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注文の多い冒険譚

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注文の多い冒険譚

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第一章 いざ出発


「それじゃあ、行ってくるぜ!」
 アレイ・エルンスト(あれい・えるんすと)の元気な声が部屋の中に響く。
「薬候補は俺らに任せとけ」
「あら」
 自信たっぷりにカセイノ・リトルグレイ(かせいの・りとるぐれい)が請け合うと、それを聞きつけたリリィ・クロウ(りりぃ・くろう)が口に手を当てる。
「何だよ」
「大丈夫かしら。最近あなたが上手く行ってるところをあんまり見ないのですが」
 不満気な顔をするカセイノに、リリィはくすりとほほ笑む。
「まぁ、今回はあんまり心配していませんけど」
「当たり前だ」

「留守は私たちに任せてください。ね、雅羅ちゃん」
「ええ」
 杜守 柚(ともり・ゆず)が雅羅・サンダース三世と並んでレインたちの見送りに向かう。
 彼らはレインの姉、サニーの病気を治すために必要な数々の薬候補を揃えるためにこれからセンス山に向かおうとしていた。
 協力者と共に支度を終えたレインは、サニーを見て顔色を変えて駆けだした。
「姉さん! 無茶するな!」
 見ると、ベッドに横になっているはずのサニーが立ち上がっている。
 杜守 三月(ともり・みつき)の手を借りて、よろよろとレインの方に向かう。
「レインこそ……無理しないでね。あたしは、ほら、まだまだ元気なんだから」
「……っ、行ってくる!」
 サニーに返事もせず、外に飛び出すレイン。
 それを見て慌てて協力者たちはレインの後を追う。

 ぱたり。

 扉が閉まると同時に、サニーは床に倒れこんだ。




第二章 看病開始!


「サニーさん!」
 慌ててサニーをベッドまで運ぶ三月。
「無理しちゃ駄目だよ」
 筑摩 彩が駆け寄る。
「そうだよ。サニーさんにルカとダリルのチャーハンを食べてもらおうと思って練習してるんだから!」
「ボクだって!」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)笹奈 紅鵡(ささな・こうむ)も、必死でサニーを励ます。
「……みんな……ごめんね、あたしのために……」
「あまりしゃべらない方がいい」
 一生懸命口を開けようとするサニーを、吉崎 樹(よしざき・いつき)が制する。
「こうしちゃいられないわ!」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)が、ばさりと上着を掴む。
「一刻も早く、サニーに元気になってもらうために、赤い実のケーキを準備しなくちゃ。行くわよ、セレアナ!」
「ええ」
 駈け出すセレンフィリティに、パートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が続く。
 それを契機に、それぞれがサニーを元気づけるために様々なものを調達すべく、動き出す。
「さて、と」
 駈け出して行った面々を見送ると、リクト・ティアーレ(りくと・てぃあーれ)も元気よく外に出る。
 彼の目的は、この庭そのもの。

「デートなら、うちのダメ兄貴となんかどうだ?」
「ふぁ!?」
 樹が押しだしたのは、彼のパートナーにして兄弟の吉崎 睦月(よしざき・むつき)
「ふぁあ、なんで俺が」
「……あとでアイス奢ってやるから」
「それじゃあ、俺が旅してた頃の話をしてやろう(キリッ)」
 文句を言いかけた睦月は一瞬で懐柔される。
 眠たげな目をこすりながら、サニーのベッドの横に座ると話し始める。
「あれは……ふぁああ、あー、ちょっと待て、ええと、確か7年前の……」

「具合はどう……え?」
「しっ」
 サニーの様子を見に来た雅羅は、柚に袖を引かれて足を止める。
 何事かとサニーの方を見た雅羅は、あぁと納得して頬を緩める。
「ぐー……」
「すー……」
 その視線の先には、ベッドでぐっすり眠るサニーと、ベッドの横で死んだように眠っている睦月の姿があった。