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温水プール爆破予告!?

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温水プール爆破予告!?
温水プール爆破予告!? 温水プール爆破予告!?

リアクション


(6)13:30 温水プールの喜劇

「樹ちゃん、コタ君の準備は出来てる……! ぐぼあぁあ!!」
 緒方 章(おがた・あきら)林田 コタロー(はやしだ・こたろう)と共に水上の警戒を行っていた。しかし樹の水着姿を見ると鼻血を抑えてそれどころではなくなってしまった。
「ふっふーん♪ あんころ餅、だらしないのです」
「洪庵……大丈夫か?」
「あの、ティッシュを探してきましょうか?」
 花音は控えめに申し出たが、章は大丈夫!! と元気であることをアピールした。
「ぷーる!! おっきーのー、みずなのー。
 ……でも、おふろより、ふかい?」
 プールの底をおそるおそる眺めるコタローは、ボートが揺れたことで怖くなってしまったようだ。花音も一緒になだめているが、章の頭にしがみついて離れない。
「コタくん! 顔に登っちゃダメッ、樹ちゃんの水着姿が見えない、からっ!!」
「こたちゃん〜、樹様のお役にたつのですよ〜!」
「あうー、ねーたん、こた、ここからめーするお?」
 樹は少し笑ってこくりとうなずいた。
「怪しいモノや不埒な輩がいないかを警戒する。この作戦にはコタローの頑張りが必要だ」
「……わかったお、がんばるお。おかしなのみたら、ぺいんとらんれ、めーするおね?」
「あ、あたしも怪しい人がいたら注意します。だから、コタローさんも一緒に悪い人がいないか見ましょうね!」
 花音に優しく言われて、コタローも小さくうなずくと気合いを入れてペイント弾を装備した。


「あ、薫? うん、今、美海ねーさまと一緒にプール」
 橘に案内されたのちに爆弾撤去に協力することにしたスクール水着の沙幸は、同じくスクール水着の美海とともに排水溝やコースロープの探索をしていた。胸元にのぞみと書かれたスクール水着の風森 望(かぜもり・のぞみ)は、白い肩を出したビキニタイプの上半身に淡い緑のパレオをまとっているノート・シュヴェルトライテ(のーと・しゅう゛るとらいて)を連れて、可愛い水着の女の子に囲まれているのを楽しんでいた。今のところ怪しい人影は見ていない。美海は電話中の沙幸に対し、水着が少しずれているからといって人目をはばからず肩ひもの位置などを直して遊んでいる。
「あら、沙幸さん、バストのサイズが合ってないんじゃなくて?」
「美海ねーさま……い、いま電話中ですっ」
 いやいやとサイドテールを振りながらも、携帯電話を持っていないほうの手は水をかくばかり。美海の手を振りほどくことにも使われず、電話から声が聞こえないように工夫することも思いつかないようだった。そんな2人をニヤニヤと見ながら、望もノートの背後にまわり水着を直そうとする。
「ちょっと、何しますの!?」
 ノートは怒るが耳元で、犯人をごまかすための偽装です。とごまかした。
「お嬢様。そのままの格好でお聞きくださいませね。
 温水を循環させる為にプールの水を吸い込み、暖めて、送り出す為の場所が各1つずつあるはずです」
「ぐ、ぐう。プールの大きさから考えて……」
「吸水口は大きくなります。となると事故防止の為に付近は遊泳禁止になるはず。おっと、申し訳ありません。ひもが外れてしまいました。おほほ!」
 慌てて胸元を抑えるが、白いビキニは排水溝に引っかかってしまった。
「の、望! 今はその作戦よりもわたくしの水着を優先するのですわ!」
「ああら、大変ですわねぇ」
 望みはのんびりとした動作で時間をかけて吸水溝まで拾いに行った。
「あ、ありましたの!?」
「それが、タイミング良くと言いますか、遊泳禁止で入れませんでしたの。ほほほ」
「いいから取ってくるのですわ!!」
 ノートを美海に任せると、望は防水携帯で薫にメールしながら吸水溝付近を調べた。水着は無事に回収できたが怪しいモノは見つからなかったのだ。
「んっと……。えっ、女子更衣室も調べるの?」
 継続して薫と電話をしている沙幸は、のぞき部が女子更衣室も調べることを知り頬を赤らめた。美海はそんな様子を面白がるように眺めている。
「それは仕方ないわよ沙幸さん。あ、鍵を占めるのを忘れてしまったかも。くすくす」
「ええ!?」
「でも、鍵はどこかに忘れてしまいましたわ。困りましたわねぇ」
 美海は沙幸のすがるような視線をわざと邪険に扱いながら、口元はにやにやとしていた。


