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結成! ショートカット同好会!!

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結成! ショートカット同好会!!

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3.危機!

 振り返った女の子は、女装した椿薫(つばき・かおる)だった。意外にも目がくりっとしていて可愛らしい。
「ねぇ、写真撮らせてくれない?」
 ヤチェルがそう尋ねると、薫はにこっと頷いた。
「いいでござるよ」
 追いついた恭司は薫を見て、何となく見覚えがあるような気がした。
「ありがとう!」
 女の子から少し離れ、カメラを構えるヤチェル。
「うん、なかなか可愛いじゃないか」
 と、ソールも薫を見ている。
 篤子は真のショートカットに認められなかったことを悔しく思っていた。
「そうですか? わたくしにはそうは思えませんが」
 ヤチェルが一枚写真を撮ると、ソールが一歩前へ出た。
「ヤチェル、もう少しこっちの方から撮ったらどうだ?」
 と、薫の斜め後ろへ回る。
「この辺?」
 移動してみると、綺麗なうなじが見えた。健康的な肌がまた美しい。
 二度目のシャッターを切ると、ソールがまた口を開く。
「うん、やっぱりここは脱いでもらって、水着にでも――」
 すかさず翔がソールの腹を殴った。
「うぐっ! ちょ、かけ――っ!」
「申し訳ありません、馬鹿天使が余計なことを口走って」
 と、言いながら、ソールが黙るまで制裁を加える。
 その光景に目を奪われた一同を見て、薫は言った。
「水着が見たければ案内するでござる」
 そう言って薫はヤチェルの手を取る。
「え、どこ行くの?」
 ヤチェルは嫌がることなく、むしろときめいている様子で連れていかれる。
 はっとした叶月たちも、慌てて後を追った。

 辿り着いたのは温水プールの前だった。
「ここで張っていれば、可愛いショートカットの女の子も見れるし、その先だって……」
 言いかけてはっとする薫。
 いつの間にか目の前にはハリセンを構えた恭司が立っていた。
「一体、何を考えているんですか」
 と、勢いよく薫の頭を叩く。薫のかつらが落ち、恭司は確信した。
「やっぱり、のぞき部だったんですね!」
「ひゃあああ! 逃げるでござるーー!!」
「待ちなさい!」
 正体を現した薫を追っていく恭司に、牙竜もまた便乗していった。
「のぞきはこの、あつい部部長が許さん! ファイファー!
 そして残されたヤチェルは、ふと思う。
「……そう言えば、あの子の手、柔らかくなかった」
 今更である。

 真面目にショートカットの女の子の写真を撮る里也。
 朔とカリンはやることがなくて退屈していた。
「……平和、だね」
「うん」
 他のみんなも今頃、どこかで写真を撮っているのだろう。何もないなら、それが一番良い。
「おお、あんなところにもショートカットが」
 と、歩き出す里也の後を付いていく。
 次なるターゲットは、金髪で毛先が内側に巻いたショートカットの少女だった。
「すみませんが、写真を撮らせてもらえますかな?」
「あ、はい。いいですけど」
 少し怪しんだものの、少女は了承してくれた。
 里也がカメラを構え、最も綺麗に写る位置を探す。
 近くの茂みから何か音がした。朔がそちらに目をやると、薔薇学の赤マントが見えた。
 はっとする朔。
「変態……っ!」
 と、茂みへ向かっていく。隠れていた変熊は姿を現すと、シャッターを切ろうとしている里也の前へ。

 カシャッ

 可憐な少女を遮るように、すごく良い笑みを浮かべてスキップしている変熊、もとい変態。

「……」
 見てはいけないものを見てしまった、と、少女は思った。
 そしてそのまま変熊は、高速でスキップしながら逃げていく。
 カリンも朔と一緒に変熊を追いかけていき、残された里也は冷静に言う。
「悪いが、撮り直させてもらえますかな?」

