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御神楽埋蔵金に翻弄される村を救え!

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御神楽埋蔵金に翻弄される村を救え!

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第十章 幕引

「……はぁ」
 村の隅に建てられた物見小屋の中で湯上 凶司(ゆがみ・きょうじ)が溜息をついていた。
(ここまで持ってくるのに、どれだけの時間がかかったと思ってるんだ)
 そう胸中で毒づいて、思い出す。
 ネット上の掲示板や情報サイトで冗談めいた埋蔵金の話を目にしたのは、いつだっただろうか。
 根も葉もない噂をばらまいて、食いついてきた人間を丸め込んで今回の暴動を扇動したのが、水の泡と消えた。
「実際に現場に出て村の状況まで教えたのに、負けるとは……」
 と、落胆する凶司の肩に突然、手が置かれた。
「ヒッ!」
 思わず口から間抜けな声が上がる。
 振り返れば、道化の衣装に身を包んだナガンが笑顔で佇んでいた。
「な、何か御用でしょうか?」
「いや、ちょっとした噂を耳にしてさ。せっかくだから教えてやろうと思って」
「はぁ……何ですか?」
 怪訝そうな凶司に、ナガンは人差し指を振りながら笑顔で応えた。
「どうやら今回の黒幕の一人が、この村にある物見小屋に隠れているらしい、
 ってさ。もう村中この噂で持ちきり! 因みに言い始めたのは俺だけど!」
「え?」
 凶司の顔が青ざめる。
「なーんちゃって。ギャハハハハハッ!」
 派手な帽子を揺らしながらひとしきり爆笑して、ナガンは何事も無かったかのように物見小屋から出て行く。
「な……何だったんだ?」
 残された凶司は村を出てからもしばらくの間、気持ちの悪い時間を過ごす事になるのだった。



 ――御神楽音楽堂。

「皆、ありがとう! そして、お疲れ様!」
 マイクを手にステージで瑛菜が手を広げると、音楽堂は割れんばかりの拍手で溢れ返った。

 そして、待望のライブが幕を開ける。
 静寂の中、エリシュカがスティックを合わせてカウントを取る。
 走り出したスネアの音と共にグロリアーナがベースの弦を指で弾き出し、ローザマリアがギターを鳴らす。
 そこに足でリズムを取りながらキーボードを演奏する菊のメロディが混ざった瞬間、
「みんな、私の歌を聴きなさい!」
 と、ツインテールを揺らして美羽が歌い出す。
 そんな美羽に負けじと、瑛菜も笑顔でステージ上を駆け回り、声を合わせながら観客を煽る。

「約束だからな、今日は付き合ってもらうぜ!」
 大音量で曲が流れる客席で、トライブが隣に立っているシズルへ笑いかける。
 手伝いに来る報酬として、シズルにデートを要求していたのだ。
「約束はちゃんと守るわよ。今日は本当にありがとう。思いっきり楽しみましょう!」
 曲の音量に負けないようにトライブの耳元で礼を言ってから、シズルは笑顔でトライブの手を取って持ち上げた。

 ユベールは、ステージで笑顔で歌う瑛菜達を見ながらも、まだ頬を膨らませていた。
(デートしに来たら戦う事になるし、戦ってる最中は鴉の剣が当たりそうになるし、
 それなのに鴉は謝りもしないし……ああっ、もう!)
 今日一日の鬱憤を頭の中で駆け巡らせて、もうこれ以上は無いんじゃないかというぐらいにユベールが頬を膨らませている。
(何か不機嫌だな……とりあえず手でも繋いでみるか)
 原因はわからないが何となく、と鴉が唐突にユベールの手を握る。
「なっ……ちょ、何!? こ、こんなんじゃ誤魔化されないんだからねっ!」
 耳まで赤くして顔を背けるユベールを不思議そうに見て鴉は瑛菜達に視線を戻した。

「皆さん、ぜひ海豹村へお越し下さい……んー。
 ……いや、違うなぁ。海豹村に来てね? ……何か違う」
 海豹仮面は歌を聴く事もそこそこに、このライブを利用して自らの海豹村を宣伝しようと、勧誘方法を考え込んでいる。



 楽しい時間は過ぎるのが早く、夕日が沈もうとしている中で瑛菜達のライブは終わりを迎えようとしていた。
「あ、あのっ! ……最後に、一曲だけでも、環菜の為に何か演奏してもらえませんか?」
 客席の一番前に陽太が姿を現して、丁寧に手を上げながら提案する。
「……わかった。じゃあ、最後の曲は環菜に捧げるよ」
 そう言って、環菜がステージの上にいるメンバーを見ると、全員が頷いた。
 曲が始まると、陽太は首から提げたロケットを見つめながらそれに聞き入る。

 やがて、音色の余韻を残しながら、最後の曲が終わる。
 曲が終わった静けさの中、陽太が静かに口を開いた。
「この御神楽音楽堂自体が……環菜の埋蔵金そのものなのかもしれないですね」

 ――その言葉に、誰もが夕暮れの中、黄金色に染まる音楽堂を見上げていた。

担当マスターより

▼担当マスター

歌留多

▼マスターコメント

 はじめまして、歌留多と申します。
 今回、個性的なアクションも多く、かなり楽しく執筆をさせていただきました。
 村を守ってみたり、埋蔵金を手中に収めるために動いてみたり、自分の気の向くままに動いてみたり。
 他にも色々な動きがありますので、皆様に楽しんで頂ければと思います。
 (ただ、その反面、状況的にカットさせていただいたアクションもございます……すみません)

 それでは、またお会いできる機会が御座いましたら、その時は宜しくお願いします。