 神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)レイス・アデレイド(れいす・あでれいど)にを潜らせて調べていた。プールサイドはほかに調べている人がいるようなので、神楽坂はレイスを見守りながら温かいお茶を飲んでいる。
「爆弾ですか。まあ、こんな目立つ場所には、置かないと思いますが」
 どこから出てくるのか原理は不明だが、飲んでも飲んでもお茶は不思議な事に湧いてくる。
「レイス、陰になっているところをよく探すのですよ」
「爆弾ねえ……また、はた迷惑だな〜。しかし、気持ち良いな〜このプ−ル」
 ざぶりと潜ってみるが一般的なプールとの違いは見つからない。
「う〜ん、何も無いぜ?この底には……第一、爆発物なら濡れたら、駄目だろう?」
 まったく……お茶よりも俺にかまってくれよ。……そうだ!!
「翡翠〜! 足つった、手ぇ貸してくれ!!」
 急にバタバタと手足を動かすレイスを見て、神楽坂はやれやれと肩をすくめた。湯呑を濡れない位置に置くと手を伸ばしてやる。
「うっそだよーん!!」
 思いっきり引っ張ると神楽坂はレイスにかぶさるような形で落っこちてきた。水しぶきが派手な音を立てて、水を飲んだ神楽坂が少しせきこむ。
「え? あ〜びしょ濡れですよ? 服のまま、泳げですか?」
「悪い、悪い。水もしたたる男の一丁上がり〜疲れたから、交代、駄目か?」
「まったく、あなたという人は……とりあえず、上がりましょう」
 神楽坂はレイスを置いて着替えるためにスタスタと出て行ってしまった。まずい、怒らせた? 心配になったレイスは神楽坂の湯呑を拾うと謝るために走って行った。


 鏡 氷雨(かがみ・ひさめ)はプールサイドをとことこと歩いていた。すると排水溝の中にビニール袋に入れられた小さく、ガムテープでぐるぐる巻きにされた黒い小さな段ボール箱が見える。
「ふぇ? コレ何?」
 首をかしげながらそれを、よっこいしょー、と取り出してみると何やら音がするようだ。
「チクタク……時計?」
 不思議に思いながらも、重い排水溝のふたを持ち上げて疲れてしまった氷雨は休憩できるところを探すことにした。
 クロス・クロノス(くろす・くろのす)は事件のうわさを聞いて爆弾探しを手伝っていた。他校生のため普段あるものとそうでないものの区別がいまいち付かないためパトロールに力を入れている。氷雨と反対側のプールサイドを制服の裾が濡れないように持ち上げながら歩いていると、エルシュ・ラグランツ(えるしゅ・らぐらんつ)浅葱 翡翠(あさぎ・ひすい)が碁石拾いをしてるのを見つけた。
「あのう……爆弾があるかもしれないので、気を付けてくださいね?」
 控えめに話しかけたクロスに対して、ディオロス・アルカウス(でぃおろす・あるかうす)はニコニコと主人の代わりに返事を返した。
「この辺は私も見てみたのですが、問題ないようでしたよ。そうだ、もうすぐ3時ですしあなたも一緒にお茶を楽しみませんか」
「は、はぁ……」
 ディオロスはプールサイドのテーブルに手作りケーキやプリンを広げ、3人分のコップを用意していた。
「コーヒー、お嫌いでしょうか」
 私、コーヒーは嫌いだったでしょうか?? 考えていなかった展開に驚いてかたまっているクロスに、ディオロスは濡れにくい位置の席を座りやすいようにひいてニコニコとしていた。
「で、では一杯いただきます」
 クロスは大がまを壁に立てかけると、少し緊張しながら椅子に腰かけた。


 鈴倉 虚雲(すずくら・きょん)はパートナーにプールに誘われたものの、当人が来ないので手持無沙汰なようだった。なんだか悪質ないたずらで困っているらしいので、水着は持っていたし泳ぐついでに捜索している。が、先ほどからメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)や沙幸の水着姿を見てあまり集中できないでいた。メイベルは白いワンピースタイプの水着を着ており、浮き輪でぷかぷかとただよいながら楽しそうに歌っている。
「それにしても、水着の女の子可愛いな」
 と、ふと潜水しながら離れたコースを見てみると床に石のようなものが散らばっている。何人か周りにいるようだが、まあ、暇だし、困っているかもしれないので念のため行ってみることにした。


