてもいいよ、私は勝ちたいからね!!」
背後に回って回し蹴りを加えるも、三叉槍で受け止める。すぐさまルカルカ・ルーは間合いを取って構えを治す。呼吸はほとんど乱れていないものの、お互いに決定的な一撃を加えられないでいた。ため息に近いと息を漏らし、麻野 樹は三叉槍を構えなおす。
「いつまで経っても進まないのはよくない……本気でやらせてもらうか!」
そう叫ぶと自らも突撃し、懐にあえて飛び込んでくるルカルカ・ルーの身体をなぎ払う。厚手の胴着のおかげで肉にまでは達さなかったようだが、胴着を結んでいた紐が完全に切れてしまう。びりびりになった胴着の中からは、ルカルカ・ルーの白い柔肌が露呈され、観客が目の当たりにすることとなった。大慌てで麻野 樹はパーカーを脱いでルカルカ・ルーに投げつける。
「諦めて、降参してくれ。そんなんじゃ戦えないだろ」
「でも、私まだちゃんと着てるよん?」
その声に振り向くと、とてもきわどいラインの黒ビキニを纏っていた。だが下ろしたランスを構える間もなくくるりと身体を回すルカルカ・ルーの一撃をかわせなかった。
「轟雷閃……あわせ技! い、な、ず、ま、きぃーーーーっく!!!」
だが、ルカルカ・ルーの一撃は勢いあまって場外へと飛び出してしまい、二人仲良く失格を言い渡されてしまった。
審判に対する物言いは長くなりそうだ、ということで二人仲良く実況席で文句を聞くことになった。結局は失格を取り消してもらえなかったのだが。
「ふみゅ〜〜ん……」
「はぁ、俺もまだまだ修行が足りないか……」
『あの審判納得いかない〜!』
『確かになぁ。せめてサドンデスだろ?』
『まぁまぁ、トーナメントはまだまだ続きますからね〜さて、次の選手はセコンドだった夏侯 淵さんが紹介してください』
『ああ、次は青い魔法使いセシリア・ファフレータと眼鏡のソルジャー大草 義純だな』
「まさか、ここで当たることになるとはのぅ」
「そうですね……まぁ、どちらが勝ってもルーノに一粒わたせればそれで!」
「うむ、ひとまず楽しむとするか!」
二人は握手を交わすとすぐに間合いを取る。互いに近接が一番得意なわけではないのは分かりきっていた。
「炎の精霊が紡ぐ魂の調べ、その身に受けるがいい! ファイヤーボールっ!」
「うわ、さすがに強力ですね!」
セシリア・ファフレータの捧げた杖の先にいるファイヤーボールはかなり大きく投げられてはひとたまりもないと思いかわすのだが、なんとそのファイヤーボールは追尾ミサイルのように追いかけてくるのだ。
「なんですかこれ!!」
「あはは! 面白いじゃろう? この間思いついたんじゃ」
「ええい」
大草 義純はハンドガンを抜いて射抜く。ペイント弾ではあるが、軌道くらいは変えられるだろうと考えて放つと、炎球の中心を射抜くと大きな爆発音と共に炎球はいなくなった。
「ふぅ、あんなものを何度も撃たれたらたまったものじゃない」
「まだまだぁ! 雷の精霊が奏でる悲しみの旋律、彼の魂を響かせよ! サンダーボルトっ!」
続々と放たれる魔法の数々ではあったが、さすがに最初のファイヤーボール以外追尾してくるものはなくすんでのところで避けてペイント弾を打つが、セシリア・ファフレータの青い魔法使いの衣服をところどころピンク色に染めるのが手一杯だった。
「これでとどめにしてくれるわ……水の精霊の嘆きを聞け、打ち震えよ! アイスストームっ!!」
「いまだ!!」
氷術が完成する前に詰め寄ると、銃を直接セシリア・ファフレータに投げつけるが、残念ながらかわされてしまう。氷術のど真ん中でその身体を凍りつかされ、降参を宣言する。
「はぁ、さすがに相手が悪かったみたいですね」