 花壇の花に水をやっていたアリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)は、かけられた声に振り向いた。
「はい、何ですか?」
「ちょっと協力してほしいんだけど、写真を撮らせてもらえないかしら?」
 にこにことカメラを構えたどりーむだった。ふぇいとがどりーむの袖をぎゅっとつかんでいる。
「え、写真? いいけど、何に使うの?」
「同好会の活動でね、ショートカットの女の子を写真に撮ってるの」
 アリアは納得した。
「なるほど、それなら協力するよ」
「やった!」
 ではさっそく、と、どりーむがカメラを構える。
 ――はっはっは、捕まえられるものなら捕まえてごらんなさい!
 そんな声がしたかと思うと、どりーむは全裸の男がこちらへ向かってきているのに気づいた。
「待て、変態!」
 どうやら追われているらしい。高速スキップをしながら、声に答える変熊。
「女の子がそんな言葉を使っちゃいけないよ! 私の美しさに嫉妬するのは分か――っ!」
 思わずどりーむが避けると、変熊はその先にいたアリアと正面衝突した。
 めきっ
 止まり切れなかった変熊の頭が、嫌な音とともに壁に突っ込む。
 追いついた朔は、その様子を見て思わず唖然とした。
 両目を開けたアリアは、自分の上に全裸の男が乗っかっていることに気付く。男は気を失っているが、死んではいないらしい。
 アリアはふと、胸部に異変を感じた。何かが当たっている……明らかに反応を示す、ナニかが。
「きゃああああああああ!!!」
 セクハラでは表現しきれない事態に、アリアはただ叫んだ。
「いいわ、その表情!」
 ぞくっとしたどりーむがカメラを構え、何度もアリアへ向けてシャッターを切る。
「!」
 朔はすぐに変熊をどかした。
 そしてカリンがアリアを宥めている間に、朔はどりーむからカメラを取り上げる。

 恭司と牙竜は帰ってこなかった。
 復活したソールがヤチェルへ声をかける。
「やはりショートカットは本物に限るな」
「ええ、そうね……」
 ヤチェルは落ち込んでいた。
 ……ショートカット同好会の会長ともあろう自分が、まさかニセモノに騙されるなんて。
「だから無謀だって言っただろ」
 と、叶月が言う。彼は怒っているというよりも、呆れていた。
「もっと違う方法を考えろよ」
「そうね……カナ君の言うとおりだわ」
 ふいに、篤子が再びショートカットを晒した。
「元気出してください、ほら見て」
 夕日を浴びて輝く篤子の髪。
「……篤子ちゃん」
「気が済むまで写真、撮って下さい」
 と、にっこり笑う。
 ヤチェルはカメラを構えた。

「一体何をやっているんですか?」
 つかつかと近寄ってきた千代に、ヤチェルたちの表情がこわばる。
「な、何って、同好会の活動です」
「同好会?」
「そう、俺たちはショートカット同好会だ」
 そう言ったソールを千代はじっと見つめる。
「それで、その活動というのは?」
「ショートカットの女の子を、写真に撮ることです」
 千代はピンときた。
「やっぱり。さっきも見ましたよ、あなたたちのお仲間を」
「そ、そうですか……」
「ところで、盗撮なんてひどい真似はしてませんよね?」
 ヤチェルたちははっとした。
「とんでもない!」
「堂々と声をかけてから撮ってるに決まってるだろ」
「そうです、わたくしたちはそんなこと」
 千代の視線が冷める。
「本当に?」
「ほ、本当ですっ」
「疑うのか? 俺たちは決して怪しくないぞ」
 と、ソールは翔の視線を感じた。違う意味で、怪しい。
「もしやっていないとしても、盗撮は犯罪ですよ」
「だからやってないって言ってるでしょう」
「肖像権の問題に発展することも大いにあり得ます」
 言い返していた声がピタリとやんだ。
「……肖像権?」
「そうです。勝手に写真を撮っていたと知られたら、撮られた方はどう思うでしょうね?」
 言葉が出てこなかった。
 黙りこむヤチェル達へ、千代は言う。
「一つだけ解決策があります。ミスショートカットコンテストを開催するのです!」