 エルシュはプールサイドにいる女性にはあまり興味がない様子で、浅葱との碁石探しゲームを楽しんでいた。浅葱は一応プールの底に爆弾があるかも見ているようだが、エルシュはほとんど人任せで遊んでいる。
「翡翠はバレンタインにチョコもらえたか?」
 にやにやと挑発してくるエルシュに対して、ぶっきらぼうに答える浅葱。
「私は家族とクラスメートから義理のを貰った位ですね……」
 聞かれたから答えるが、なんだろう、若干いらっとする……。
「そういう貴方は貰えたのです?…ゼロは寂しいですよ?」
「俺?幾つかはね。本命はチョコじゃないものまでくれたぜ」
「な、ななな! なんですかそれは!!」
「…そりゃ、子供には教えられない」
 私は子供じゃありません! そういって浅葱は碁石の一つを軽くぽいっと投げた。虚雲は投げられた小石をキャッチするとそれをしばらく観察し、遊びの道具であるらしいと判断した。
「お、おまえも一緒に遊んで行く?」
「構わんぞ」
 エルシュが虚雲に話しかけると、浅葱はぷいっとそっぽを向いた。
「じゃ、私は上でコーヒーでももらいますから!」
 ざぶざぶと水を掻きわけてプールサイドに上がろうとする浅葱に、虚雲はタイミングが悪かったかなーと申し訳なさそうにしていた。
「なあ、いいのか?」
「いいのいいの、ああいうので怒るのが子供なんだよなー!」
 プールサイドで足をかけた状態でカチンと来た浅葱は、文句を言おうと振り向いた際にバランスを崩して頭から落ちてしまった。プール底に頭を打ったのかもしれない。ごばぁ、と水面に空気の泡が出たのを確認すると慌てて虚雲が潜って浅葱をすくい上げる。
「お、おい、大丈夫か!」
 話しかけるが白目をむいて返事をしない、どうやら水を飲んでいるようだ。
「し、しかたがない……人工呼吸だ!!」


「あ、いい匂いがする〜♪」
 温かいコーヒーと幸せな甘い匂いに惹かれて、鼻をひくひくさせながらクロスとディオロスのそばに氷雨がやってきた。
「ボクもお菓子を持ってるの。交換っこしない?」
「たくさんありますから、いくらでも食べていってくださいね」
 新しい客人をもてなすために、ディオロスはもう1杯コーヒーを入れた。それとも、こちらのお客様には紅茶のほうがよかっただろうか。
「そういえば、爆弾は見つかったのでしょうか?」
 クロスが首をかしげながら尋ねると、氷雨は先ほどの黒い小さな段ボールを取り出した。ピピピピ、ピピピピ。先ほどとは違う人を急がせるような音を出している。
「あのね、これ、さっき拾ったんだけど音が止まらないの。どうすればいいかな?」
 かわいらしく小首を傾げた氷雨が持っている段ボール箱、それを見ると大人2人は顔面蒼白になった。クロスは持っていた大がまで小箱をツンツンと付いている。
「本当に何なんだろうね?」
 氷雨は臆することなくガムテープをはがしていき、中から目覚まし時計とバーカと書かれた紙が入っていた。真菜華がしかけた爆弾のうちの1つだった。
「なーんだ、いたずらだったね」
 氷雨はほっと胸をなでおろすクロスに向かって、にっこりとかわいらしく笑った。

月夜は黒いビキニを着た姿で、浮き輪で遊びながら刀真を探していた。先ほどまで一緒にいたのだが、一体どこに行ったのだろうか? プールの中を探していたはずだけど……。
「ふふーん♪ すいてる温水プールはいいなぁ」
 月夜から離れたところでは変熊 仮面(へんくま・かめん)は均整のとれた美しい体を惜しげもなく大衆に披露し、得意の平泳ぎで周囲の話題をさらっていた。彼が泳いだ後には不思議な事に薔薇の花弁がただよい、彼が足で水をひとかきするごとに背後にいる若い女性陣から黄色い悲鳴があがった。当然彼は生まれたままの姿で何も身につけていない。それでも大丈夫。だって、それが変熊 仮面だから。もともと全裸だもん。
「待てぃ、変熊!!」
 突如、プールからあり得ないジャンプ力で何者かが飛び出してきた。太陽を背に受けたその顔は逆光ではっきりしない……、いや、違う! 買い物袋に穴をあけて被っているのだ。しかし顔の特異性よりも下半身に何も身につけていないことのほうが目立った。
「俺は変熊のライバル変能マスク! 勝負だ変熊!」
 月夜はその人物が自分に近しい者の気がしたが、今はいると帰ってややこしいことになりそうなので無言で見ていることにした。
「ほう、よく来たな変能マスク。平泳ぎなら1回勝負してやるぞ」
「偶然だな、俺も平泳ぎか背泳ぎで申し込むつもりだった」
 変熊と変能は飛び込むために一度プールサイドに上がり、100メートル、ドルフィンキックルールで合意した。


……。


 数分後、鼻歌を歌いながら光学迷彩で姿を消してシャワー室に向かう変熊とがっくりと膝をついた変能の姿があった。
「……正気に返れ」
 月夜による、ドスリと重い右ストレートを食らった変脳は失神したのちに不審者として連行されていった。