「いやいや、私も楽しかったぞ。新しい魔法を色々試せたからのぅ」
「約束、頼みますね」
「任された!」
『というわけで、すんなり負けてしまいました』
『いやいや、それより大草選手、なんですか? お約束って……』
『え?あ、それは……ああっと、次の選手は、レイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)とあの薔薇の学舎の生徒、クライス・クリンプト(くらいす・くりんぷと)です。セコンドにつくのはオトコヴァルキリーローレンス・ハワード(ろーれんす・はわーど)ですよ〜』
「……明智 珠輝さん……っ!!」
なにか因果があるのか、金の騎士クライス・クリンプトは愛らしい顔立ちからは想像できないような、怒りの表情を浮かべる。客席から、「おお、クライスさん! 私が応援していますよ〜」と明智 珠輝の止めとも言わんばかりの声援が聞こえた。
「薔薇の学舎の威厳を取り戻すためにも、ここで負けるわけにはいかないんです!」
「いい意気込みだ。負けた場合は一月は覚悟してもらうか」
何がなんだろう……心の中で叫び声をあげたクライス・クリンプトだった。
レイディス・アルフェインは両手持ちの剣の柄に手をかけると、対戦相手に向かってにかっと笑顔を向けた。
「俺は剣士レイディス・アルフェイン。いざ、尋常に勝負だぜッ!」
「薔薇の学舎所属、クライス・クリンプト。よろしくお願いします!」
いい相手だ。ローレンス・ハワードは銀髪の剣士を見てそう直感した。主の力を引き出すために必要なよきライバルとして、きっと彼はいい戦いをしてくれる。
セコンドからの言葉は期待しないように、クライス・クリンプトは短槍を構えてバーストダッシュで間合いをつめる。迎え撃つ剣は1メートル20センチはある。帰し鎧とはいえ、武器ではクライス・クリンプトのほうが早く動ける。そう考え間合いがつまればすかさずチェインスマイトを打ち込む。レイディス・アルフェインは大きなその剣でチェインスマイトを受け止め、切り替えしてその勢いのまま斬りかかる。金の騎士は盾で防ぐことよりも、身をかわして大剣を振り下ろさせる。石畳にめり込むと銀髪の剣士は蹴りで石畳から大剣を勢いづけて取り出し、そのまま轟雷閃を放つ。さすがに避けきれずに、盾を構えてその一撃をしのごうとする。目の前で受けてしまったがために衝撃が強く、尻をついてしまう。
「クライス!」
「大丈夫!」
「俺の一撃を耐えるなんて……なかなかやるな……」
「まだまだです」
勢いをつけて立ち上がると、すかさずバーストダッシュで間合いをつめる。突き攻撃ではなく振り払いの攻撃を繰り返して、のけぞったところをさらにバーストダッシュを駆け、盾を構えて押し出そうと考えるも、レイディス・アルフェインも大剣を石畳に突き立てて踏ん張る。
『これは凄い戦いですね。会場内が固唾を呑んで見守っていますよ』
激しい攻防が続き、互いの呼吸が激しく乱れ始めた。クライス・クリンプトは手を上げて宣言する。
「レイディスさん、さすがに僕はそろそろ限界ですよ」
「お、俺もだ。次の一撃で終わりにしよう」
「はい!!」
互いに目いっぱい息を吸い込み、ゆっくりとはいた。それが最後の一撃であるのだと知らしめるかのように。
「「はああああああああ!!!」」
互いの一撃が、互いに最後の力を振り絞った一撃が相殺された……かにみえた。倒れたのは、クライス・クリンプトだった。失格を言い渡されると、セコンドについていたローレンス・ハワードが無言でクライス・クリンプトを抱きかかえた。
「ありがとう。いい戦いだった」
「へへ、ぼろぼろだ。クライスが起きたら伝えてくれないか? また、いい試合をしようって」
