リアクション
◇ 「何なんだ、ったくよぉ!」 追い詰めたと思った敵が回復して立ち上がり、バリケードに近づけば落雷と氷嵐のオンパレード。 更には戦場の真ん中で「梅茶漬け!」と叫びながら暴れまわる不可思議な敵まで出てくる始末。 頼りにしていた綾乃は、この状況に見切りをつけて既にリーダーの下に退却をしている。 「ん? おい、あそこ……」 正面から外れたバリケードに僅かな隙間を見つけた一人が、いやらしく笑いながら顎を上げる。 都合の良い事に、何の攻撃も防壁も無い。 「よっしゃー! 埋蔵金は頂くぜぇー!」 見た目に似合わず綺麗に一列に揃いながら、ならず者達がバリケードの合間を走る。 が、その瞬間に最前を走っていたスパイクバイクが弧を描き吹き飛んだ。 その後ろのバイクは横転し、バリケードに車体を埋めていく。 「一、二、三……四台か。思ったよりも少ないな」 疾走するスパイクバイクのタイヤを狙撃した夜空が、スナイパーライフルを片手に、横転したバイクが重なり転がっていく台数を指折り数える。 限定した箇所を通過するバイクのタイヤを狙って後続のバイクと同士討ちを狙う為に、皐月と共にわざと隙間の開いたバリケードを組んだ甲斐があった。 「だから、車間距離に注意って書いておいたのに。これだから人の忠告を聞かない連中は困るのだよ、全く」 方向転換して狙撃を免れたバイクに向かって火炎を放ちながらオフィーリアが短く言い捨てる。 後方から、バイクを降りて直接攻撃を仕掛ける者の足元を夜空が狙撃。足が止まった所を誠一が元居た場所まで蹴り飛ばす。 皐月は、吹き飛んでいったならず者の事は気にせず、転倒して力無く起き上がるモヒカンの頭を愛用のギターで殴り倒していた。 「ちくしょう! ナメやがって!」 バリケードに開いていた隙間がバイクの転倒で埋まった上に、黙々とギターを振りかぶって頭部を打ち据える様子を見て、ならず者達は大きく旋回し別のルートを探し始めた。 だが、先程までバリケードが張られていなかった箇所までいつの間にかキッチリと仕上がっている。 立ち並ぶ防壁をなぞる様に走行していたバイクが、再び派手に吹き飛ぶ。 それは、掘り込んだ地面の中に迷彩塗装で身を隠した雪白と、上空で待機していたアルハザードの二人による狙撃だった。 見えない敵からの攻撃に、軽いパニックを引き起こすならず者達。 「おい! あそこだ!」 一同は、張り巡らされた防壁の一部に別の隙間を見つけて、そこに向かい始める。 当然、狙撃や迎撃の予想はしていたが、辺りを見回してもその様子は無い、と判断した上での強行突破だった。 そして、ならず者達の予想は的中した。そこには、狙撃や迎撃は皆無だったのだ。狙撃や迎撃は、だが。 カチ。 ならず者達がバリケードに差し掛かった辺りで小気味良い音が鳴り、小規模な爆発が起きた。それと同時に、一帯にしびれ粉が飛散する。 「ゴフッゴハッ! 何だこりゃ……ぁ」 しびれ粉を全身に浴びて次第に身体の動きが鈍くなってきたならず者を、グロリアーナが捕縛して村の片隅に転がした。 「クソ! 一回退くぞ!」 その様子を見ていたならず者達は、適当に銃弾をばら撒いてバリケードに穴を開け、後退していった。 ――僅かの間、村に静けさが戻る。 |
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