『このたび負けた選手がおられませんでしたので、特別ゲストに警備班で本日金葡萄を見守ってくださっている宇都宮 祥子さんです』
『……警備のついでだからいいけど……』
『先ほどから試合を見ていてどうですか?』
『参加しなかったのを少し残念に思っているわ。こんなに楽しそうに戦っているのは、なかなかみられないかも』
『ありがとうございました! さて次は妖艶なボンキュッボンの吸血鬼アズミラ・フォースター(あずみら・ふぉーすたー)選手、セコンドはパートナーの弥涼 総司(いすず・そうじ)さんとぺっとのなつめちゃん。対するはイルミンスールのプリースト笹島 ササジ(ささじま・ささじ)選手です!』
イルミンスールの見慣れた制服に身を包んだ青年は平伏して挨拶をする。それを見てアズミラ・フォースターはびっくりして目を丸くする。
「笹島と申します。どうぞよしなに」
「え、ええ。よろしく……私はアズミラ・フォースターよ」
笹島 ササジが立ち上がるのを待って、アズミラ・フォースターは間合いをつめようと歩き出す。
「バーストダッシュ!!」
「え?」
一気に間合いをつめられるのかと思いアズミラ・フォースターは身構えたが、笹島 ササジが向かったのは反対方向。客席からも疑問符が飛び交いそうな状態だった。しかも当の笹島 ササジは顔を真っ青にして震える手でメイスを握り締めている。すこしため息を漏らして肩をすくめると、手を広げて一時休戦を示すと、首をかしげてアズミラ・フォースターは問いかけた。
「もしかして、怖いの?」
「いえ、違います……僕は、この試合に出て変わるためにきたんです。今までのように不運の真っ只中みたいなんじゃなく、自分で切り開いていける力を手に入れるために!」
「……ふふ。あなたの血には惹かれないけど、その心意気にはくらっときちゃうわね。なら、私も協力してあげる!!」
今度は容赦なく駆け出す。笹島 ササジも光精の指輪の力で遠距離攻撃を図るが、アズミラ・フォースターのほうが上手だった。華麗なステップで避けると、そのたわわな胸が揺れて会場内の巨乳好きたちが目をハートマークにする。
「男なら、正々堂々かかってらっしゃいな!」
「はい!」
対戦相手に激励されながら、笹島 ササジはメイスを取り出しアズミラ・フォースターに殴りかかる。一撃目は避けられてしまうが、バーストダッシュでさらに間合いをつめるも、これも避けられて背後から手刀を加えられる。重い一撃で回復のことをすぐに考えたが、だがそれよりも今ここで自らの一撃を入れることがなによりも大事だといわれている気がした。
残ったSPをバーストダッシュに当てることを決め、幾度もメイスで殴りかかろうと移動を繰り返す。外すたびに手刀、ゼロ距離での火術砲撃を加えられる。
「あんなに楽しそうなアズミラは、久しぶりに見るな……な、なつめ」
セコンドにいる弥涼 総司は肩に乗るフェレットに話しかけながら、試合を見守った。笹島 ササジの最後の渾身のバーストダッシュがついにアズミラ・フォースターに体当たりを成功させ、メイスでなぎ払ったが、感触がなかった。やはりダメか、そう笹島 ササジが思って意識を手放そうとした瞬間だった。
「まいったわ」
アズミラ・フォースターの凛とした声が会場内に響いた。
「よかったのか?アズミラ」
「いいのよ。私が勝っても得るものはあまりないけど、彼にとってここでの勝利は大きな意味になるから」
『わああああ!! スミマセン! お願いですから治療費の請求だけはご勘弁をっ!!』
『……笹島選手、大丈夫ですか?』
『え、あれ?』
『フォースター選手が、可能ならここで休んでいくといいとこちらにおいていかれたんですよ〜』
『アズミラさん……ぼ、僕は……自分の不幸から抜け出る光明を……今度こそ掴んで見せます。ありがとうございます!』
『さて、次の試合に参りましょう。感動の涙はここで流してはいけませんよ〜まだまだ大会は続きますからね!』
『は、はい……次は百合園女学院から、ネノノ・ケルキック選手、セコンドにつくのはレロシャン・カプティアティさんです。対するは蒼空学園の一式 隼(いっしき・しゅん)選手と、セコンドは李 零仙(り・れいせん)さんです。ええと……ぱっと見、こう、戦力にものすごい差があるように見えるのですが……』
『大丈夫ですよ、しょっぱなからバーストダッシュで逃げた笹島選手には負けますって』
実況席が不幸な空気に包まれている中、会場では愛らしい歌声が聞こえる。
「オ〜オ〜ネノノ・ケルキック〜♪ 可憐に戦う乙女〜♪
オ〜オ〜ネノノ・ケルキック〜♪ 君は百合園の誇り〜♪
オ〜オ〜ネノノ・ケルキック〜♪ 可憐に戦う乙女〜♪
オ〜オ〜ネノノ・ケルキック〜♪ 君は百合園の誇り〜♪」
会場内はその歌声に合わせて合いの手まで入る盛り上がりを見せた。カンフー義を着て銀髪を纏めた一式 隼はぽかんとしてそれを耳にしていた。パートナーの李 零仙ははっとして、申し訳なさそうに声をかける。
「……すまん、隼。次までにわしも応援歌を用意して」
「しなくていい。しないでほしい、頼む……」
顔を真っ赤にしてセコンドの口をふさごうとしているプラチナブロンドの髪を持つ機晶姫は、ようやく歌うのをやめた主人に幾度も頭を下げ、「過激な応援は控えてほしい」と願い出るが、主人は唇を尖らせて「え〜」とぶうたれる。そこを何とか、と押して歌うのをやめると約束してくれた。
「申し訳ありません、お待たせいたしました」
「いや、なにやら大変そうだな。とりあえず、よろしく頼む」
無言で一式 隼の手をとって握手を交わすと、ネノノ・ケルキックはカルスノウトを、一式 隼は朱塗りの棍抜いて間合いを取って構える。しばしの沈黙は、剣士同士の戦いであればもう会場も見慣れた光景となっていた。
先に切り出したのは、別の応援歌を歌おうとする主人に反応してしまったネノノ・ケルキックだった。恥ずかしさを誤魔化すためにカルスノウトでの連撃をくりかえす。一式 隼は棍で一撃一撃を丁寧にはじき返しカウンター攻撃を仕掛ける。が、時折入ってくるローキックは一撃はあまり重たくないが、確実に同じ場所を狙ってくる精度を持っていた。気がついたときには遅く、片足がわずかに腫れ上がってきていた。
「あの日の特訓を思い出して! ネノノ!!」
カウンターが全く入っていなかったわけでもなく、ネノノ・ケルキックの息もかなり上がっていた。それを認め、長期戦は不利と認識して間合いを取り直すと、一呼吸をおいて技を繰り出す。
「紫電一閃!!」
「く、まずい!」
「大丈夫、できる! 勝てるよ!!」
ネノノ・ケルキックは突っ込んでくる一式 隼から半歩引いてしまったが、セコンドからの応援が耳に届くと止めといわんばかりに狙い続けた一式 隼の足にハイキックを食らわせる。勢いは案の定弱まったが、次の手を考える間もなくさらに紫電一閃を繰り出され、これは避けきることができなかった。
次に意識が戻ったのは、救護室の中だった。
「ネノノ? 大丈夫?」
「レロシャン……ごめんなさい……負けてしまった」
「いい戦いだった。ありがとう」
その声に顔を上げると、対戦相手だった一式 隼だ。差し出された手をとって、握手を交わす。
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